18/50
18話 木霊
「あーはっはっは」
真っ白な廊下に笑い声が木霊する。
「あーっはっはっは」
女性は今日も病棟の壁を掻き毟る。
笑い声から逃れるために。
「あーっはっはっは」
近づいてくる。この部屋に
はやく、早く逃げないと
「あーっはっはっは」
一心不乱に女性は壁に穴を開けようと掻き毟る。
爪は剥がれ、肉は抉れているが関係ない。
「あーっはっはっは」
長い時間を費やした。
掘れたのはわずか数センチの穴だったが、女性にとってはこの上ない喜びだった。
女性が一息ついたその時、その僅かな穴から何かが入ってきた。
「あーっはっはっは」
小人だった。
耳まで裂けた口が不自然に釣り上がり、醜い笑顔を創り出していた。
「あーっはっはっは」
2体目が入ってきた。
最初と同じ小人が入ってきた。
「あーっはっはっは」
3体、4体、5体……休むことなく小人は穴から入ってくる。
女性は黙って目を瞑った。
木霊はいつまでも部屋に響いていた。




