(2)藤木くん。
『蘇鉄ー。一緒に帰ろうぜー。』
HR終了後の放課後。友達が俺を誘ってる。
面倒臭いなぁ。今はそういう気分じゃないんだけど。
コイツ、A型の癖にKYなんだよな。たまに断ると無理矢理連れ出される時あるし。
ダルい。ダルい。ダルい。ウザい。ウザい。ウザい。
「ああ、……ごめんね。今日は用事があるんだ。」
俺はニッコリ笑って誘いを断る。
まぁ内心イライラしてるけど、笑うことは出来る。愛想笑いってやつ?
生きてる内に身に付いた。どんなにイライラしてても顔に一切出さないでニコニコ笑っていられる。
俺のちょっとした特技かもしれない。
『そっか。まぁ用事ならしゃーねーな!じゃなー』
「うん。バイバイ。」
永遠に。って小声で呟いた。アイツは気付いてなかった。
アイツが教室から出ていくのを確認すると、俺は苛立ちを隠さず思い切り舌打ちをした。
毎日毎日同じ事の繰り返しで、鬱屈してる。
新しい刺激が欲しいトコなんだけど……。何も無いや。つまんねぇの。
このまんま高校卒業していくのもな……耐えられないかもしれない。
……やっぱり、新しい日常が開ける気がする鍵の子は。
「…………藤木くん……。」
藤木くんしかいない。藤木くん。藤木くん。
クラスから孤立してる、ボサボサ黒髪の同級生。
名前は藤木くん。藤木 歩。
俺は何故か藤木くんの事が気になって仕方無い。
今まで生きてきてああいう類いのダサい子は何人も見たことある。
けど、彼は何か違う。異様なオーラを放ってるっていうか……………。
気になる。気になる。気になる……。
「……ああ、もう。」
頭がぐちゃぐちゃになってしまった俺は、たまらず鞄を雑に持って乱暴に教室を飛び出た。