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川越少年刑務所の巻

 私の友人や知人には、刑務所を出た者が数人おります。はっきり言って、そのほとんどがロクデナシですね。今や連絡が取れない者も少なくありません。

 そんな彼らからは、これまでに様々な話を聞きましたが……今回は悪名高き川越少刑こと『川越少年刑務所』について語らせていただきます。当然、私は入ったことはありません。「かつて入っていた人」の話を聞いただけです。なので、どこまでが真実かは不明ですが……まあ、話半分に読んでいただければ幸いですね。


 念のため説明しますと、二十歳未満の少年が罪を犯すと少年院にいきます。厳密に言うと、ケースによって細かく分かれるそうですが、ほとんどの場合がこの区分にあてはまるとか。

 それに対し、二十歳から二十五歳までの罪を犯した男性を収容するのが少年刑務所だそうです。

 二十六歳より上の年齢になると、そこで初めて成人刑務所へと送られる訳です。二十歳を過ぎれば、成人扱いでいいじゃねえか……などと私は思うのですが、現行ではそういう決まりだそうです。

 そこから、さらなる審査があり……ヤクザ及びヤクザ組織の関係者や再犯といった、犯罪傾向の強い二十六歳未満の少年(少年と呼べる年齢ではないのですが、今回は便宜上この呼び方をします)は、B級の少年刑務所へと送られます。

 このA級とB級との分け方も微妙でして……犯した罪にヤクザが絡んでいたりすると、初犯でもB級に送られるケースもあるとか。まあ、その辺りの事情については、今回はこれ以上は触れません。


 さて、川越少年刑務所とは初犯の人間が送られるA級の刑務所です。初犯の人間しかいないなら、楽なのではないか……と私などは思うのですが、実際に入っていた人間によると違うらしいのです。


「いや、川越は本当にタチ悪いのが多かったよ」


 と前置きして、友人は次のように説明してくれました。

 いわく、B級に行くのはヤクザもしくは再犯である。そうなると、ほとんどの人間がどこかの組織と繋がりがある。しかも、彼らは仮釈放をもらう気など最初からない。

 したがって、囚人同士で喧嘩をするのに何のためらいもない。さらに喧嘩を売られて引いているようだと、背負っている看板に泥を塗ることにもなる。

 そのため、喧嘩は多いが陰湿ないじめは少ない。

 一方、川越少年刑務所のような場所は……みな初犯であり、仮釈放をもらって早く出所したいと願う者が多い。そのため、多少のことがあっても我慢する。

 しかも、中途半端なチンピラのごとき思考の持ち主が大勢いる。そのため、やたら上下関係にうるさい。しかも、陰湿なイジメも多い。


 なるほどな、と思いましたね。ヤクザや再犯同士だとお互いにヤバいので気を遣い合うか、あるいはすぐに喧嘩に発展するか……の二択だが、初犯同士だと嫌な上下関係が出来上がってしまうらしいですね。


 さて、川越少年刑務所ですが……基本的に、ほとんどの受刑者が雑居房にて他の人間と共同生活をするわけです。

 で、そこにAくんが新入りとして入って行ったとしましょう。

 ここでのAくんの扱いは、「サラ」だそうです。どうも刑務所用語らしいのですが「まっさら」から来ているのかもしれません。

 それはともかく、川越ではサラはいろんなことをさせられます。先輩たちの布団の上げ下ろし、室内の掃除、食器洗いなどなど……部屋によっては、購入する本まで先輩たちが決めるとか。

 余談ですが、同じ刑務所であっても部屋によってルールは微妙に異なるようです。特に川越は、部屋を仕切る人物の一声でルールがちょくちょく変わるとか。そのため、とんでもないルールを押し付けられるケースもあるそうです。

 

 話を戻しますが、川越では上下関係が本当に厳しいそうです。酷い部屋だと「サラは私語禁止」などと言われたりするとか。私語禁止……つまり、部屋の中でも必要以外のことは一切喋るなということらしいですね。まあ、これはあくまで極端な一例のようですが。

 その上、サラが刑務作業中にへまをして看守から怒られたりすると……部屋に帰ってから先輩たちの説教が待っているそうです。「てめえ、俺たちに恥かかせんじゃねえよ!」と言われながら、人格否定しまくりの説教の嵐が襲うとか。

 つまり川越では、サラの状態では人権すら与えられないようです。

 しかも、その状態に逆らおうものなら凄まじいイジメが待っているとか。八人部屋なら、自分以外の七人がみな敵である……という状況になるわけです。これは、どうしようもないですね。

 したがって、川越に入ったが最後、サラのうちは修行と思いひたすら耐えるしかないようです。他の手段もあるようですが、書いていくと長くなりますので、それは別の機会に。


 ある知人は、川越少年刑務所で二年ほど務めた後、二十六歳になり成人刑務所へと送られていました。その知人に、少年刑務所と成人刑務所のどちらが楽か聞いたところ「成人の方が楽」と即答しました。


「成人刑務所はみんな大人だけど、少年刑務所はガキばっかりなんだよね。しかも、川越は中途半端なチンピラみたいなのばっかりだったからね。やり方もネチネチしてて、本当にキツかった」


 知人はこのように言っておりました。


 正直言いますと、私には真偽のほどは不明です。また十年以上前に聞いた話ですので、今はまた違うのかもしれません。

 確かなことは、このような噂がまことしやかに流れていた……ということです。火のない所に煙は立たずといいますが、川越の噂のうち半分くらいは真実なのかもしれません。

 現在、二十六歳未満の人は……くれぐれも、警察に捕まるようなことはやめましょう。こんな酷い場所に行くのは嫌でしょうし。


 余談ですが、昔は二十五歳くらいの微妙な年齢で逮捕され、刑務所に行くことが避けられない場合……川越少年刑務所に行きたくないがために、わざと控訴や上告などして裁判を長引かせた者もいたそうです。

 その狙いは裁判の最中に二十六歳になり、成人刑務所に送られることだとか。そんなことをすれば、確実に出所が遅くなるのですが……川越はそこまでして、行きたくない場所だとのことです。







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