エロ本のお話
タイトル通り、エロ本について語ります。たいしてエロくない話ですが、下ネタ全般がダメな人は読まない方がいいかもしれません。
念のため、もう一度書きます。今回は、エロ本について語ります。そういった下ネタ系の話が嫌いな方は、速やかに閉じた方がよいかと思われます。
十年以上前のことですが、知人のビート(もちろん仮名です)が逮捕されました。新宿警察署にいるとのことでしたので、さっそく面会に行きました。ビートは元気そうで、しょうもない話を強化ガラス越しにしたのを覚えています。
別れ際、ビートはこんなことを言いました。
「悪いんだけどよ、エロ本差し入れてくれ」
私は、わかりましたと返事をしました。その後、コンビニに行ったのはいいのですが、はたと困ってしまいました。エロ本を差し入れるのは構わないが、あんまりドギツイ本を入れたら警官に怒られるのではないだろうか。そんなことを考えた私は、エロ本でもソフトな感じのものを買って差し入れました。忘れもしません『サブラ』なるタイトルの雑誌です。グラビアページが多めの、エロ本に近い情報誌……といった内容だったと記憶しております。今はわかりませんが。そもそも、今も残っているかも不明です。
しばらくして、ビートから手紙が来ました。中には、こんなことが書かれていました。
「差し入れてくれてありがとう。でも、サブラはないな。今度は、もっとマシなのにしてくれ。あれはエロじゃない。金は払うから」
意外でした。ということは、留置場でもエロ本を普通に読めるようです。知らない人もいるかも知れないので説明しますと、留置場や刑務所では、差し入れられた本や日用品などは、警官や刑務官によってチェックされます。違反な品などが隠されていないか調べるためですが、内容が相応しいものであるか検閲するという理由もあります。
本の場合、内容が相応しくないと判断されると、収容されている人は読むことが出来ません。その場合、他の荷物とともに施設が預かる形となります。私は漠然と、エロ本も内容が相応しくないと判断されるのではないか……と思っていたのです。
ところが実際には、かなりドギツイ内容のエロ本でも入るようです。事実、私は手紙をもらった後に新宿警察署に行き、コンビニのエロ本コーナーで三冊買って差し入れましたが、全て読むことが出来たそうです。
東京拘置所や刑務所でも、エロ本はちゃんと入ったそうです。恐らくですが、昨今では紙のエロ本の購買層のかなりの部分を、留置場や拘置所や刑務所に収容されている人が占めているのではないでしょうか。ちなみに二十年以上前には『チョベリグ』なるエロ本が刑務所で人気だったとか。タイトルに時代を感じてしまいますね。
最近では、紙のエロ本は減ってきているようです。いずれは、なくなるのかもしれません。しかし、そうなると留置場や拘置所や刑務所に収容されている人たちの、僅かな楽しみを奪うことになります……などと書いたら「お前は犯罪者の味方をするのか」などという、お叱りの言葉があちこちから飛んで来るかもしれないので、ここまでにします。
と、本来ならここで終わらせるべきなのでしょう。ただ、最後にどうしても書いておきたいことがあります。今回、なぜエロ本について書こうかと思ったかといいますと、このようなメッセージが届いたからです。
「ツイッターで、留置所へ差し入れする雑誌はエロ本が駄目で、グラビアが掲載されていると準エロ本と見なされ差し入れできない時もあるとかいう呟きを見たんですが、本当ですか?」
私は、それは違いますと返信しました。事実、私は新宿警察署と碑文谷警察署と本庄警察署にて、コンビニでR-18のコーナーに置かれていたエロ本を差し入れていますが、中にいる人は読むことが出来ました。もちろん、完全な無修正で法に触れるようなものは入りませんが、コンビニで市販されているエロ本は入ります。
ましてや一般誌が、ヌードグラビアが掲載されているだけで差し入れ出来ないなど、有り得ません。
恐らく、この呟きの主には実体験がなく、本やネットで仕入れた知識のみを頼りに呟いてしまったのでしょう。ツイッターには、そういった呟きが溢れていることは忘れないでください。
蛇足になりますが、件の呟きを確認してみたところ、二人の人がリツイートしていました。こうした間違った知識を簡単にリツイートする人たちは、フェイクニュースも簡単にリツイートしてしまうのでしょうね。