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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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前科者の明日

 ほとんどの人の中には、犯罪者に対する差別意識があります。奴らは悪いことをした、だから罰せられるのは当然だ……そう思うのは、ある意味では自然なことです。それを責めるつもりはありません。実際、私の中にもそうした感情はあります。

 もっとも私の場合、幼い頃を共に過ごしてきた友人たちが逮捕され、刑務所に行く姿を実際に見てきました。その度に、複雑なものを感じましたね……世間の人は、自業自得という言葉で片付けるのでしょうが。

 私がこれから書くことは、一般の人には全てを理解していただくことは出来ないでしょう。ただ、犯罪者の人権……その現実について少しでも考えていただけると幸いです。




「今の世の中、犯罪者の人権ばかりが守られているじゃないか! 被害者の人権はどうなるんだよ!」


 ワイドショーなどで、よく聞かれるセリフです。実際の話、過去の様々な事件において、理不尽な判決を聞くことはありますね。

 では、他の犯罪者はどうなのでしょうか。ワイドショーに取り上げられない小さな事件を起こした人間たちの人権は、過剰に守られているのでしょうか?

 私には、そうは思えません。




 罪を犯せば、当然ながら罰せられます。場合によっては刑務所に行きます。

 ここで重要なのは、裁判所にて言い渡された懲役を務め上げれば、法的には罪を償ったことになるわけです。

 ところが、刑罰が終わらないケースがあります。例えば新聞やニュース番組などで報道されると、当然ながら多くの人に知られてしまいます。さらには、ネットにも事件の詳細が載ります。

 これ、皆さんは軽く考えているかもしれませんが……実は、非常に大きいことなんですよ。一度ネットに名前が載ってしまったら、永遠に残ります。必然的に、前科者の犯罪記録も永遠に残るわけですよ。

 昔なら、個人の前科の記録は警察か、もしくは特殊な職業に就いている人間でなければ調べることが出来ませんでした。

 しかし今では、一般人でもある程度は調べることが出来ます。名前を検索するだけで、一瞬にして事件の記事などが出てくるのですから。

 その結果、就職した後に前科のあることがバレてしまい、クビになるケースもあるとか。さらに、今後は会社の方も……採用する新入社員やアルバイトがどんな人間であるか調べる際、ネットを用いることになるでしょう。そうなると、前科のある人間は確実に採用されないでしょうね。

 つまり、前科のある人間の就ける職業は……本当に限られてくるわけですよ。大勢の人手か必要なアルバイトか、あるいは来る者拒まずのブラック企業です。

 しかも、そういった場所ですら……前科のあることが判明すれば、クビになる可能性は高いでしょうね。企業にとって「お宅の会社は、シャブ中なんか使ってんのか」「この会社は、社員に泥棒がいる」などと噂を立てられるのは痛いですからね……。

 また、ネット上に前科者の名前を晒して叩く人たちもいるそうです。本当かどうかは不明ですが、名前を晒されて叩かれた挙げ句、ノイローゼになった人もいるとか……。

 これに関しては、真偽のほどは不明です。しかし、スマイリーキクチさんの中傷事件を見ても分かる通り、世の中には「ジョークのつもりで」犯罪者を叩く人がいます。また、犯罪者を叩いて自身の鬱憤を晴らす人もいます。犯罪者が相手となれば、心置きなく叩ける上に止める人もいないでしょうから。




 犯罪者の人権について語る人のほとんどが「被害者の人権は守られていない」「更生など甘い」「犯罪者の人権は過剰に守られている」という意見を口にしています。

 そういった人たちは、前述のようなワイドショーやネットニュースなどで大々的に取り上げられている犯罪者についてのみ語っているのでしょう。事実、過去の凶悪事件を見ても、そうしたケースはあります。

 ただし、一つ知っておいていただきたいことがあります。法的に過剰に守られた、ほんの一握りの犯罪者たち……しかし、その数百倍の前科ある人たちは、罪を償っているにもかかわらず未だに自身の烙印から逃れられないのです。

 今の時代、罪を犯した人の記録は、ネット上に残っています。そのため苦労している人は少なくありません。つまり今の前科者は、生涯消えることのない烙印を背負って生きなくてはならないのです。

 ネットなどで気軽に「犯罪者の人権は過剰に守られている」「犯罪者はどんどん死刑にしろ」などと楽しそうに主張する人たちを見ていると、私は暗い気分になってきますね。前科者は永遠に前科者のままであり、ネットで過去の罪状を暴かれる恐怖を抱えたまま生きていかなくてはならないのです。

 このまま行くと、前科のある人間たちはネット上にどんどん晒されていくのでしょう。そして「現行の制度は犯罪者にあまりにも有利だ」と主張する人たちは、こぞって前科者を叩くのでしょうね。スマイリーキクチさん中傷事件(ここでは詳しくは書きませんので、興味のある人は調べてみてください)のような事件が、あちこちで起きることになるのでしょう。

 しかも、スマイリーキクチさんの場合は実際には罪を犯していません。ところが前科者の場合、過去に罪を犯した証拠があります。叩く側も、一切の容赦なく徹底的に叩くでしょう。犯罪者は過剰に守られている、という言葉を水戸黄門の印籠のように振りかざし、正義の名の下に糾弾するのでしょうね……かつての魔女狩りのように。

 さらに前科者の場合、叩かれても何も言えません。「シャブ中」「泥棒」などと書かれても、事実であれば泣き寝入りするしかないのです。

 知人から聞いたのですが、ネットで「こいつシャブ中だよ」などと実名と過去の住所などを晒された人がいたそうです。その人はたまりかねて弁護士に相談したところ、とんでもないことを言われたそうです。


「削除するのは簡単だが、新たな書き込みを止めることは出来ない。その上、こうしたケースの場合、下手をするといたちごっこになる可能性も高い」


 つまり、書き込みを削除された場合、相手が意地になってまた書き込む可能性が高いらしいのです。確実に止めさせるには、相手を訴えるしかありません。

 ところが、本格的に訴えるとなると時間と労力と金がかかります。普通に働いている人には難しい選択でしょう。まして前科者となると、訴える過程で様々な問題も出てきます。

 結論からいうと、こうしたケースはほとんどが泣き寝入りだそうです。「犯罪者は過剰に守られている」などと気軽に主張されている方々は、こうした泣き寝入りせざるを得ない人のことも含めて言っているのでしょうか。




 という訳で、今回いいたいことは一つ。悪いことはしちゃダメです。前科が付けば、一生逃れることは出来ません。今は、前科者がやり直すには非常に難しい時代です。下手をすると、無関係な人間からもネットに晒され叩かれることになりかねません。この流れは、もはや止めるのは不可能でしょう。

 しかも、世の中の人々は犯罪者を容認してくれません。本人の更生の意思など「甘い」「嘘を吐いている」の一言で切り捨てられ叩かれます。大半の人々の心から、犯罪者を差別する気持ちは永遠に無くならないでしょう。

 さらに、相手に非があるなら、その人生を滅茶苦茶にしても構わない……そう信じている人間は少なからず存在しています。「犯罪者は過剰に守られている」と主張する人たちもまた、魔女狩りのごとき行動に出ても不思議ではないでしょうね。








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