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第9話 女神降臨

【強大な何か、接近中】


 あろうことか教会本部にて女神様らしき声が聞こえるという奇跡的な出来事があり、細かな用件を経て急いで席を立ってきた。


 ぼく

「今後も昵懇(じっこん)での間柄、大切にしたいです。誠にありがとうございました。様々な知見のご教授、感謝申し上げます。それでは失礼いたします」


 司教

「こちらこそ、聖女様に心を痛められたこと、同じ思いでございます。感謝いたします。ありがとうございました」


 ぼく

「恐縮です」


 教会を後にして宿に向かって歩く。馬車を用意してくれるという司教様のお申し出を無下にお断りするという失礼をおかしながら、会議室でのハプニングについて思いを馳せる。


 あの神々しい声、どう考えても女神様ご自身のものと思われる。奇蹟なのか……夜、もう一度お声を掛けて下さったら、蘇生のお願いを叶えて貰えるかどうかお聞きしてみよう。


 余りにもビビってしまった僕は、独り言ですら丁寧にしてしまう。それほど動揺していた。神気に当てられたといっても過言ではない。となると”声”は本物の女神様だったのか。


 全滅した勇者パーティの4人を復活させ、また皆で冒険ができるかもしれない。


 夕飯、宿に付随する食堂にするか、冒険者ギルドの王都支部に併設されている食堂で食べるか、どっちにしようかな。


 ここで、ぼくは迷わず宿の食堂にした。


 運の悪いストーリーで考察してみよう。もし、ここで冒険者ギルドの食堂へ行ったら、必ず何らかのハプニングが発生して、女神様との交渉がとん挫する。


 真剣勝負の今、回り道することは避けなければなるまい。勇者たちにとっても、早く復活させてくれと願っているに違いない。今は話を進めるのが無難であり最適解だ。


 ぼくは飯をどこで食うかという問題程度にすら、命がけのごとく物語の分岐点を想定し、無難路線に向かって万進していった。



【夜】


 何の問題もなく、夜を迎えることが出来た。


 僕は、まだかまだかと頭の中で着信があるのを待っている。どうやって女神様に説明し、お願いすれば蘇生をして頂けるのか?そもそも僕を長い間、天空から観ていたのなら四人の蘇生を望んでいることは承知の上の筈。だとすると、そんなに(かしこ)まらなくても女神様に通じるのかな?


 女神様の場合、根源的な存在の御方なのだし、蘇生魔法のリザレクションというより、魔法と全く違う方法で死者を蘇生されるのかもしれない。元々、魔法やスキルは女神様が人間が使えるように態々(わざわざ)授けて下さったものだしね。


 蘇生が叶ったら、四人と辺境の未開地にでも行って、スローライフをやりたいな。でも、夏祭りなどをやっている村や町が近くに必須。うん、ミズハやユアイが大好きだからね。サトシやミキオは都会的なやつだからスローライフといっても付き合ってくれるかな。彼らは嫌がりそうな気もするけども。


 それにしても夜は長い。いつごろ女神様の声を受信するんだろう? 朝まで起きっぱなしかな。でも今日ぐらいは徹夜は平気。四人の為だもの。


 ……声の受信が中々ないなぁ。女神様。


 宿のベットで寝転んでいると、遠くから、どーんどーん、という激しい重圧と共に、何かが徐々に近づいてくる。僕は飛び起きた。こんな凄いプレッシャーは初めてだ。額から汗が垂れる。


 どどーんん、どどーーーんん


 これは……僕でも敵わない強敵の放つ波動だ。建物が揺れ始めている。くーっ、眉をしかめる。こんな状況では女神様からの声の受信が出来ない。声も聴き辛いだろう。と、それより他の住人の人達に避難の警告を出さなきゃ。


 どどどーーんん、どどどーーーーんんん


 徐々に音が大きくなってきている。


 それとも、これは女神様が僕へ送ってくださる声のせいか? 広大なエリアが地震のように振動しているようだ。それだと直ぐに行動しなければならない。女神様を御止めしなければ。どうする? 僕。人々を避難誘導するのは、歩けないほどの振動の今では無理だ。住民は自宅に居て貰おう。のちに冒険者ギルドや王城・王宮の人たちが騎士団を使って住人を守れる筈だ。


 どどどどーーんん、ズズーーーンン、どどどどーーーーんんん


 振動の激しさが益々高まり、僕までも歩けなくなる。


「揺れるっ、これは、クッ」


 僕は冷静になるために自分を落ち着かせるよう意識した。しかし空を飛ぶ以外は移動する手段はなさそうだ。あっ、かなり近づいたぞ。冷や汗も拭うことが出来ない。


 どどどーーーんんんんん、ズズーーーンンンン、ズズーーーンン


「もうダメだ。くそぉ」


 こんな折、宿のフロントから大きな声で女将さんが僕の名前を呼んでいる。


「ヨシタカさまーーーっ、ヨシタカさまーーーーっっ」


 僕は部屋から扉を開け、顔を覗かせる。フロントの女将さんと目が合う。


ぼく「どうーしましたーかーーーっ、おーけーがーでもぉー?」

(どうしましたか、お怪我でも?)


「ヨシタカーさまのぉ~~、おーきゃーくーしゃーんーよー」

(ヨシタカ様のお客さんよ)


「おーきゃーきゅーさーん、でーしゅーよー」


 なんと僕にお客さんだって? こんな激しい地鳴りの真っ最中に? そして女将さん、絶体絶命時でも仕事をこなす、貴女はプロだ!


 いや僕は本来、鈍感系主人公じゃなかった筈だ。これは間違いなく女神様だっ! こ、こ、こぇぇぇ~!!! いや違う、ようこそ! って笑顔でお迎えしなきゃ、行くぞ、行くぞ玄関へ。


 女神様の歓迎をしなければ! しかも勇者パーティの一員たる僕は女神様の身内のようなもの、怖がるな僕、行くんだ、前に進め足!



【女神降臨】


 女神

「こ、こんばんわっ、英雄ヨシタカさん。ご迷惑にならないよう人間の姿で参りました。夜分に申し訳ありません。あ、髪の毛が乱れて、恥ずかしいです。ごめんなさいっ」


 これはこれは、ご丁寧に頭をさげられ、挨拶している恥ずかしがり屋の真面目・可愛い系の女神様だった。もちろん美少女である。


↓ 女神様が人間界に降臨する時はいつもこんな感じ

挿絵(By みてみん)


 ★


 当初、声だけの神の啓示だったはずが、なぜかご本人様がご降臨なされ、あろうことか僕が淹れたお茶をお飲みあそばせられている女神様。


 現在、女神様の波動や身体から滲み出る神力を100万分の1にして頂き、ぼくの部屋にて普通にお茶を出し、美味しいですと楽しんでおられるのだ。


 女神

「ヨシくん。お茶とても美味しかったです。ご馳走様でした」


 ぼく

「はい、恐縮です、女神様。お粗末様でございました」


 女神

「ねぇヨシくん、甘いクッキー食べたいけど、ご迷惑かな、私一度食べてみたかったんだ。ダメかな?」


 ぼく

「はっ、承りました。直ちにウチの者(宿の人)にご用意させましょう。パンパン(手を叩く音)


 女神

「ふふっ、ヨシくんって昔から変わらないわよね。いつも几帳面で。エッチなこと考えてるときはニヘラってしてるのに可愛くって」


 ぼく

「ありがたき幸せでございます」


 女神

「ヨシくん、あのね、私ね、会えてとても嬉しいんだ。だって、恥ずかしくて声すら今まで出せなかったんだもん」


 ぼく

「いつでもお声をおかけ頂ければ、全力でお力添え致しましたものを、気づくことが出来ず、わたくしの不明、お恥ずかしい限りでございます」


 女神

「ヨシくん」


 ぼく

「はっ」


 女神

「その喋り方、きらい」


 ぼく

「わ、分かりました」


 女神

「でね、ヨシくん。私はヨシくんが心配になってて、早く声かけなきゃ、って思いながらも勇気がなくて、今日になってしまったの。ごめんなさい」


 と頭をさっと下げる。


 ぼく

「いえ、そんな頭を上げて下さい。教会で声をお聞きできて本当に驚きましたし、今は感激してますよ。お願い事もありましたから」


 女神

「勇者パーティ全員の蘇生は可能です。わたしが出来ます」


 ぼく

「あ、やはり見抜かれたんですね」


 女神

「でもね、言いにくいんだけど、正直に言うね。問題が大きすぎるの」


 ぼく

「はい、理由のご説明をお聞かせ願えますか?」


 女神

「うん。ヨシくんの気持ちが分かるからこそ敢えて説明するね。聖女に与えた蘇生魔術は、基本、魔王討伐時のみ有効にしてたの。それ以外では、毎回、吟味してから私が判断をするんだけど、まず生き返らすと不平等感が生じて、その不平等感って半端ではないから、蘇生後は別の異世界に移ってもらうの」


 ぼく

「生き返ったら、まさかの異世界行きですか」


 女神

「うん、それで今回は魔王決戦時だったので蘇生も有効だったんだけど、もう全国に勇者パーティ全滅の情報が広がっちゃって、四人が亡くなったのを多くの人々が知ってるから、戦時有効の扱いが出来ないの。特別扱いすぎると女神&勇者ともども人類全体から嫌われるの」


 ぼく

「女神様からの鶴の一声で国王様や教皇猊下(げいか)、みなさん納得しませんでしょうか?」


 女神

「人々の信じる気持ちが少なくなると、私の力が弱まり世界が乱れて、最後は崩壊しちゃうわ」


 ぼく

「結局、四人が死んだと人々が知る前なら、もう少し早ければ蘇生で助けられた、ということですか。ぼくが作業員を募って大勢で魔王城で発見したから広めてしまった……後悔します。悔しいです」


 女神

「違うのヨシくん。私がすぐにヨシくんに声を掛けていれば皆救えたの、ちゃんと間に合ってね。遅れたのは臆病な私のせいなの、ごめんなさい。反省じゃ足りないぐらい反省が必要なの。もうこんな悲しいミスを起こさないよう別の対策を考えます」


 ぼく

「女神様は悪くないと思いますよ。氷像を発見した経緯を考えても不可抗力だったと思いますから。ところで次に魔王が復活するのはいつごろでしょうか?」


 女神

「うん、それはね、私が怒ったりして悪心を募らせたら魔王くんが復活するんだけど、期間は未だ分からないわ。この件、また後で説明するね」


 ぼく

「話の腰を折ってしまって、すみません」


 女神

「それでね、私、下界へ降りて物質化したから神力が弱まってしまって。エネルギー充填で1か月欲しいなぁと思ってるの。蘇生はその時にお願いしていいかしら。ダメかな?」


 ぼく

「あれで弱まっているとか……」


 女神

「失礼な言い方は、罰としてハグで返してください」


 ぼく

「一か月の充填期間ぐらい、生き返るのが確実なら、短い時間と感じます。ただ生き返った四人を別の世界へ転移させるのなら、またお別れがつらいですね」


 女神(ハグの部分だけ華麗にスルーされたわ)


 女神

「……今までの蘇生案件では、本来、亡くなったままの方が好いという事を蘇生依頼者に認識させるのよね。今回はヨシ君が蘇生依頼者だし、実は私自身もヨシくんと同じ依頼者と言えるの。四人を生き返らせたいの。だから、しっかり私達の頭で考えよ」

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