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14話 モラルマン

平日の昼間、僕とヨシオはあてもなく町を歩いていた。


きっとこの後はゲーセンに行って、コンビニ前に居座って談笑し、商品を盗んで、適当な奴をぶん殴って、カツアゲをして、沢山の仲間を引き連れてまたコンビニ前に居座るのだろう。


だって僕らは不良だから。


授業は解らないし退屈だ。だからサボってもいいだろう、むしろ良いに決まってる。


僕は大通りをヨシオと歩きながら、感慨に浸っていた。


普通の奴とは違う事をやっている。タブーに触れているという行為が、僕をたまらなくわくわくさせた。


僕が余韻に浸っていると、声が聞こえてきた。


「モラルがなっていないねぇ。学生の本業は勉強だよ、君たち」


そう聞こえると、目の前に突然男が現れた。


その男は190cmを越えようかというくらい大柄だった。

輪郭は綺麗な楕円を描いており、髪の毛は見えない。大きな帽子と、綺麗なコートと手袋を身につけていた。

そして、満面の笑顔だが口が耳まで避けているマスクをキッチリと被っている。どこから見ても肌は見えず、声は機械で作られているかのように無機質で、重かった。


「君たち、警告だ。今すぐ学校へ戻って授業を受けなさい」


「何行っているんだこいつ」


「最終警告だ。君たちが不良を止めないというなら、お仕置きをするぞ」


「煩いんだよオッサン。俺の気持ちも解らないくせに説教するなよ」


ヨシオはこいつボコっちまおうぜと僕に向かって言うと、ヨシオ鼻息を荒げながら男に殴りかかった。


だが、ヨシオの拳は男に通らなかった。


ヨシオの拳が男の体に触れる直前、男の体に穴が開いた。


垣間見えた穴は、向こうの景色が見えないほどに暗く、さながらどこかの別次元へと繋がっているかのように見えた。


そこにヨシオの拳が取り込まれた。


そして、ブチッと肉を引き裂く音と共に、穴は閉じられた。


「あああああ・・・」


ヨシオは顔を歪ませ、地面にへたり込んだ。


彼の右手首から先が綺麗になくなっていた。


何故か血は流れていなかった。


「『仏の顔も三度まで』と言うが、私は気が短いのでね」


ピエロの面のように歪んだ笑みを浮かべながら、男はヨシオに向かって右腕を振り上げた。


男の右腕はゆっくりと、大きな鉈へと姿を変えていった。


男はそのまま、勢いよくヨシオの頭目掛けて振り下ろした。


ビュッと鈍い風を切る音に少し遅れて、ヨシオは半分になった。やはり、血は出ていなかった。


「さて、君はどうするのかな?」


そう言いながら、男は僕を見て近寄ってきた。


友人の死、自分の生命の危機、迫る恐怖。


「うわあああああああああああ」


僕は無我夢中で逃げた。


男は一歩も動いていない。





あれから暫く走り、裏通りへと逃げてきた。男の姿は、どこを探しても見えない。


「撒いたのか・・・」


安心し壁に寄りかかる。


そして一息を付いた瞬間、再び鈍く風を切る音が聞こえた。


僕の視界がずれてゆく・・・。




少年が寄りかかっていた壁に、大きな穴が開いた。


穴はどこまでも暗かった。


その穴の中から、男が現れた。


そして、体が横に真っ二つになった少年を見つけた。


男は少年が死んだ事を確認すると、


「お仕置き完了」


と呟き、再び穴の中へと戻っていった。

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