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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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またしても、ちょっと怖い話

 前回に続き、今回もかつての友人の話をさせていただきます。ただ今回の話は、いろいろとヤバい点がありますので細部に関しては敢えてボヤかしてありますので……あとはご想像にお任せします。




 昔、京極(もちろん仮名です)という友人がいました。この男の見た目を一言で言うなら、脚本家の宮藤官九郎さんをカッコよくしてチンピラ風味を加えたような感じです。体はさほど大きくありませんが、度胸があり押し出しも強い男でした。また、頭もキレる上に行動力もありましたね。まともな人生を歩んでいれば出世は間違いないのですが……残念なことに、彼は覚醒剤の依存症でした。


 この京極、若い頃に覚醒剤の所持と使用で逮捕され、少年刑務所にて四年ほど服役しておりました。

 出所後は地元である前橋に帰り、あちこちから金を借りてラーメン屋を開いたそうです。一時期は羽振りもよく、店もそこそこ繁盛していたそうです。さらに当時は結婚し、子供もいたとか。

 そんな京極はラーメン屋のオーナーという立場ゆえかとても忙しく、私が連絡してもほとんど出なかったです。そのため、自然と疎遠になっていきました。


 ある日のことです。私は約一年ぶりに京極に電話で連絡をしました。久しぶりだな、相変わらず忙しいのか……という他愛ないものでした。すると、とんでもない言葉が返ってきたのです。


「ラーメン屋? ああ潰したよ」


 いともあっさりと言ってのけた京極……私は唖然となりました。しかし、かれの話はまだ終わっていなかったのです。


「嫁? 別れたよ。いちいちうるさいからさ……シャブもやれねえし」


 その言葉を聞き、私は頭を抱えてしまいました。少年刑務所を出た後すぐにラーメン屋のオーナーになり、家庭も持ち、忙しいとは言え順風満帆だった京極の人生。しかし、彼はあっさり全てを手放したのです。

 私は戸惑いながらも平静を装い、今なにをしているのか聞きました。すると、さらにとんでもない答えが返ってきたのです。


「ん? シャブの売人」


 もはや何も言えません。仕方なく、当たり障りの無い話をして電話を切りました。




 普通なら、ここで話は終わりでしょう。いくら遠くに住んでいるとはいえ、覚醒剤の売人と関わりたがる人はいません。

 しかし、当時の私は暇でした。人間、暇になるとロクなことをしません。さらに私自身のアホな好奇心も手伝い、半年ほどした後に電話をしてみたのです。

 すると、前回よりもさらに恐ろしい話を聞かされました。


 まず、京極は生活保護を申請しました。理由は前回に登場したイーサンと同じく「薬物依存症により、まともな社会生活が営めないため」です。結果、いろいろと言われながらも、どうにか申請は通りました。もちろん、覚醒剤の売人は続けながら。

 これだけでも、充分な悪人ですが……京極は、さらにアホなことをしていました。


「俺、ミント教に入ったんだ」


 はあ? と私は驚きました。ミント教とは、とある宗教団体です(もちろん仮名です)。超マイナーな団体でして、テレビや新聞に名前を取り上げられることはありません。

 そんな宗教団体と京極とは、真逆といっていい関係なはずなのですが……。


「もちろん、俺も奴らの教義なんか信じてないよ」


 そう言って、京極は語り始めました。

 ある日、京極の家にミント教の信者が勧誘に来たのです。すると京極は「僕は昔、薬物という名の悪魔に取り憑かれていました。薬物の後遺症で、今も働くことが出来ません」などと大嘘を吐きました。それを聞いた信者は「大丈夫です! ミント教に入り、共に薬物という悪魔と戦いましょう!」と言ったそうです。さらにその信者は、野菜や肉などを京極の家に届けてくれました。

 以来、京極は研究生のような立場となりました。週に二度、信者が京極の家を訪れてミント教の教義を勉強することとなったのです。しかも毎回、野菜や魚や肉などの食料品を置いていってくれるとか。

 私は疑問に思いました。いくら同情したとはいえ、そこまで親切にするのだろうか、と。

 すると、京極はこう言ったのです。小さな宗教団体の信者同士は仲間意識が異常に強く、同じ信者もしくは信者候補が困っていると知ると放ってはおけないのだ……などと言っておりました。

 さらに、こうした形で恩を売ることにより、教団への忠誠心を植えつける狙いもあるとか。


「お陰で、食い物には困らなくなったよ。そのうち、集会所にも顔出してやろうかと思ってるんだよ。上手くすりゃ、シャブ買ってくれる客も見つかるかも知れねえしな」


 ヘラヘラ笑いながら、京極はそんな恐ろしいことを言ったのです。私はさすがに付き合いきれなくなり、話を合わせつつ適当なところで電話を切りました。この男ならやりかねない、と思ったので。




 さらに半年くらいした頃のことです。京極のことが気になった私は、それとなく電話をかけてみました。すると……。


「おかけになった電話番号は、現在使われておりません」


 その後、現在に至るまで京極とは連絡がとれていません。

 ひょっとしたら、京極は覚醒剤の取り引きの最中に逮捕され、大量の覚醒剤を販売目的で所持していた……という罪状で十年以上の刑を食らったのかもしれません。

 あるいは、カルトな宗教の信者たちを怒らせてしまい……これ以上はやめましょう。







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