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お化け屋敷~ゴーカート戦

 第六戦目。


 マサムネはラウンド開始と同時、真っ直ぐにお化け屋敷へと走った。


 向こうがポジションに着く前がチャンスだ。お化け屋敷は入り口と出口、それと裏口の三ヵ所から中に入ることができる。アリスは恐らく、裏口から入ってお化けの中に潜もうとするだろう。ならばと、マサムネは正面入り口から勢いよく突入する。


 暗くて狭い通路。いくつかのお化けを振り切って進むと、曲がり角に動くものを発見する。


 マサムネはすぐさま発砲した。


「キャー!」


 アリスが悲鳴を上げた。


 的は外れ、マサムネはそのまま逃げるアリスを追撃する。

 ヘッドセットからアリスの楽しげな笑い声と叫び声が響く。

 アリスの尻尾を捉えては、二丁拳銃をぶっ放す。


「待って! ちょっと待って!」

「うるさい! 覚悟しろ、お化けめ!」


 そう言って、どんどんアリスを追い詰めていく。

 ひたすら銃を撃ち続けると、ついには弾切れを起こした。

 マサムネは追い掛けながらリロード。

 だが、一体のお化けが一瞬マサムネの行く手を遮り、マサムネがそれをかわすと、そこで──ズドン。


 いつの間にか逃げるのをやめて構えていたアリスに頭を撃ち抜かれた。


 息切れをしながら、なおも笑い続けるアリス。


「あー、焦ったぁ。恐かった~」


 まるで子供のようにはしゃぐアリスに、マサムネは唖然とした。


 こちらの弾切れと、ナイスなタイミングのお化けのブラインド。


 偶然かもしれないが、アリスはすべてを狙って行動していたように思えた。慌てて逃げつつも、一方では至極冷静に反撃の手立てを組み立てていたのだ。


 マサムネは呆然と画面を見つめながら、アリスに底知れぬものを感じた。




 第七戦目。


 残すところあと四戦。マサムネは(おもんぱか)る。


「なあ、次はどこへ行く?」


 探るように尋ねる。


「どこへ連れてってくれる?」

「そうだな……。そろそろメリーゴーランドあたりか?」

「ええー! メリーゴーランドは暗くなってからでしょ」


 不平の声が返ってきた。


 この遊園地マップはご丁寧なことに、プレイ時間が進むとちゃんと夜が訪れる。

 今はちょうど夕方前。

 あと一戦か二戦ほどで夜になるだろうか。


「じゃあ、ゴーカートとか」

「いいよ」


 ゴーカート乗り場へとマサムネは走る。

 ゴーカートのコースは敷地の半分を大きく囲って伸びるロングコース。お互いに動いて探し合いをしていたら、普通にプレイしているのとそう変わらない。


 そこで、


「おい、今度はアリスがカートに乗れよ」


 と提案する。


「えー」

「俺がどっかで待ち構えてるから」


 これが逆だったらこちらにすごく不利な話になるが、二丁拳銃とスナイパーライフルだ。例え見通しのいいさらけ出し状態のカートの上だろうと、こちらはある程度近付いてくれないと射程に収まらない。


 アリスもそれを考えたのか、


「わかった。いいよ」


 とすぐにオーケーの返答。


「よし」


 と頷いて、マサムネはポイントを求めて移動を開始した。




 ポイントを決めて身を潜ませ、マサムネはアリスが来るコースの先を見据えた。

 アリスが来たらタイミングを見て躍り出て、一気に勝負を掛ける作戦だ。


 マサムネは画面と音に集中する。


「ねえ、久し振りだね」


 不意にアリスが言葉を掛けてきた。


「……何がだよ」


 意識せず間が置かれ、マサムネが返す。


「マサムネとこんなに楽しく遊ぶのって」

「……」


 どこか浸るように話すアリスに、上手く言葉が紡げない。


「中学の頃はさ、こんなの毎日当たり前のようにやってたのに。なんだか今は、あの頃がすごく遠くに思えちゃう」


『なあ、お前、彼氏となんかあったのか?』


 マサムネはかろうじてその言葉を呑み込む。

 そんなのはわかっている。

 何かあったからこそ、アリスは今夜、ここにいるのだ。


(……いや、そうじゃない)


 何かあったのではない。何かあるのだ。

 過去ではなく、現在進行形で。

 そして、この先の未来に。


 言葉を呑み込んだマサムネは、別な言葉を口にする。


「マリッジブルーってやつか?」


 冗談を言うように、笑いを含ませて。


「そうなのかな」


 アリスも明るく笑って答える。


 わかっている。

 今夜のアリスは、ひどく弱っている。まるで隙だらけだ。

 こんなの、普段のアリスには絶対にないことだ。


 だけど、何がアリスをそうさせているのかなんて考える必要もない。


 それを賭けて、今、戦っているのだ。


「オッケー。スタートするよ」


 アリスの声。


「おう」


 マサムネは気を引き締めなおした。

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