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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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同級生

 中学生の時、ロドン(もちろん仮名です)という名の同級生がいました。

 このロドンという男は、いわゆるヤンキーでした。それも「弱い奴には強く、強い奴には弱い」タイプです。私とは、ほとんど付き合いはありません。お互いの顔と名前を知っている、程度の関係でした。

 やがて、我々は中学校を卒業します。その後は会うことはありませんでした。お互いに違う高校へと進学しましたし、そもそも何ら関係がなかったので。


 それから数年後の、ある日のことでした。私が家でボーッとしていると、いきなりロドンから電話がかかってきたのです。

 私は首を傾げました。そもそも私とロドンはクラスも違いましたし、中学校での三年の間に会話をした時間は、トータルで五分も無いでしょうか。そんな赤の他人といっても過言ではない男から、数年ぶりに電話がかかってきたのです。どう考えても変ですよね。

 ただ、当時の私はバカな上に暇でした(今もバカですが)。小人閑居して不善を成すという言葉がありますが、バカを暇にさせておくと、本当にろくなことをしないです。


(よう赤井、久しぶりだな。何してんだよ?)

 私に向かい、馴れ馴れしく語りかけてきたロドン。

「あ、ああ、久しぶりだな。別に何もしてねえよ」

 一応、私はそう答えました。しかし内心では、この男がいったい何用で電話を掛けてきたのか訝しんでいましたが。

(ちょっとさ、お前に頼みたいことがあるんだよ。久しぶりに会わないか?)

「えっ? 何それ?」

 私は嫌な気分になりました。大して仲の良くもない、同じ中学校にいたというだけの関係のロドン。そんな奴と、わざわざ会うほどの用事があるとは思えません。

 しかし、私は会ってしまいました。暇だったから、というのが一番の理由ですね。本当に、バカな人間は暇だと不善しか為さないようです。


 一時間後、ロドンはうちにやって来ました。ちなみに、このロドンですが……見た感じは、髪を肩まで伸ばした海底人ラゴン(ウルトラマンに登場した怪獣)のような風貌です。

 そんなロドンは、うちに来るなりベラベラと語り始めました。

「久しぶりだな、赤井。ところでさ、お前に頼みがあるんだよ」

「へっ? 何?」

「実はさ、ユージの彼女が妊娠したんだよ」

「……」

 私は絶句してしまいました。ユージ(こちらも仮名です)は中学の時の同級生で、ケンカはあまり強くないですが独特の雰囲気と喋りの上手さを持ち、不良たちからも一目置かれていた男です。不良と一般生徒の両方に顔が利き、さらには他校の不良たちにも知り合いが多いという、変わったキレ者でした。

 しかし、ユージとロドンが連絡を取るはずがないのですが……。


 私の困惑をよそに、ロドンは喋り続けます。

「ユージは今、俺らとつるんでるわけよ。でさあ、ユージが困ってるから、赤井にも協力してもらいたいんだよな。頼むからカンパしてくれよ」

「悪いけど、無理だから」

 私は断りました。ロドンとユージがつるむはずがないことは知っていましたので。

 何故なら、ユージは当時アメリカに留学していたからです。当時、私とユージとは個人的に付き合いがあり、連絡を取り合っていました。アメリカにいるユージが、日本にいるロドンとどうやって遊ぶのでしょうか。不可能ですね。

 にもかかわらず、このロドンはぬけぬけと私の前に現れたのです。その面の皮の厚さには、呆れるばかりでした。


 結局、ロドンは私から一文も取れずに退散しました。ユージが留学している件には触れず「ごめん、金ないから」と言いはったのです。




 それから、半年ほどが経ちました。

 ある日いきなり、グンジ(仮名です)から電話がかかってきました。しかも、ただならぬ気配です。

「赤井、ロドンから連絡こなかったか?」

「へっ? 連絡つうか、半年くらい前にうちに来たよ。カンパしてくれって言ってきたなあ」

 私がそう答えると、グンジはとんでもないことを言い出したのです。

「今から、ロドン呼び出してシメることになってんだよ。お前も来ねえか?」

「えっ、何で?」

 私は聞き返しました。すると、グンジはいきさつを語りだしたのです。


 グンジによると……ロドンはまず、中学の同級生に電話をかけまくりました。そして、色んな人間から金を集めたのです。しかも、その時に使った言葉がまた、実にしょうもないものでした。


「ユージの彼女が妊娠したから、カンパしてくれ」

「ゴステロ(仮名です。同級生の間では武闘派で恐れられていました)の後輩が刺されて死んだから、カンパしてくれ」

「マ○シ○ズ(某チーム名です。当時はチーマーの全盛期でした)のイベントやるからカンパしてくれ。ユージやゴステロも参加するから(もちろん二人とも無関係です)」


 こんなセリフを吐き、中学時代の同級生たちから次々と金を集めていたらしいのです。

 しかし、こんな杜撰な詐欺話が、いつまでも通用するはずがありません。やがて、ロドンの悪事の噂は同級生たちの間に広まることとなり、血の気の多いグンジが主だった被害者を集めたのです。

 そして今日、ファミレスにロドンを呼び出し、皆で問い詰め、金を取り立てよう……という申し合わせになったとか。

 さらに、グンジは私も勧誘してきました。

「赤井、お前も来いよ」

「いや、俺はいいよ」

 私は断りました。金を取られていない私が、その場に同席する理由がなかったので。




 さらに時は流れて、数年後のことです。私は偶然にも、グンジと町で出会いました。

 で、昔話などをしている間に……私はロドンのことを思い出しました。

「そういやあ……前に、みんなでロドンを呼び出したじゃん。あれ、どうなったの?」

 私が尋ねると、グンジは顔をしかめました。

「ああ、あれか。あの野郎、本当にとんでもねえバカだったよ」


 グンジの話によれば……まずは皆で、ロドンをファミレスに呼び出しました。

「お前、嘘ついてんじゃねえよ。おい、この始末はどうすんだ?」

 と皆に言われたロドンは、とりあえず金を取ってくる、と言って店を出ました。もちろん、一人では店を出しません。グンジの子分みたいなのが二人、ロドンに付いて行ったそうです。 ところが、三人はいつまで経っても帰って来ません……数時間後、子分二人だけが帰ってきました。


「ごめん、逃げられた」


 ロドンは隙を見て、まんまと逃げたらしいのです。

 しかし、グンジはそれでおとなしく引っ込むような男ではありませんでした。彼は、その場にいた被害者たちを引き連れ……なんと、ロドンの実家に乗り込んだのです。しかも、夜中の二時に。

 当然、ロドンの両親は寝ています。しかし、グンジはブザーを鳴らしまくりました。両親が起きるまで、何度も押し続けたそうです……この時点で、警察に通報されても文句は言えないのですが。

 起きてきた両親に対し、グンジらはロドンのやらかしたことを説明しました。そして、最後にこう言ったそうです。俺らに金を返すか、詐欺で警察に行くか、どっちか選んでください、と。

 すると両親は、皆さんに金を払います、と言ったそうです。


 後日、グンジたちはロドンに払った金を紙に書き出し、両親に渡しました。被害者は総勢で三十人近く(当日こられなかった者もいたそうです)、被害総額は二百万ほどになったとか。

 恐ろしいのは、ロドンの両親はそれら全てを支払ったことです。当時、既に高校を卒業していた(まだ二十歳にはなっていなかったですが)息子の作った借金を、全額返済する……私は親になったことがないので、その気持ちは分かりませんが。




 その後、ロドンはヤクザの幹部の娘に手を出し、都内に居られなくなって逃げ出した……とのことです。真偽は怪しい情報ですが。

 さらに逃げた後は、ヤクザから身を隠すため某宗教団体に入信し、上九一色村にて白い服を着て活動していたという噂も聞きました。もっとも、こちらの話も信憑性が今一つのため、デマである可能性が高いですが……いずれにしても、まともな人生を歩んでいない可能性が高いのは確かでしょうね。







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