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私の“使い魔”さま  作者: 夢見の筆
7/12

都市に潜む異常

翌朝…身支度を整えたエリスは、ロフトで寝ているケイオスが起きてくるのを待っていた。

一晩経ち、少しは魔力が回復したとはいえ、まだまだ全快には遠い状態にある。

本当なら他の受験者と同じく、今日明日は学内で大人しくして、魔力の回復を待つべきなのだが…


「はあ…どうせ私は魔術は使えないし…だったら魔力の回復を待たなくても同じだよね…」


落胆して溜息をついていると、ロフトからケイオスが降りてきて、エリスに手を挙げ、軽く挨拶する。


「朝から随分と落ち込んでるようだな…悩み事を抱えすぎるのは、精神衛生上好ましくないぞ。」


「おはようございます…いつものことだから、気にしないでください…」


「そうか、なら何も言うまい。剣の調達と魔器の捜索に行く準備は、もうできているか?」


「はい、行きましょう。このセントヘイム学園の正門から街道を歩いて、10分くらいでセントラルシティの入口です。」


寮の部屋から出て、昨日と同じようにケイオスはエリスの一歩後ろに付き従うようにして歩いていく。

そんな姿を見ていると、エリスは自分が喚び出したのが本当に魔王なのかと疑問に思わざるをえなかった。


「あの…ケイオスさん、失礼なことを聞きますけど…本当に魔王なんですよね?」


「契約の時にそう名乗りを上げたはずだが…何故、そんなことを聞く?」


「いえ…どうして私なんかが喚び出せたのか、とか…なんで一歩後ろを歩いているのかな、とか…」


「前者に関しては、エリスの魔力指向が俺と繋がっていたからだ。後者に関しては…恥ずかしい話だが、道が分からんだけだ。」


エリスのささやかな疑問にも、ケイオスは嫌な顔一つせず、すらすらと答えを提示する。

魔王とはまがまがしく、暴威と恐怖の象徴…と教わっていたのが、呆気なく崩れ去るくらいに、ケイオスは気さくだった。


「ふふっ…ケイオスさんって、ちょっと面白いんですね。」


「何か含みのある物言いだが…それでエリスのそういう可愛らしい表情が見れるなら、安いものだな。」


「なっ…わっ…私なんか…可愛くなんかっ…」


エリスが見せた笑顔を、ケイオスは相変わらず平然としながら、可愛いと評する。

しかし、言われたエリスは大慌てで、ケイオスの評価を訂正しようとしていた。

結局、学園の正門に着くまで、二人は可愛いかどうかの議論を繰り返し…真っ赤になったエリスが黙ってしまったことで、ケイオスの勝ちとなった。


セントヘイム学園は後方を山脈に覆われ、正門からなだらかな坂道を下ると、大陸中央の大都市セントラルシティにたどり着く。

セントラルシティはセントヘイムと繋がる南門、港町シーサイドと繋がる北門、大陸西部の砂漠へと繋がる西門、商業都市やギルドが点在する大陸東部に繋がる東門の四方へ繋がる中継都市である。

また、セントラルシティは街の四分の一がスラム街となっており、西門方面は小規模の治安部隊が常時三名体制で駐留している。


そんなことをケイオスに説明しながら歩いていくと、南門では何やら検問らしきことが行われていた。

物々しい雰囲気に、エリスもケイオスも少し離れた場所で立ち止まり、様子を見ていた。


「あれも、いつものことなのか?」


「違います…何か街の中であったのかも…」


「行かなければ分からない、ということか…」


覚悟を決め、二人が門に近づくと、検問官が身なりを見て、名前を尋ねてきた。

エリスはケイオスを突然変異の使い魔だと必死に説明して、何とか検問官に納得してもらった。


「あの…こんな検問をされるなんて…何かあったんですか?」


エリスは先程まで険しい顔でこちらを見定めていた検問官に問う。

何かの異常があれば、それが魔器探索の手がかりになるかもしれない。


「ああ…昨夜、スラム街で一騒ぎあってね…殺人鬼が出たんだよ。治安部隊が、やられていた…」


ありえない話だった。

装備も能力もしっかりとした治安部隊が、ただのスラムの暴徒に負けるはずがないのだ。

しかも、負傷するくらいまでならまだ分かるが、今回の騒動は死傷…


「エリス…魔器の反応が近い…剣の調達を終えたら、スラム街とやらに行くぞ…いいな?」


「はい…行きましょう…ケイオスさん…」


検問官に門を開けてもらい、二人はセントラルシティに足を踏み入れるのだった…

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