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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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変わらない人たち

 一年くらい前だったかと思いますが、仕事先の人といろいろ話す機会がありました。仕事の話より、むしろ雑談が主でしたが……ちょっと驚かされました。

 話題は、若い社員がすぐ休んで大変だ……というようなものになり、私は知り合いがかつて鬱病であったことを口にしました。


「いやあ、大変みたいですね」


 と言ったところ、相手は笑いながらこう返してきたのです。


「赤井さん、何いってるんですか……鬱病なんてね、単なる怠け病ですよ」


 えっ? と私は驚きました。目の前にいる人(Aさんとします)は、まだ二十代のはずでした。私より若く、ネットで調べたりする能力も私よりは上なはずです。なのに、鬱病に対してこんな誤った認識しか持っていないとは……。

 すると、Aさんの隣にいたBさんも口を開きましたが、こちらも仰天する内容でした。


「そうそう。鬱病なんてね、寝不足の顔で病院に行って、辛いとか苦しいとか死にたいとか言ってれば、医者が診断書を書いてくれるんですよ。だけど、遊びに行く時は元気なんですから……本当、怠け病を甘やかすのはやめてもらいたいですよね」


 このBさんは三十代でして……ギリギリ昭和生まれですが、それでも考え方は平成生まれに近いはずなんですよ。

 そんな二人の口から、怠け病なる言葉が出るとは……私はちょっと呆れましたが、仕方ないので話を合わせておきました。鬱病の定義についてこの場で言い合いをしても、何の得にもならないからです。




 昭和生まれのおっさんには、この手の人が多いんですよね。何でもかんでも精神論で片付け「俺の若い頃に比べりゃ、こんなの甘い」などと言い放ちます。

 さらに、自身の乏しい知識や経験だけで物事を断定する……本当に、この手のおっさんには極度に断定的なタイプが多いです。「鬱病は怠け病」というのも、おっさんに有りがちな理論です。

 ただ、こういうおっさんの場合は情弱とでも言っておけば済みます。まあ、私自身も情弱の部類に属するおっさんなので、あまりこの言葉は使いたくないのですが……。

 しかし、まだ若い二十代の人の口から「鬱病とは怠け病」なるセリフが飛び出てくるとは思いませんでした。おっさんと比べれば、知識を得る手段はちゃんと心得ているはずなのに。

 ですから、結局は年齢など関係ないのでしょうね。要は、その人たちにとって鬱病とは怠け病……これは、確固たる信念なのでしょう。

 世界には、様々な宗教があります。中には、端から見ればアホらしいように見える儀式もあります。しかし、人は信じたいことを信じるものです。端から見て、どれだけアホらしいとしても、こういう人たちは自分たちのやり方が正しいと信じきっています。

 この手の人たちと議論しても無駄なので、はいはい言って適当に流しておきましょう。下手に分からせようとすると「お前に何が分かるんだ! 俺の若い頃はなあ……」などと話をとんでもない方向に持っていき、最終的に「俺は様々な経験をして苦労してきた。だから、俺の考えは正しい」と主張します。

 だから、こういう人たちとは議論しない方がいいです。時間の無駄ですし、話すだけ疲れますので……。




 と、ここで終わらせればいいのですが、あいにくとそうはいきません。

 実は以前に、噂で聞いたのですが……なろうのユーザーに、鬱病とパニック障害を患っている(自称ですが)人がいたそうです。その人は、活動報告などに切々と自分の悩みや苦しみを書き、時には「つらい」「苦しい」「死にたい」などと、活動報告やエッセイでさんざん弱音を吐いていたそうです。周りの人たちは「元気出してください」「俺はあなたの作品好きです」などと、同情的なコメントを寄せていたとか。

 ところが、そのユーザーの作品が書籍化することが決まりました。とたんに、ユーザー氏の活動報告は明るいものになったそうです。「つらい」「苦しい」「死にたい」といったセリフもピタリと収まった、と聞きました。

 私には、このユーザーが本当に病気であったのかは分かりません。そもそも、全く交流がないので……しかし書籍化が決まったとたんに病状が改善するとは、随分と都合のいい病気だと言わざるを得ないですね。

 こういう人の存在が、怠け病なる架空の病に信憑性を与えているように思いますね。本物の病を抱えている人たちにとってどれだけ迷惑か、分かっていないのでしょうか。まあ、そんなことは考えてもいないのでしょう。

 同情を買うような発言を繰り返して、皆の注目を集める……さしずめ、炎上商法ならぬ同情商法でしょうかね。




 最後になりますが、世の中には極度に断定的で「鬱病なんてない。そんなのは、ただの怠け病だ」などというトンデモ理論を真剣に語る人たちがいます。

 その一方で「つらい」「苦しい」「死にたい」と言い続ける同情商法で生きてる人もいます。

 私は、どちらのタイプとも関わり合いにはなりたくないですね。もっとも、どちらのタイプも何を言われようが「変わらない」という点では同じでしょうが……。







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