なろう系モブの裏側〜勇者の接待も楽じゃない〜
「今日はですね。皆さんご存知の通り、この街に勇者様がやってこられます」
そんなギルドマスターの一言で朝礼が始まった。
ここは駆け出し冒険者の街、アルシュハット。冒険者を志すものはだいたいこの街から冒険者人生をスタートさせる。
そして俺はそんな冒険者に仕事を与えたり、サポートをしたりする冒険者ギルドの下っ端職員である。
え? 名前は何だって?
別に覚える必要なんてないさ、俺はただの” モブ ”だからな。
で、話を戻すが今日はこの街に噂の勇者様がやってくるらしい。
聞くところによると勇者様は異世界から来たのだとか。まあ所詮は噂だろう。
確かな情報はただ1つ、勇者様はクソ強いらしい。
そこで俺たちの役目となってくるわけだ。
俺たちはそんなクソ強い勇者様に対して。
「ウォォォォォ勇者様かっけぇぇぇ!!!!!」
だったり
「何だこのステータスは桁が違いすぎる!?!?!?」
とか
「さすが勇者様ぁぁぁぁぁ‼‼‼‼‼」
って勇者様をおだてて勇者様をその気にさせることによって魔王を倒してもらう、という算段らしい。
正直これで命を懸けるのなら勇者様は相当な馬鹿としか言えないが、今の情勢では頼れるのがこのぽっとでの勇者しかいない。
「では早速、声出しからやっていきましょう」
ギルドマスターは咳ばらいをした後、大きく息を吸い込んだ。
「な、なんだってぇぇぇぇぇ⁉⁉⁉」
「「「「「「な、なんだってぇぇぇぇぇ⁉⁉⁉」」」」」
「さすが勇者様‼‼‼‼‼」
「「「「「さすが勇者様‼‼‼‼‼」」」」」
「これなら魔王も瞬殺だ‼‼‼‼‼」
「「「「「これなら魔王も瞬殺だ‼‼‼‼‼」」」」」
「勇者様つぇぇぇぇぇ‼‼‼‼‼」
「「「「「勇者様つぇぇぇぇぇ‼‼‼‼‼」」」」」
いったいこれは何の宗教だろうか?
俺以外にこの状況に疑問を持つ者はいないのか?
いや、いるだろうが声に出していないだけだろう。頼むからそうであってくれ。
「完璧です! これならきっと勇者様もやる気になることでしょう!」
ギルドマスターはうんうんと頷いているが何が完璧なのだろうか?
どう見てもただの接待にしか見えない。勇者様が鬼のように鈍感だったとしてもさすがに気が付くだろう。
「では皆さん、持ち場についてください。笑顔を忘れずにね!」
俺も持ち場に移るとしよう。ちなみに俺の持ち場は受付、勇者様の冒険者カードを作るのが俺の役目だ。
――二時間後。一人の冒険者が勢い入口の扉を開いて中に入ってきた。
「ゆ、勇者様がお見えになられたぞ!」
その一言でギルド中の人々の目線が入り口に集まった。
ちなみに大声で叫んだこいつも役者である。
ギルド内がざわつく中、一人の人物が中に入ってきた。
――勇者である。
「なんて勇ましいお方‼‼‼‼‼」
「かっけぇぇぇ! 勇者様かっけぇぇぇぇぇ!」
ギルド内が黄色い歓声に包まれる。そう、この街の住人全員にこの話は通っているのだ。
ま、さすがにこんなあからさまな誉め言葉……気づかないはずがない。
「そ、そうかなぁ?」
照れてんじゃねえ! え? そんな鈍感なことある? マジで、え、マジで成功してるの?
あえて言わせていただこうお前は
” モブ顔 ”である!
無償髭にボサボサの頭、おまけに超絶猫背!
威厳なんてあったものじゃない。
最近の勇者はこんなパットしないやつでもなれるのか?
ただーし、俺も下っ端とはいえ一端のギルド職員プライドがある。
笑顔は崩さない!
そんなことを考えていると勇者様が観客に作られた花道を通って受付へとやってきた。
「勇者様! お会いできて光栄です。今回は冒険者登録ということでよろしいでしょうか?」
「は、はい、えっーと、俺は何をしたら?」
「これに手をかざしてください」
俺は水晶玉が付いた機械を取り出した。
これは冒険者カードを作るための機械、これに手をかざすとその者の知能や筋力が数字のステータスとして表示される。
勇者様は少しビビりながら水晶に手をかざした。
その瞬間、水晶は光りだし、機械が下に置いてあった紙に文字を書き始めた。
「おお、これが異世界ファンタジー! 俺の人生逆転の場所!」
この男はいったい何を言ってるんだ。
さて、ここが俺の一番重要な仕事。
冒険者カードが出来上がった瞬間、俺は誰も追えぬであろう超スピードでそれをすり替えた。
そう――圧倒的” 偽造冒険者カード ”
説明しよう、偽造冒険者カードとは一般的な冒険者のステータスの百倍の数値が書かれた冒険者カードである!
え? ギルド職員がそんな偽装していいのかだって?
構わない! だってギルドの商いは俺たちのもの、誰も困らない!
それに、これができるから!
「な、なんだってぇぇぇぇぇ⁉⁉⁉」
「な、何かおかしい箇所でもありました」
「おかしいなんてものじゃありませんよ! ステータスが高すぎます! 一般人の十倍どころか、ひゃくばい、百倍ですよ!」
そして、最後の一撃!
「さっっっっっすが勇者様ぁぁぁぁぁ‼‼‼‼‼」
――決まった。
気持ちぃぃぃぃぃ! 完璧なる演技!
「この世界を救えるのは勇者様、あんただけだあ!」
「「「「「勇者! 勇者! 勇者! 勇者!」」」」」
俺の完璧な一撃により全員のタガが外れ最初とは比べ物にならないほどの歓声が上がる。
俺が冒険者カードを渡す間もなく、そこら辺にいた冒険者たちが勇者様を胴上げし始めた。
勇者様も満更でもなさそうだ。
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俺のおかげで勇者の来訪というビッグイベントは大成功に終わった。
この達成感はなかなかいいがこんなに疲れたのはいつぶりだろうか。
叶うことなら勇者様はもう来ないでほしい、こんな仕事はこりごりだ。
ああ、勇者の接待も楽じゃない。
思いつきの勢いで書いたけどなんだこれは……。
ギャグを書くのは初めてなので正直これがあってるのかわかりません。
評価をしていただけると作者が飛んで喜びます。
評価が高かったら連載版を出すかも(ネタが尽きなければ)




