この女性キャラ、強いんですか?
最近、私の地元のローカル局にて深夜に『ブラックラグーン』なるアニメが再放送されています。
知らない人のために大雑把に説明しますと、架空の不法都市ロアナプラを舞台に、会社から見捨てられた元サラリーマンのロックが『ラグーン商会』という裏の何でも屋に拾われ、そこでしたたかに生き抜いていく……というストーリーです。
この作品のヒロインであり、もう一人の主人公でもあるのがレヴィという名の若い女です。タンクトップに生足まるだしヒップの形くっきりのパンツ姿で暴れる、セクシーな武闘派美女というキャラクターですが……実は私、このキャラが本当に嫌いなんですよね。
まず、このレヴィは異様に暴力的なんですよ。何か気に入らないことがあると、すぐに殴る蹴る……では済まず、いきなり拳銃をぶっぱなしたりします。それも、本当に些細な理由からです。
まあ、はっきり言って行動がチンピラなんですよ。ヤンキーになりたての中学生そのものです。
しかも、レヴィだけじゃないんですよね。この作品には、他にも何人か暴力女が出てますが……まあ酷いですね。行動の全てが、衝動に支配されているんですよ。何か気に入らないことがあれば、殴る蹴る撃つ。もはや、何をかいわんやですね。
その上、この作品は主人公補正が凄まじいです。例えば敵味方入り乱れての銃撃戦で、レヴィはカッコよく身を乗り出して拳銃をバンバンぶっぱなしてるんですが……彼女には弾丸が掠りもせず、逆に敵にはバシバシ命中してます。
さらに殴り合いをしても顔は変形せず歯も折れず、タンクトップにホットパンツ姿でアスファルトを転げ回っても掠り傷ひとつ無し……こういう戦闘シーンには、どうも付いて行けないものを感じますね。ちなみに、アスファルトの上で受け身を取るとめちゃくちゃ痛いです。
まあアニメですし、そのあたりは多めに見るとしましょう。ただ私は、レヴィの無意味な凶暴さだけは見ていて不快に感じますね。
言うまでもないことですが、ヤンキーの世界でもすぐに暴力を振るうような奴は、怖がられても尊敬はされません。はっきり言いますと、ヤンキーという連中はそんなに喧嘩好きではないのです。
基本的に彼らは、仲間同士で集まり他愛ないお喋りや遊びに花を咲かせ、たまに通りかかった一般人に威圧するような視線を向けて悦に入る……要するに、町で大きな顔がしたいだけです。漫画に出てくるような、毎日のように殴り合いをしているヤンキーなど、まずいません。
もちろん彼らとて、幼い頃は漫画に出てくるような喧嘩に明け暮れる武闘派のヤンキーに憧れていたのでしょう。しかし実際にそういった世界に身を置くと、暴力がシャレにならない結果を生み出すことに気付かされます。
つまらん喧嘩で逮捕され、鑑別所や少年院さらには少年刑務所……まあ、そこまではいかないにしても、警察に逮捕されて親が柄受けのため警察署に来た時点で、ほとんどの少年が現実を理解します。喧嘩なんて、決してカッコいいものじゃないという事実に。
ヤンキーについてこれ以上語ると、話がズレるのでここまでにします。ただ一つ言えるのは、すぐに手が出る奴はヤンキーたちの間でも尊敬はされないということです。
さて、ここからが本題なのですが……驚いたことに『ブラックラグーン』に登場するレヴィたちを「強い女性キャラ」として評価する人が、少なからず存在するようなのです。
もちろん、個人の好みについてとやかく言うつもりはありません。ただ、こういったキャラを「強い」と評価するのは……私はちょっと違うのではないかと思いますね。
そもそも強さとは何であるか、人によって考え方は違うでしょう。「ハアー!」と叫びながら手をかざすだけで地球を破壊できたり、どんな敵が出てこようとも涼しい表情で撃退し「さすが○○さま」と呼ばれたりするようなキャラを強いと思うのも、人の自由ではあります。
ただ、『ブラックラグーン』に登場する女性キャラたちは……根本的な部分が『北斗の拳』に登場するモヒカンとさして変わらないんですよ。
説明の必要もないとは思いますが、モヒカンとは「ヒャッハー!」と叫びながら、己の欲望のために弱者に暴力を振るうザコです。前述のレヴィを始めとする女性キャラは、基本的な思考や行動パターンがモヒカンと変わりないんですよ(バラライカさんだけは別格ですが)。
そんな連中を「強い女性キャラ」と評価するというのは、私には全く理解できません。現実の暴力の体験がないせいでしょうか。あるいは、ヤンキーや無法者に対する憧れの気持ちから生まれるのでしょうか。
それとも、なろう関連のエッセイで千回くらい目にした「現実があまりにも辛いから云々」という言い訳めいた理屈でしょうか。
あるいは、同じ暴力でもモヒカンがやっているとヒャッハーで、レヴィのようなセクシーな女性キャラがやると「強い女性だ」「女性上位の今の世の中を象徴している」と評されるのでしょうか。
いずれにしても、こういう己なりのモラルも哲学もない単なるバカな暴力女を「強い女性キャラ」として持ち上げる価値観というのは……私は何かおかしいと思います。強さというものを、根本的に勘違いしている気がしますね。まあ、価値観の違いだと言われればそれまでですが。
念のため書いておきますが、私は「女性が暴力を振るうのはけしからん!」と主張しているわけではありません。思考や行動パターンがチンピラと同レベルの女キャラを「強い女性キャラ」として持ち上げるのはおかしいのではないか、と主張しているのです。大事なことなので二回書きました。




