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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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スーパーハカー

 以前にも書きましたが、犯罪者には嘘つきが本当に多いです。「嘘つきは泥棒の始まり」という言葉がありますが、あれは本当に正しいな、と思いますね。

 ただ、ここで勘違いして欲しくないのは、世の中には「話を盛る」人が少なからずいます。この「話を盛る」場合と、犯罪者の嘘とは似て非なるものです。

 例えば、話を盛る人は、相手を楽しい気分にさせるために小さな嘘を混ぜます。一方、犯罪者もしくは犯罪者傾向のある人は「俺スゲー」が全てなわけです。どんなテーマであれ、所々に「俺スゲー、だから俺を尊敬しろ」という主張を入れてくるのが、彼らの話なわけですね。これに関しては、いずれ詳しく語ろうと思っています。

 それはともかく、犯罪者には嘘つきが多いのは確かです。それゆえ、時に奇妙な現象が起きることもあります。


 確か十年くらい前だったと思うのですが、私の周囲の人間から、妙な噂を耳にしました。

 その噂とは、とんでもない腕のハッカーがいるというものです。人によって細かい点はバラバラではありましたが、共通している部分が一つあります。


「赤井、俺の知り合いの○○の友だちが、凄腕のハッカーらしいんだよ。そいつに頼めば、サラ金に保管されてる借金のデータを全部消してくれるらしいぜ。お前もどうだ?」


 こんな話を、数人の人間から聞いた記憶がありました。

 もちろん私は、サラ金なんぞに用はありません。ですが、どんなものか興味はありました。サラ金のデータを消す……何と凄い話でしょうか。その話が本当であるなら、金を借りてきてはデータを消し、また借りてきてはデータを消せば、まさに永久機関のごとく金を使いまくることも、理論的には可能なわけです。もっとも、机上の空論ですが。

 ところが、その話を詳しく聞いてみると……まずは、ハッカーの仲介人らしき人物に金を払わなくてはいけないらしいのです。


「まず、お前がサラ金から金を借りてくる。で、仲介人に手数料を支払う。すると、仲介人がハッカーに連絡をとり、ハッカーが借金のデータを消すわけだよ。まあ、俺も紹介料はもらうけどな」


 おいおい、と私は思いました。もしデータが消えていなかったら、私はどうすればいいのでしょう。サラ金の借金を一人で背負うことになるだけです。しかも、金の半分近くを失った挙げ句に、です(詳しい数字は忘れましたが、手数料はトータルで三割から四割ほどだったと思います)。したがって、私はその話を断わりました。

 ただ不思議なのは、この時期に似たような内容の話を、かなりの数の人間から聞いていたという点です。ですから、大元となる何者かがいたのは間違いないでしょうね。

 その大元が、本当にハッカーとしてサラ金のデータを消していたのか、あるいは詐欺師だったのかは……今となっては不明です。いずれにせよ、その大元に関する情報が犯罪者の間で広まったようですね。

 で、犯罪者たちはこれ幸いとばかりに、「俺の知り合いにスーパーハカーがいるんだぜ」という話を吹聴しまくります。何せ、こうした人たちの中では「凄い人間を知っている俺もまた凄い」という理屈が成り立ちます。そんなハッカーの話を聞けば、あちこちに吹聴せずにはいられません。

 その結果、犯罪者もしくは犯罪者予備軍の溜まり場でハッカーの話が広まってしまったのでしょうね。

 ただ不思議なことに、ハッカーが逮捕されたという報道は聞いたことがありません。

 また、ハッカーがサラ金のデータを消したというような報道およびハッカーの名を騙る詐欺の報道も、聞いたことはありません。なので、果たしてスーパーなハカーが本当に存在していたのかについては不明です。

 ただ一つ言えるのは、十年ほど前にそんな噂が流れていた、ということだけです。それも一人や二人ではなく、まったく関係のない数人の人間から聞きました。これは、ただの偶然とは思えません。実際にそうした活動をしていた凄腕ハッカーがいたのか、あるいは詐欺グループが活動していたのかは不明ですが。


 最後に、このハッカーの話ですが、よくよく聞いてみるとかなり凄い内容のものもありましたね。

 聞いた中で一番凄かったのは……。


「赤井、よく聞けよ。俺の知り合いのハッカーはな、ただデータを消すんじゃないんだよ。この世に存在しない架空の人間のデータを作り出すんだよ。そいつが金を借りたことになってるから、お前には借金はいっさい残らないんだ」


 存在してない人間のデータを作り出す、とは恐ろしい話です。もし、そんなことが出来るなら、サラ金に借金するより格段にスケールの大きな凄いことが出来る気がしますが……実際に可能なのかどうかはさておき、この話を考えた人はSF作家の才能もあるかもしれませんね。







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