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王太子浮気のその裏で

作者: シャチ
掲載日:2025/12/17

ちょっとリハビリ。ネタが出ないので書きましたが、基本おじさんしか出てきません。

 王都の貴族街にあるホテルの一室。

 貴族派と呼ばれる侯爵を中心とした高位貴族数名の男たちが集まっていた。

 このホテルは王都以外に領地を持つ貴族が宿泊するためのもので、王都にタウンハウスがない領地持ちの貴族たちのための施設である。

 借主は辺境伯で、集まった貴族は五名である。


「現時点でも国王は考えを改める気はないようだ」

「これほどまでに醜聞が広まっているにもかかわらず動かぬとは、派閥関係なく貴族を軽視していると思われる」

「辺境にすら噂は届いている。はっきり言って王太子が国王になれば国が亡ぶぞ」


 用意されている高級な酒には手を付けず語り合う五人のもとにメイドが来客を告げる。

 五人はすぐに立ち上がり、その客を迎えた。


「ハーヴェイ公爵閣下、お待ちしておりました」

「アルベルト侯爵、まさかあなた方と私がこうして密会することになるとはな」


 やってきたのは国王派貴族の筆頭であるハーヴェイ公爵。

 現国王の弟であり、臣籍降下した人物だ。


「お話はかねがね、御派閥の侯爵令嬢……今はまだ王太子の婚約者であるエリザベス嬢には、ご心労お察しすると伝えてください」

「本来であれば嫌味ととらえるが、その表情を見る限りそうではないのでしょう。お話を伺いましょう?」


 公爵と男たちが円卓に腰かける。


「あと一人、中立を重んじるエルドレッド卿もおよびしているが……本題に入らせていただく。卿にはすでに話を付けておりますので」


 そうして話し始めたのは王太子のすげ替え計画であった。

 現在王太子とその婚約者エリザベスは王都の貴族学園に通っている。

 本来王族であれば学園における学校運営補佐、生徒会と呼ばれるところで采配を振るい、ひとつの実地演習をするのが習わしだが、現在その職務を放棄している。


 理由はある男爵令嬢の存在。


 庶子であるにもかかわらず跡継ぎがいないからという理由で男爵家に養子に入り、何食わぬ顔で学園に通い始めた“天真爛漫な少女”。

 貴族令息からすれば珍しい少女だろう。

 見た目も悪くなく、言葉巧みに男子生徒を虜にしていった。

 その毒牙に王太子もやられたのである。


「我々は貴族派とよばれ、王権の制限を望んでいるとはいえ、アレがのちの国王では国が持たないことぐらいわかる。傀儡にすらならん」

「……我々としてもどうしたものかと思っていた。私だって兄にどうにかしろと何度も言っているが、アレは唯一の男児だから、首を縦に振らん」

「そこで我々の提案は、貴殿の息子を王とすることだ。そのために支援をすることでまとまった」

「まさか無償で支援するわけではあるまい?王権の一部を貴族派へ渡すなどか?すでに十分な権限を持っているだろう?」

「百年前までは我々貴族は伯爵なら一国一城のあるじだったのだ。とはいえ、中央集権化することで国として強固になった我が国をわざわざ戦国時代に戻す気はない……が、今の王の権限は強すぎる。馬鹿一人を引きずり下ろすこともできんではないか」


 アルベルトの言う事はもっともであった。

 浮気をし、婚約者を蔑ろにする王太子の状況に、エリザベスの実家であるベズビオ侯爵から再三王家に苦言を申し入れているが、王は「若気の至りだ」の一点張り。

 王弟であるハーヴェイの忠言も聞かない。

 聞く必要がないからだ。

 中央集権化に伴い、王の権限は絶対的になっており、当初あったはずの貴族院は形骸化している。


「我々が望むのは、貴族院の復活だ。急を要する判断は王の即決が必要であるからよいが、普段の政治において王の独断を阻止したい」

「確かにそうだが……急を要するとは何を意味する?」

「災害、戦争、疫病挙げればきりがないだろうが、逆に法案、王家の婚姻についてなど急を要さないものをいくつか決め、そちらは貴族院からの申し入れを王が承認するか、王が考えた申入れを貴族院が採択するかといった形をとるべきだ」


 話が進んでいく中でメイドがまた来客を告げる。


「エルドレッド卿、よく来てくれました」

「あまり見ないメンツでの話し合いですね。すでに話は聞いておりますぞ。わたくしはおおむね賛成です」

「私も、今までの話し合いで心に決めました。形骸化していると言っても貴族院は存在するのです。血の一滴も流さずにこの問題を何とかしましょう」

「ハーヴェイ公爵も賛同なさいますか」

「現状否定する材料がありません。いくら兄とはいえ情もきえました」


 この3派閥の会議から数日、形骸化してここ数年召集されなかった貴族院議会の召集状が王国貴族全員に配布された。

 しかも3名による連名での書簡だったため下位貴族は驚いた。

 当主である必要はないが、各家で代表となるものを必ず1名選任せよという書簡。

 招集日は社交シーズンの中日に設定されており、どの貴族家も当主が参加しての貴族院議会が開かれることとなった。


「これより、王太子アルフレッド殿下の継承権について討議する」


 議長となったハーヴェイ公爵による司会のもと、これまでの王太子の行動が公表された。

 噂であった内容のほとんどが事実であることが判明し、このような愚物に王位をつがせるわけにはいかないと、2名を除いて廃太子案が可決されたのである。

 その2名とは、国王と件の男爵家であった。


「国王、我が国の貴族は、どの派閥であろうとアルフレッドを慕うものはおりません。今すぐ本可決内容の実行を」


「うるさい、貴様ら全員反逆罪だ」


 しばらくの沈黙の後、王が言った一言だった。

 そして貴族たちが聞いた現国王の最後の言葉だった。



「王は、誰のおかげで国が回っているのか最後まで理解されなかった」


 ハーヴェイ公爵は語る。


 王の反逆罪という言葉に従った騎士は一人もいなかった。王を護衛する近衛騎士すら動かなかった。

 王を守る近衛だって、各貴族家の出なのだ。

 しかも多くは伯爵以上の貴族の次男三男であり、現当主の意向を事前に聞かされていたから誰も動かなかったのだ。

 そもそも各地より集まった貴族の人数が、議会にいる警備兵を上回る時点で、その命令が実行されることは無かったのである。


 本来は王太子の変更だけのはずであった会議は、そのまま王の退位へと議題は変わり、王そのものが「国を私物化した」として国家反逆罪で拘束されるにいたる。

 軍部の貴族だって参加している会議で、ただの暗君ぶりをさらした王は誰からも支持をされなくなったのだ。


 結果的に、ハーヴェイ公爵の長男が暫定的な王となり、エリザベス嬢が新たに王と婚約しなおすこととなった。

 ハーヴェイ公爵はあくまで臣下として王を支える選択をした。


 エリザベス嬢は、学園に通うまでに使われた教育費を無駄にするなという配慮でもあるし、本人もハーヴェイ小公爵に対して悪い感情は持っていなかったため、大きな問題は起こらなかった。


 問題はハーヴェイ小公爵の元婚約者であったが、彼女はあっさりと身を引いてアルベルト侯爵の次男と婚約を結び、新たに伯爵家となった。

 相性は悪くないらしく、両派閥の仲裁を期待されての政略結婚であった。


 これから後、王国は百年弱、平和な時代を過ごす事になったと歴史は語っている。

王家があほな場合、貴族が結託して王位簒奪しませんかね?っていう感覚があり書きました。

ちょっと殴り書きなので、アレですが、きっと王太子が役割を果たさないような状態だと「国」そのものを危ぶむと思うんですよね

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