42話 梅雨
菌類くらいしか喜びそうのない梅雨の季節がやってきた。
当然の如く雨が降ってる。
しかもボロいアパートの中だからか、かなり湿気が凄い。
キノコが生えてきそうなくらい凄い。
「早く梅雨が終わらないかなぁ」
呑気なこと言ってみる。
「洗濯物が乾きにくいんだよ…」
愚痴もこぼしてみる。
傍から見ると若干痛い人だが、ひとり暮らしなので問題ない。
そう思っていると、チャイム音が聞こえた。
「すいませーん」
「今行きますー」
お決まりの返事を返しつつ、ドアを開ける。
「すいません!ウチの商品買っていきませんか?198000円です!」
セールスが来たようだ。こんなクソジメジメしてる中ご苦労様です。
「いや、僕そんな金にないんで遠慮します」
こんな日にもお仕事ご苦労様だが「セールスは帰さないと寄生する」という母の格言があるし、帰ってもらおう。
「まぁ少しくらい見てくださいよ!紹介する商品は、この『the 乾燥くん2号』!」
普通の乾燥機を見せつけられても困ります。
「この乾燥くん2号はそこらの乾燥機とは違います!乾燥くんから見れば他の乾燥機はただのゴミです!漬物石にしか見えなくなるくらい違うんです!!」
「他のとは何が違うのですか?」
「めちゃくちゃ乾きます」
やっぱり普通の乾燥機じゃないか。
「どうです?」
どうですじゃねーよ。買わないよ。
「帰っていただきます?」
笑顔で言い返す。
「落ち着いてください!!!!ちょっと使ってみたら買いたくなりますよ!!!!!」
「はぁ・・・」
「取り敢えず家の中にお邪魔させていただきますね…うわ、ボロい上にクソジメジメしてる……居住者の
性格がにじみ出てますねー」
「ってそんなどうでもいい事は置いといて、早速乾燥くん2号スイッチィィィ…オン!!…はい、あとは10分待てばok!因みに待つ間、昼を抜いた私の為にカップラーメン作ってくれてもいいのですよ?」
作るわけないだろう。
(10分後)
「お…おお…!」
部屋に入ってみたらびっくりした。
あんなにジメジメしていた部屋が、とても乾いている。
コップに入れた水も、ヤカンの中のお湯さえ空になっている。
「因みにコレ、レンジの代わりにもなります。どうです?」
「買います」
即答した。
数日後、梅雨なのに部屋の中で干涸らびた青年が発見された。




