初戦の疲れ
セントラルシティでの騒動から、エリスとケイオスはようやくセントヘイム学園へと戻って来た。
目と鼻の先にある都市での騒動とはいえ、あまり大きな騒ぎにはならなかった為か、学園内はいつもと変わらない平穏な空気に包まれていた。
「昼前にここを出て、まだ夕暮れ時にもなってないのに…何だか疲れちゃいましたね…」
「まあ、仕方がないだろう。戦いの経過がどうあれ、魔器の回収には統制を失った魔力の余波を受けることになる。となれば、少なからず精神干渉が生じるのだ、楽にいくはずがない。」
寮の入口をくぐり、エリスはやっと帰ってこれたことに安堵して、明らかに疲れた様子を見せていた。
「さて…疲れただろう、エリス。一休みしてから、残る五つの魔器についての話をするとしよう。今はゆっくり休むといい。」
「あ…いえ…私は、大丈夫ですから…」
「今のエリスは、俺を召喚したことで自己防衛に回すだけの対魔力も持ち合わせて無いはずだ…その状態で魔力の余波を受けているんだから、大人しく休め。」
口調こそ厳しいが、ケイオスがエリスに向けている眼差しは心配の色が強かった。
そんな目に見つめられてまで気を張っていられるほど、エリスは気丈ではない。
ケイオスの言葉に頷き、エリスは少しの間だけ仮眠をとることにした。
すやすやと眠るエリスの黒髪をそっと撫で、ケイオスはその傍らに腰を下ろす。
「…エリス…か…まさか、こうして再び会うことになるとはな…お前は必ず…守り通す…」
誰に聞かれることもないケイオスの呟きは、静まり返った部屋の中にただ消えていった…