【物語】竜の巫女 剣の皇子 5 ロゴノダの皇子たち
「『末』のヤツが休暇!?」
ロゴノダ皇国第二皇子アラフは執政室の机に向かい書類整理をしていた。が、ひょっこりやってきた第三皇子オリデオの言葉に、思わず彼は素っ頓狂な声を出した。
「そう『お腹が痛いので半年間お休みします』って、冬官長のアテイから許可をもらったそうだ」オリデオはおかしそうに話す。
アラフは複雑な顔をしてため息をついた。
オリデオは「兄上、よいではありませんか。これで兄上の働きがよりいっそう際立てば主上の覚えも格段にあがる」笑顔で言う。
「……主上はなんと?」とアラフ。
「さあ、『末』はもともとほったらかしですから、何も。皇太子兄も聞き流していたよ。あいつの仕事はアテイができる。主上は有能なアテイを信頼しているので何も困らないでしょ?」オリデオは鼻で笑う。
アラフは「それで『末』はどこへ?」とオリデオに尋ねた。
「どうも隣のアーサラードラに行ったようで」
これまた愉快そうにオリデオが話す。
「アーサラードラ!?半年も!?」
歳の近い兄があまりにも驚いたので、オリデオは吹き出した。
「オリデオよ、あれは何を考えているのだ?」
兄の素朴なことばに
「さあ、アーサラードラに取り入って何かするのかな?あそこは女には困らないしね。女官も選び放題だ。でも、巫女にはどうするのかと」
オリデオがくくっと笑う。
「馬鹿話に付き合う時間はないぞ」アラフはオリデオを睨む。
オリデオはすぐに
「ああ、兄上ごめん!愛しい兄上を怒らせるつもりはないんだ。あいつはここではいらない子。押しつけられた仕事が嫌で逃げたんじゃない?だってあれは皇子の仕事ではない。私なら耐えられないよ。このまま国務を放り出して除籍となれば私は嬉しい。私には兄上がいればいい。真の国皇になるべきは兄上だと思うから」
微笑みながらオリデオは、兄の顔を覗き込んだ。
アラフは無言でオリデオを見返した。
「本当に有能なのは、兄上だ」
オリデオはきびすを返し、窓の外を眺めた。
「そうそう、もうひとりの変なヤツ。リオソスは書物を読みすぎて、頭に蜘蛛の巣が張られていた事にも気が付いていなかったそうだよ。魔道師よりもひどい。本当に馬鹿ばかりだ」
そう言いながらオリデオは笑い、秋風に目を細めた。
アラフはいちばん下の実弟の事も思うが、オリデオとはまた違う心境であった。ソロフスに対してもである。
『主上や皇太子、アテイは末のことを自分とは違う面で認めている』ことはソロフスが宮城にいない時であっても感じることがある。
アラフ自身も国務に対しては実直なつもりでいるし、それを評価されているとも感じる。しかし、なにか違う。
わからない。
アラフはそれらを心中にとどめておいた。誰が愚かなのかは死ぬまでわからない、そうは学んでいる。
オリデオの後ろ姿を眺め、アラフは自身の仕事に集中することにした。
(つづく)




