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31話 親切

俺は偶然、犬が車線に出るのを見た。


迫ってくる車に犬は気付いていない。


「クソっ・・・危ねぇ!」


俺は叫びながら、車線に飛び出て犬に覆いかぶさった。


車がクラクションを鳴らす。多分轢かれるだろうなと自分で思った。



気付いたら俺は病院のベッドに寝ていた。


「俺は・・・助かったのか・・・」


その時、看護婦が部屋へ入ってきた。


「おはようございます。もう2日も寝ていたんですよ?」


「そうだったんですか・・・」


「そうなんですよ・・・兎に角、目が覚めてよかったですね」


看護婦は笑顔で花を取り替えながら俺に話しかける。


「あ、それと、貴方に面会したいって子が居るんだけど・・・貴方が此処に来た時から会いたいって言ってたの。でも流石に意識不明の時はダメだって言って追い返しちゃってたから・・・」


「そうなんですか、良いですよ。通してあげてください」


「わかったわ・・・あと、数ヶ月は絶対安静だからね。何かあったらいつでも呼んで」


「って言うか指一本動かせませんから」


お互いに笑い合った後、看護婦は小さな女の子を部屋へ招き入れた。


ゆっくりしていってねと言いながら看護婦が去った後に女の子へと話しかけた。




「おにーさん大丈夫?」


「ああ、なんとかね・・・ところで君は誰かな?」


その子は茶色い髪に黒い目と、少しみすぼらしい格好をした女の子だったが、俺の記憶に覚えは無い。


「助けてくれてありがと」


「うん・・・助けた?」


「そう、車から」


その言葉を聞いて、あの犬のことを思い出す。


もしかしてあの時の犬なのか?リアル鶴の恩返し?


「ハハッ・・・面白い冗談だね」


そんな馬鹿なことと思い直す。


だが少女は真剣な目つきでこちらを見てくる。


「嘘じゃない、お礼を言いに来た」


「・・・そうか、ありがとう」


あの場に居た子供が犬の代わりに言いにきたのかもしれない。


そう思い、俺はお礼を言う。




「じゃあ、いただきます」


・・・は?いただきます?


「今日はお腹いっぱい食べれる」


そう言うと、少女は俺の腹に噛み付いてきた。


「え?・・・痛い痛い痛いぎゃあああああ!」


振り払おうとしても、指先一つ動かせない。


少女は渾身の力を込めて俺の腹を食い破った。




翌日、犬は普段のように餌を求めて街中を徘徊していた。


路地裏の汚いゴミ箱を漁る最中、まだ真新しい新聞の記事を見つけた。


その記事には病室で男が惨殺死体で発見された事、彼の第一発見者である看護婦が殺人の容疑で疑われている事が書かれてあったが、犬は一瞥もせずに食べられるものがないかを探し始めた。

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