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私の“使い魔”さま  作者: 夢見の筆
6/12

魔器

最後に一騒動あったものの、無事にエリスも契約を完了させ、召喚に使った魔力が回復するまでの期間、学士寮の自室に戻ることになった。

クレアとマルスも同じく学士寮に戻るのだが、マルスは貴族の出身であり、クレアとエリスとは別の宿舎に住んでいる。


「それじゃあ、二人とも…今日はゆっくり休んで、お互い消費した魔力の回復に専念しよう。」


「ええ、パートナーとのコミュニケーションでもしているわ。」


「お休みなさい、マルス君。またね。」


召喚とは世界の隔たりを取り払い、自分が求めるものを…それが本当に欲していたものかどうかは別として…強制的に呼び寄せる術である。

喚び出す対象に応じて魔力の消費量は変化するものであり、場合によっては法式に乗っ取り儀式を要するものもある。

今回の『初期契約召喚』に使う魔力量は、『開門』『探索』『転移』『真名契約』『魔力結束』『閉門』と六項目の大掛かりな手順を必要とするため、所有する魔力の九割を用いる。

魔術学園のような魔力の高まりがあるような場所であっても、それだけの魔力量を取り戻すには、三日はかかるのが普通である。


「ここが私の部屋です…とりあえず、入りましょうか…」


契約を交わしてから、ずっと黙って一歩後ろをついてきたケイオスに、エリスは入室を促した。

しかし、ケイオスは入口のドアを見つめたまま、物思いに耽るようにしており、歩きだそうとしない。


「あの…ケイオスさん…?」


「ん?あぁ、すまないな…魔器の行方を探るのに没頭しすぎたようだ。」


エリスに名を呼ばれて、ようやくケイオスはエリスが開けてくれたドアの先へと足を踏み入れていく。

その後に続いて、エリスも自室に入っていき、ドアを閉める。

ケイオスに聞きたいことは色々あるのだが、室内の椅子に座りながら、静かに魔器の行方を探る行為を再開したのを見ると、なかなか声がかけられなかった。


「終わるまで…邪魔しないほうがいいですよね…」


誰に言う訳でもなく、エリスは小さく呟きながら対面の椅子に腰掛ける。

ふう、と小さく息を漏らして顔を上げると、対面のケイオスはエリスと真っ直ぐに目を合わせた。


「マスターに気を遣わせるとあっては、従者として失格だな…すまない、エリス。何か聞きたいことがあるみたいだな?」


凍るような冷たい瞳を持ちながらも、ケイオスはエリスに対してできるだけ優しく接していた。

それが主従の契約を結んだ為かどうかは今のエリスには判断できないものであった。


「あの…ケイオスさん…六つの魔器を探すって言ってましたけど…魔器っていうのが何なのか、教えて貰えませんか?」


「ふむ、そうだな…一言で言い表すならば、魔器とは膨大な魔力の結晶…ただそれを持つだけでも、様々な力を得ることができる、アーティファクト(神の遺物)のようなものだ。」


「アーティファクトのようなもの…というと、アーティファクトと魔器は何か違いがあるということですか?」


「その成り立ちが異なる。アーティファクトは最初から奇跡を起こす代物として創られているが、魔器は長い年月を経て、人々の願いを魔力として受け取り、力を持った装具だ。」


「そうなんですか…じゃあ、ケイオスさんが持っていた魔器を誰かが悪用したら…」


「おそらく、世界に混乱を招くことになる…幸いにも、魔器の一つは近くにあるようだが、残る五つは世界各地に散っているみたいだな…」


深刻そうに言うケイオスを見ると、エリスにも魔器がどれだけの力を有しているか察することができた。


「明日になったら、街に出てみましょう。近くにあるなら、何か異変があるかもしれません。」


「そうだな…魔器の一つ、ミストルティンを失った今、かわりの剣も必要だ…すまないが、明日は案内を頼む。」


「はい。それじゃあまた明日…お休みなさい、ケイオスさん…」

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