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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ホラーのようなホラーじゃない話。

犯した罪と同等の罰を

作者: 原雄一

 私は死神。驕りすぎた人間どもに、罰を下すのが仕事だ。

 犯した罪と、同等の罰を。つまり殺人を起こせば死を、人身事故を起こせば事故をと言う具合だ。

 今日も仕事が入っている。人間はあまりにも罪深く、我々の対処が追いつかないほどだ。今回の仕事は、高校三年生になる青年の抹殺だった。

 渡された資料には一通り目を通したが、仕事の直前にもう一度見直すのが私の日課だ。私は資料を広げ、目を通していった。

 青木勇作、十七歳。男。○○高校バスケ部所属。昨年五月に殺人を犯す。現場はとあるビルで、被害者は当時十七歳の男子。犯行動機は――。

 死神はなんでもお見通しだ。下っ端には出来ぬ事だが、我々クラスになるとその者の個人情報が視える(・・・)ようになる。そして死神長ともなれば、その者の心の内まで見透かす事ができるのだ。

 私は青年の住むマンションのエレベーターに乗り込み、待った。彼の住居は十三階と言う事なので、十四階で待機していた。彼がエレベーターを呼ぶのを待っているのだ。

 高い声がして、一匹の子犬が乗り込んで来た。その瞬間を見計らったようにドアが閉まる。どういう訳だかこのマンションのエレベーターは、動き始める直前までドアが開いているらしい。飼い主は困っているようだが、別にわたしには関係のない事なので放っておく事にした。

 そして、箱が移動し始めた。やけにゆっくりとした動きで下降する。

 十三階に着いた。ドアが開き、犬が飛び出す。ドアの目の前で待ち構えていた青年は、突然飛び出してきたそれを、状態をのけ反らせる事でかわした。

 青年は「おはようございます」と言いながらエレベーターに乗り込んで来た。感じの良い青年だ。こんな好青年が、何故殺人などと言う重い罪を犯したのかが理解できない。

 私は返事をせず、ただ黙って青年を見ていた。青年は、自分の目的地である①が押されているのを確認し、『閉』ボタンを押した。緩慢な動きでドアが閉まる。

 箱が動き出し、階数表示がその数を減らし始めた。やがて1になり、ドアが開いた。青年が下りてゆく。私もその後を追った。

 青年は道路を渡り、まっすぐに歩道を歩いていった。私もそれに倣う。青年がこちらを振り向いたが、気にはしない。私はスピードを速めた。

 青年がまたこちらを向き、歩調を速めた。私も追いつけるようにスピードを上げる。青年はおびえたように逃げ惑った。とは言っても一本道なので、逃げ切れる筈もない。


 青年の頭が、地面に転がった。


 その瞬間私は、この上ない快感を覚えた。今までに感じた事のない快感だった。そして私は、何故この快感を覚えたかを悟る。

 若者を殺すのが好きなのだ。

 私は無性に、若者を殺したくなった。反対側の歩道を歩く少年を見つけて、ひゅうと近付き、持っていた鎌で首を斬った。肌が粟立った。

 私は今度は、側にいた少女に近づいていき、鎌を振るった。血しぶきが舞い、少女の身体が地面につく。私は言い知れぬ快感を得、笑い声を上げた。

 すると突然、仲間の死神がやって来た。何も言わずに私に近づいてくる。普段はおしゃべりな彼が、どうした事かと思っていると――。


 私の首が、宙を舞った。


 ―――――罰を。


 ちっ、少し、やりすぎたようだな……。

 この話が『人殺しに罰を』の後日談だと気付いた人、あなたはすご(ry

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