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ヤンキーの実態

 このところ重い話が続いていたので、今回は軽い話でいかせていただきます。

 この日本という国では、ヤンキーは一つの文化となっていますよね。元ヤンキーもしくは現役のヤンキーが主人公のドラマや映画は少なくないですし、また元ヤンキーを売りにしている芸能人もいます。ヤンキーという文化を好む層が存在しているのは、間違いないでしょうね。一般人の中にはヤンキーに対する潜在的な憧れ、みたいなものもあるのかもしれません。

 しかし……実のところ、これらの作品で描かれているヤンキーは、実際の姿とはかけ離れています。「そんな事は知ってるよ」と仰るかもしれませんが、それにしては……あまりにもヤンキー文化に寛容ではないかと思います。

 さらに言うと、いい加減なヤンキー情報に騙されている人も少なくないのではないでしょうか……そこで、私の知る限りのヤンキーの真実を伝えようと思った次第であります。

 ちなみに、私はヤンキーではありませんでした。事実、バイクの免許も持っていませんしバイクも運転できません。喧嘩の回数も、トータル十回くらいでしょうか。タバコは吸ってましたが、シンナーは吸ったことがありません。

 しかし、都内の底辺工業高校に通っていまして(今は廃校になってます)、その関係で知り合いになった人たちの中には……ヤンキーが大勢いました。

 暴走族の小○郎に所属していた張○さんという方からは初対面にも関わらず「殺すよ……」と言われてビビった記憶があります。また暴走族のゼ○に所属していた○沢さん(現在はダルクの職員をしています)とは、何度か遊んだことがあります。また宇○川○備○のチャイこと○村さんとも一度お会いしたことがあります。その数年後、○村さんは逮捕され長野刑務所に収監されたそうですが……分かる人にしか分からないネタですみません。

 それはともかく、私はヤンキーという人種とはそれなりに付き合いがあり、彼らの生態を間近で見てきました。そこで今回は、ヤンキーの真実について語ります。まあ、こんなことは今さら語るほどのものでもないのですが、万が一にも、いい加減な情報やデタラメな逸話に騙されている方がいたら気の毒ですので。


(1)ヤンキーは、思ったほど喧嘩が強くない


 ヤンキーは、実の所さほど強くはありません。考えてみれば当たり前です。日頃から、ろくに鍛えもせずに町中をぶらぶらし、酒やタバコ果てはドラッグなんかをやってる超不健康な人種です。

 しかも、意外に思われるかもしれませんが……ヤンキーは、基本的に喧嘩しません。映画『ク○ーズ』みたいにバンバン喧嘩しているヤンキーなど、まずいないでしょうね。

 ヤンキーは基本的に、怯えている相手に対する一方的な暴力の経験は豊富ですが……はっきりとした戦意を持って向かって来る者との喧嘩というものは、意外にもあまり体験していません。一対一の喧嘩の経験が無い者も珍しくありません。

 ちなみに、私は以前レスリング部の学生二人が、八人の暴走族を叩きのめした場面を見ています。この学生は、プロレスラーのような体格をしている訳ではありません。二人とも、せいぜい七十キロ程度でしょうか。にも関わらず、一方的に暴走族を叩きのめしてしまいました。レスリング選手は鍛え方が違いますから……ヤンキーなんかじゃ相手にならないでしょうね。

 念のために書いておきますが、それでも彼らを甘く見ない方がいいです。中には、化け物のように強い者もいます。特に格闘技などやっている訳でもないのに、喧嘩になると恐ろしく強い……こんな者もいます。某格闘技マンガの花○薫ではありませんが、天賦の才とも言うべき喧嘩の強さを持つ者はいます。

 それ以前に、ヤンキーは一方的な暴力の経験はありますし、さらに集団になると思わぬ凶暴性を発揮します。リンチ殺人のような事件を起こすのは、得てしてこうした「喧嘩の経験が無い」連中です。腕に少々の自信があっても、関わらない方が無難でしょうね。


(2)ヤンキーは、七割以上の者が嘘つきである


 ヤンキー、ないし元ヤンキーには嘘つきが非常に多いです。これだけは自信を持って言えます。

 私が底辺高校に入学した時の話ですが、周りのみんなは必死になって武勇伝を語っていました。


「俺は中学の時、喧嘩を三百回くらいやったぜ。負けたことはないから」


 真顔でこんな事を言う男が、クラス(だいたい三十人前後です)に二十人近く居たでしょうか。もちろん嘘に決まっています。

 何故こんな嘘をつくのか……それは怖いからです。中学から高校へと進学し、周りは知らない人間ばかり。しかも底辺高校だと、舐められまいと皆が構えています。入学を機に髪型を変えたり、ピアス付けたり、学ランを改造したり……中には、登校の初日にわざわざタバコをくわえてきたり、バイクで校門をくぐる者もいました。

 挙げ句、みな退学です……彼らは舐められまいと気合いを入れて入学しましたが、結局は舐められるどころか、学校から存在を抹消される羽目になってしまいました。

 話がズレましたが、うちの高校の入学直後は嘘とデタラメがあちこちで飛び交っていました。自分に自信の無い者たちは、こうして自己防衛を図っていたのであります。

 さて、ここで登場する嘘には、大きく分けて二つのパターンがあります。

 一つは「俺は喧嘩が強いぜ」というパターンです。ただし、この場合……周囲から「だったら、ちょっとアイツぶっ飛ばしてくんない?」という展開になる恐れがありますが、そこをどう誤魔化すかが鍵ですね。

 さらに、もう一つは……「俺のいた中学は荒れてて、凄いのが大勢いたぜ。あと、地元の友だちにも喧嘩の達人がいてよお」というパターンです。

 こちらの場合、どんなアピールをしたいのか分からない人もいらっしゃるかもしれませんね。こんな嘘をついて何になるのか、と思われるかもしれません。

 これも結局は、俺スゲーなアピールなのです。ヤンキーたちの中では、荒れた環境にいて悪い知り合いが大勢いる→そんな俺って凄いでしょ! という理屈が成り立ってしまうのです。まあ、間接的な自慢ですよね。実際、悪そうな連中はほとんど友だち的な内容の歌もありましたし。

 こうして、ヤンキーは嘘をつきながら成長していきます。




 ちょっと余談ではありますが、当時の都内の底辺高校には一切の容赦がありませんでした。停学もしくは退学者が多かったですね。底辺高校というと、皆さんは『ク○ーズ』のような世界を想像するかもしれませんが……あんなものは完全なるフィクションの世界です。教室の中でタバコを吸ったり喧嘩をしたりすれば、確実に停学もしくは退学でした。都内の○山工業高校など、四年で二百人の退学者を出しています。

 さらに言うと、都内のかなりの数の底辺高校は『都立高校改革推進計画』なるプロジェクトにより、廃校もしくは他の高校に統合されました。私の母校も、卒業後してから数年後には廃校となっております。そのため、この当時(私が高校生だった時代)は……いずれ消えて無くなる高校からどんどん人を減らしてしまおう、という教育委員会の思惑があったのではないかと。これは私の妄想かもしれませんが。

 そんな訳でして、この当時(九〇年代〜)の底辺高校では、あまりにもバカなヤンキーは一年生の段階で姿を消してます。退学もしくは停学になるか、やる気を無くして夏休みが終わると同時に自主退学になるか……いずれにしても、漫画に出てくるようなバカなヤンキーは一年生の二学期が始まった時点で、ほとんど姿を消します。残るのは……学校では比較的おとなしいが、外に出ると凄いというタイプです。そういえば、元・格闘家の前田日明さんもそういうタイプだったと聞いております。真偽は不明ですが。

 『ク○ーズ』のような異世界のごとき学校が現実に存在すると思っていた人には申し訳ありませんが、これが都内の底辺高校の真実なのです。都内では、その極悪さで有名だった○川工業や○立工業も、事情は似たり寄ったりだった……と両校の卒業生から聞いております。

 もっとも、地方の事情は私にも分かりません。ひょっとしたら、とんでもない高校もあったのかもしれませんが。また、私より上の年代の方々となると話は別です。今の四十代半ばから五十代の人たちの高校時代は……まあ凄かったらしいです。

 この年代は世に言う「ベビーブーム」世代ですので、クラスは今よりも遥かに多い上、ヤンキーがブームのようになっていた時代だったそうです。少年犯罪の件数も、今とは比較にならないくらい多く、ク○ーズのような高校も実在していたとか。大げさに言われている部分もあるのでしょうが、今よりも凄かったのは確かなようですね。


 話が脱線しましたが、ヤンキーは高校に入ると、嘘で自分を飾ることを覚えます。「俺は喧嘩が強いぜ」「俺のいた学校はヤンキーばっかりで、凄い環境だったぜ」などという嘘を吐きまくり、高校の三年間を終えます。

 その性癖は、卒業後も変わりません。「俺のいた高校は凄かったぜ。でも、俺が一番強かった」などという嘘を吐き続けます。その理由はと言えば、自分を称える声や喝采の言葉が欲しいからです。

 彼らヤンキーは基本的に、他人に対し誇れるような体験をしていません。やって来たことと言えば……仲間と遊び歩き、周囲に迷惑をかけ、時おり弱者に一方的な暴力を振るうという程度です。

 そこで元ヤンキーは、その体験を「いやあ、俺も昔はヤンチャしててさ……」という言葉と共に語り出します。あたかも過去の偉業を語るかのように。

 ここで皆さんに覚えておいていただきたいのですが、ヤンキーもしくは元ヤンキーの語る武勇伝の九割方は嘘です。少なくとも、誇張した話である可能性が非常に高いですね。先ほども書きました通り、彼らには他人に対し誇れるような体験が何もありません。

 その上、彼らは高校の三年間、嘘を吐き続けてきました。結果、何のためらいもなく嘘を吐くことが出来ます。

 しかも……驚くべきことに、私から見れば明らかに嘘と分かるような話を、本気で信じてしまう人が意外にも少なくないのです。ヤンキーの語る武勇伝や、無法地帯のような学校の話を無邪気な顔で信じ込み、「スゲースゲー」と賞賛の言葉を投げる人のなんと多いことか……恐らくは、ヤンキーに対する潜在的な憧れや、そういった連中の表面的な部分しか見ていないからなのでしょうが。

さらに言うと、喧嘩の経験も格闘技の経験も無いため、現実の闘いがどういったものかを知らない人がほとんどでしょうね。だからこそ、あり得ない武勇伝を盲目的に信じてしまうのでしょうか。

 いずれにしても、こういう人たちを見ていると、そのおめでたさには恐怖すら感じます。子供も騙せないようなヤンキーの武勇伝を、なぜ信じてしまうのか……私には本当に不思議でなりません。

 ですが、ヤンキーのあり得ない武勇伝を信じてしまう人がいるのも、また事実なのです。そんなおめでたい人たちのお陰で、誇れるものの何もないヤンキーたちは、自己承認欲求を満たすことが出来るわけです。

 そういえば、元暴走族の総長だと自称し「俺はボブ・サップにも勝てる」と豪語していたと噂の元ミュージシャンの押○学さんは、今なにをしているのでしょうか。ただ、あの程度の嘘つきは、世の中の至るところに存在しています。


 ここまで色々と書いてきましたが……私が言いたいことは一つです。ヤンキーの嘘に騙されないでください。ヤンキーもしくは元ヤンキーの中には、嘘を吐くことで獲物を物色している者もいます。大げさな武勇伝を語り、それを信じた者に親しげに近づいて行き……結果どういうことになるかは、別の機会に語るとしましょうか。ただ、ヤンキーから詐欺師にクラスチェンジするパターンも少なくない、ということは知っておいて損はないでしょう。

 とにかく、世に出ているヤンキーの武勇伝や体験談の大半は、嘘もしくは誇張に満ちています。もっとも、私の書いた事実に則している面白みのないエッセイを信じるか、あるいは世の中のヤンキーもしくは元ヤンキーの武勇伝や面白おかしい体験談(実話と称したフィクション)を信じるか……それは、あなた次第です。


 最後に念のため言っておきますが、私は大半のヤンキーは嫌いです。若い頃も今も、ヤンキーという人種のほとんどはクズだと思っていました。しかし、そんな私も高校に入った直後は「俺は空手と骨法やってて、どっちも黒帯(実際は白帯)だから超ツエーよ」などと嘘を吐きまくっていた、どうしようもないバカガキでした。もっとも、これは恥の多い私にとっての黒歴史……の、ほんの1ページに過ぎませんが。







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― 新着の感想 ―
[一言]  はじめまして。サトミ☆ンと申します。  ふじわらしのぶ様、さからいようし様の活動報告から興味を引かれ、今回お邪魔させていただきました。  私も世代的、地域的にヤンキーとはある程度の接点を…
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