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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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連絡が取れなくなる人たち

 皆さんは、かつての友人や知人と連絡を取りたいと思った場合、どのような手段を用いるでしょうか。

 大抵の場合、電話やメールといった方法を用いれば連絡は取れるでしょう。あるいは、知り合いの知り合いを辿っていけば……ほとんどの場合は何とかなるでしょう。相手が堅気の人間ならば。

 しかし、相手が堅気でないとなると状況が変わってきます。

 堅気でない人たちは、すぐに連絡取れなくなるんですよ。彼らの場合、基本的に住所不定で無職というパターンが多いです。なので、携帯電話だけが連絡を取る唯一の手段なんですよ。

 しかし、警察に逮捕された場合……携帯電話は、証拠品として没収されてしまうケースもあります。何せ、携帯電話は犯行の証拠からアリバイの有無にいたるまで、様々な事態の検証に使うことが出来ます。

 なので、逮捕された際に持っていた携帯電話は……警官により、徹底的に調べられます。捜査が終了した後に返してもらえるかどうかは微妙でして、没収されてしまうケースもあるとか。とにかく、全てのデータが警察に知られてしまうのは確かです。

 そのため、堅気でない人たちの中には、警察に捕まりそうになった時……携帯電話を海や川などに捨てる人もいるとか。殺人などの大きな犯罪でない限り、わざわざダイバーを派遣して海や川を探索したりはしないそうなので。


 しかし、そうなるとこちらとしては非常に困るんですよ。いきなり携帯電話が通じなくなると、連絡を取る手段が全て断たれるわけですから。

 私も何度か経験がありますが、知り合いと突然連絡が取れなくなる。で、友人の友人のような人物(私からすれば、ほぼ他人ですが)に聞いたところ「あいつパクられたよ」という答えが返って来る……このパターンは、本当に嫌ですね。

 それだけではありません。携帯電話が通じなくなり、仕方なく実家に電話をかける……こうなると、かなり不快な思いをするのを覚悟しなくてはなりません。

 基本的に、こういう人々は家族との仲が上手くいっていません。なので、キツい言葉が待っていません。酷い時など「あの、○○さんは……」と切り出したところ「知りません!」と言われてガチャンと電話を切られたことがあります。

 まあ、これは極端な例ですが……私が実家に電話をかけ「すみません、○○さんなんですが……」などと言うと、必ず不機嫌そうな声で応対してきます。

 向こうにしてみれば私は、悪さを繰り返すロクデナシ息子の友人以外の何者でもありません。歓迎するはずはないですよね。

 また、こうした家庭の中には、ヤクザやヤミ金が取り立ての電話をかけて来た……という家もありますし、朝いきなり警察に踏み込まれた家もあります。そんな普通とは言いがたい経験をしてくれば、その元凶となった息子や娘を毛嫌いするのも当然ですね。


 そんな中、私が一番印象に残っているのは……ヤスベエ(もちろん仮名です)という男の実家に電話をかけた時のことですね。

 ヤスベエは、はっきり言うなら小物のチンピラでして、あちこちにクレームを付けることを飯の種にしているような男でした。

 そんなヤスベエですが、いきなり連絡が途絶えました。さらに、ヤスベエの居場所を教えろ……などという電話が、知り合いからかかってきたのです。詳しい話は知りませんし知りたくもなかったので聞きませんでしたが、どうやら仲間に対し不義理を働いたようです。

 私は念のため、ヤスベエの実家にかけてみました。

 電話に出たのは、優しい口調で話す中年男性です。恐らくは、ヤスベエの父親でしょう。

 私は名を名乗り、ヤスベエについて聞いてみました。すると、家にはいないし最近は連絡も取っていない……と言われました。

 それでは、用は終わりです。私は話を切り上げようとしました。しかし、父親は話を止めません。

「ヤスベエは今、どうしてるのか……心当たりはありますか?」

 父親は、逆に聞いてきました。もちろん、私が知るはずもありません。知らないと答えました。

「すみませんが……もし連絡が取れたら、うちに電話するように言ってもらえないでしょうか」

 父親は、最後にそう言っていました。その声は、ヤスベエを心から心配しているようで……私は、分かりましたと答えるしかありませんでした。




 ヤスベエという男は、はっきり言ってどうしようもないクズでした。私と最後に会った時、彼は二ヵ所にクレームの電話をかけていたのを覚えています。

 また、あちこちのヤバい人たちに不義理を働いたのも確かなようです。

 しかし、そんな男でも親にとっては可愛い子供なんですよね……当たり前の話ですが、ヤスベエの父親と話していて、改めて気づかされました。


 それから十年以上経ちますが、ヤスベエがどうなったかは今も分かりません。







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