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『貴族録』

 放課後、私はある場所へ向かって本校舎の廊下を歩いていた。

 入学してからはあっという間で、気づくと一週間が経っていた。

 学校生活はまだまだ慣れないことだらけだったけれど、周りの生徒たちが温かく迎えてくれているのが救いだ。


 名門学校ということもあって、在校生の割合は圧倒的に貴族が多い。

 突然現れた平民出身の『リヒト・フェルトナー』に対して、必ずしも友好的ではないだろうと身構えていたものの――。


 教室に入って空いている席を探していると「よかったら隣へどうぞ」と声をかけられ、「これまでのノートも必要でしょう?」と快くノートまで貸してくれる。

 次の授業へ向かうために校内の地図を眺めていれば「次は歴史? それなら一緒に行こう」などと率先して案内される。


 予想に反してみんな驚くほど親切で、新顔の私を温かく迎えてくれた。


(本当にみんな育ちがいい……! 私の故郷じゃ考えられない!)


 田舎では見知らぬ顔が現れると誰もが遠巻きに警戒するのが常識で、地元の有力者が紹介するまではずっとそんな状態だ。

 しかも、紹介されたところで余所者という扱いは変わらず、本当の意味で受け入れられるのは何代後になるかわかったものではない。

 ただ、それも皆が寄り添って暮らす小さな街だからこそで、平和を守るために閉鎖的にならざるを得ないのだ。


 祖父が生きていた頃、田舎町には不釣り合いなほど豪華な馬車が立ち寄ったことがあったらしい。

 数日前から続いた雨のせいで泥濘に嵌り、なんとか脱出したものの疲れ果てた馬がまったく動かなくなってしまったという。

 御者は辺りに助けを求めるけれど、知らせを聞いた祖父がやって来るまで領民は誰一人近づこうとしなかったそうだ。

 このとき馬車に乗っていたのが当時まだ学生だったルーデンス侯爵で、祖父との付き合いはそこから始まったと聞く。


(ルーデンス侯爵にも会える機会があるといいんだけどな。お礼も伝えたいし……)


「あ、補佐さん」


 角を曲がったところで不意に声をかけられた。


「補佐さんって……まあ、間違ってはないけど」


 駆け寄ってきたのは同じ学年のヴァイオラという女子生徒だった。

 教室の移動中に迷子になっていた私に声をかけてくれて以来、偶に顔を合わせると会話するようになっていた。

 お互いに平民ということで意気投合したのもあって、やや後ろめたい気持ちは否めない。


「また迷子?」


 柔らかそうな金髪を揺らして、ヴァイオラはからかうように笑ってみせる。

 その姿はどこか小動物を思わせて、実に可愛らしい。


「違うよ。図書室に行こうと思って」

「立派な書斎があるのに図書室に行くの?」

「あそこにあるのは古すぎて調べものには向かないんだ。最新のものは図書室にあるって聞いたから」


 ふーん、と気のない返事をしたヴァイオラは次の瞬間、「あっ、何してるんだろ?」と校庭にいる運動部の練習をどこか眩しそうに眺め始めた。

 彼女の掴みどころのない態度は気まぐれな猫のようで、常に背筋を伸ばしている貴族たちよりも自然に見えてなぜかホッとする。


「リヒトはもう学校には慣れた?」

「まだかかりそうかな。でも、みんな優しいから大丈夫だと思うよ」


 ヴァイオラと同じように運動部の練習を見守りながら答える。

 すると、彼女は一瞬不思議そうな顔をして、それからすぐに微笑んだ。


「それなら良かった。同じ平民同士、頑張ろうね!」

「あ……うん、ありがとう」


 小走りに去って行く後ろ姿を見送りながら、小さな違和感を覚える。


 去り際の彼女の視線が私のネクタイに注がれた気がしたけれど、果たして気のせいだろうか――。



◇◇◇◇



(えーと……これだ!)


 図書室の本棚から目当ての本を手にする。


 ――『貴族録』。


 国内すべての貴族の情報が掲載されている分厚い本だ。

 貴族が載っているとあって装丁も重厚で、立ち読みするには重すぎる。

 放課後になったばかりの図書室は人も少なく、私は手近なテーブルへと移動した。


 『貴族録』にはその一族の由緒に始まり現在までの家系図、親族関係や領地などが網羅されている。

 貴族の家柄を知るなら、これに当たるのが一番手っ取り早い。

 目当ての頁はすぐに見つかった。


『スティルフリード家 爵位:伯爵

 現当主、ブルーノ・スティルフリードは外交官として従事。』


 領地が特段広いというわけではないようだが、当主が外交官として職を得ているのであれば基盤は安定しているのだろう。

 貴族とはいえ、領地と領民の管理で財政難に苦しむ者も決して珍しくはないご時世だ。

 頁の続きには、初代スティルフリード伯は初代コルベウス侯爵によって引き立てられ、その功績から叙爵したとある。


 貴族にとって叙爵の経緯と歴史は非常に重要で、例えその実態がどんなに困窮していようとも歴史ある家柄こそが尊ばれる。

 スティルフリード家は四大貴族とも繋がりを持つ、立派な一族だといえる。

 だからこそ、ライムント先輩も校内の貴族から一目置かれる存在にとなっているのだろう。


(まあ、あの人の場合は見た目も関係してそうだけど……)


 何色にも染まらない黒檀を思わせる髪に血のように紅い瞳。

 その視線に囚われれば、胸の内に仕舞った秘密も思考も、何もかもが見透かされてしまうのではないかとさえ思える。

 そんな危機感があるというのに、それでも人を惹き付ける魅力が、彼にはあった。


 ライムント・スティルフリードという人物について、少しでも情報を得たくて、私は『貴族録』を調べることにしたのだ。


(あの人の生活能力が乏しいのも納得だな。きっと、大勢の執事やメイドに囲まれて育ったんだろうし)


 せっかくなら他にも調べておこうと、私はスティルフリード家と関係するコルベウス家の頁を探す。


『コルベウス家 爵位:侯爵

 四大貴族の一角にして島の南に広大な領土を持ち、王の代理人として貿易や軍事を担う。初代アンブローシア王が大陸から渡来した際に同行し、至宝の紅玉を賜った。』


 最後の言葉が気になって、試しに他の四大貴族の頁を見ると、やはり初代国王からそれぞれ宝石を下賜されていた。

 王から贈られる宝石とは、一体どれほどの物なのだろう。


「紅玉って確か……」


 頭の中に紅い宝石を思い浮かべていくと――。


「ルビーのことだね」

「っ!」


 いつの間にか後ろに立っていたアイザック先輩は、両手で大量の本を抱えたまま興味深そうに『貴族録』を覗き込む。


「あー、四大貴族の宝石か。これって、いろんな噂があって面白いんだよね~」

「噂って、例えばどんな?」


 私の問いに、彼は思案気に虚空を見上げる。


「うーん、それが本当にたくさんあるんだ。……とりあえず言えるのは、王から贈られた宝石には奇跡の力があって、四大貴族はそれを大切に保管してるってことかな」

「奇跡の力っていうと……魔法みたいなことですか?」

「まあ、そうなんだろうねぇ。持ち主によって発現する奇跡が違うってのも聞いたことあるけど……。あ、有名なのはコルベウス家の先々代当主かな。通称、火炎公って呼ばれてて、怒るとすぐに屋敷を爆破してたらしいよ!」

「それって、火炎公というより爆発公の間違いでは?」

「あははははは、だよねー!」


 声を上げて笑ったアイザック先輩は図書室にいることを思い出したのか、すぐに口を押えて苦笑いする。

 そのまま隣の椅子に腰かけると、大量の本を机に載せて私へ耳打ちした。


「この前は本当にごめんね。ライムントから聞いたよ。エノーラ嬢が来たとき、ライムントが隠そうとしたけど自分から出て行ったんだって?」

「ああ……なんとなく隠そうとしてくれているのは感じたんですけど、僕のせいで騒ぎになっていたら申し訳ないと思ったので話してみることにしたんです」

「まあ、そうだよね。寝覚めが悪いというか……うん、転校初日に巻き込んじゃってごめん。あれからライムントにも怒られてさ」


(そっか。アイザック先輩はライムント先輩と同室なんだった)


「リヒトに濡れ衣を着せるところだったんだぞ、って」

「もういいですよ。僕も気にしていませんし、女子寮のみなさんからも許していただけたんですから」


 アイザック先輩の処分については女子寮の寮長とエノーラが補佐している女子監督生との間で意見交換が行われ、最終的に卒業まで女子寮の雑務を無償で請け負うことを条件に退学を免れることとなった。

 最近では作業着姿で女子寮の窓を拭いていたり、掃除用具を持って敷地内を掃いているところをよく見かける。

 恐らく、彼がこうして図書室へやって来たのも女子寮のお使いのためなのだろう。


「退学にならなくて本当に良かったですね」


 まだ会ったばかりで彼のことは何も知らないけれど、悪い人じゃないことだけはわかる。

 処分が軽くなって退学を免れたと聞いたときは、心からよかったと思った。

 こんなことになって、さすがに同じ過ちは犯さないだろう。


「まったく、僕みたいな奴にもそんなこと言ってくれるなんて……。リヒトなら、本当にライムントの助けになってくれそうだ」

「そうでしょうか? 伯爵家の方の手助けなんて僕には到底無理ですよ」


 取り立てて特技というものもないうえに、来年まで生きていられるかもわからないという、意外と差し迫った身の上だ。


(そう……このままいくと、またあの時みたいに……)


 冷たい雪の上に流れていく自分の血を思い出して、無意識にお腹の辺りに触れる。


「大丈夫だって! きっと、うまくいくさ!」


 陰鬱な記憶に沈みかけていると、肩をぽんっと叩かれる。

 その心強い声にはっとした。


(そうだ、今はまだ弱気になっている場合じゃない。この学校に、きっとあの人がいる。あの人ならのことも何か知ってるはず……!)


 一度死んだはずの私に、再びやり直す時間をくれた。

 それはまるで、神の御業のような奇跡。


(あれ……? え……奇跡って……)


 脳裏で何かが繋がろうとした瞬間――。


「そこ、図書室は静かに」


 聞き覚えのある声に顔を上げると、ライムント先輩が訝しそうに私たちを見ていた。


「アイザック、私の補佐に近づきすぎだ」


 小声で話していたため、自然と顔を寄せる体勢になっていたのが気になるらしい。


「え、そうかな? あっ、そういえばお使いの途中だったの忘れてたよ! この本借りて、お茶会の準備を手伝わないと……! ってことで失礼するよ、おふたりさん」


 再び二〇冊ほどある本を両手に抱えて、アイザック先輩は慌ただしく貸し出し手続きへと向かっていった。

 ライムント先輩はアイザック先輩と入れ替わるようにして、溜息交じりに私の隣に腰掛ける。


「なんの話をしていたんだ」

「図書室は静かに、じゃないんですか?」

「…………」


 私の言葉に彼は押し黙る。

 気のせいかもしれないが無言で寄越してくる視線には、ほんの僅かに拗ねたような気配を感じる。

 それにしても、美形に無言でじっと見つめられるというのは非常に居心地が悪い。


「先日のことで、アイザック先輩が改めて謝ってくださっていたんです」


 早々に根負けした私に監督生は満足そうに「そうか」と返すと、机の上に広げたままになっていた『貴族録』に気付いたようだった。

 すでに彼の実家である「スティルフリード家」の頁からは離れ、索引の一覧を開いている。


「まさか、誰かに何かされたのか?」

「ち、違いますよ! 僕は貴族の家柄には疎いので、少しでも知っておければと思っただけです」


 その時、人気のなかった図書室に数人の生徒たちが入ってきた。

 まだこちらには気付いていない様子で、長机に座って自習を始めようとしている。


(調べたいことも調べられたし、そろそろ出ようかな)


 最近の私は放課後になると書斎に直行して、部屋の片付けに勤しむのが日課だった。

 今日は『貴族録』を読むために図書室に来たが、今日もこれから書斎に行くつもりでいる。


「……っ!」


 先輩に目配せしようとして、いつの間にかすぐそこに迫っていた瞳に息を呑んだ。


 真紅の瞳に私の顔が映る。


「――困ったことがあったら言ってくれ。補佐に任命した以上、責任は持つ」


 そう告げる彼は真剣で、私は固まったままぎこちなく頷くことしか出来ない。

 やがて、生徒の誰かがこちらに気付いたようでさざ波のようなざわめきが広がっていく。


「出るぞ」


 『貴族録』を書架に戻して、先輩は私を引っ張るようにして図書室を後にした。


「あまり他の生徒に会いたくないんですか?」


 校舎から出て前を行くライムント先輩は振り返らずに答えた。


「そういうわけじゃない。ただ、少しばかり記憶力がいいからな。余計なものは憶えたくない」

「……生徒の顔は憶えたくないと?」

「語弊があるな。記憶できる量に限界があるとして、君はなんでもかんでも記憶したいと思うか?」

「いえ、できれば厳選したいです」

「私も同意見だ。美しいものや尊いもので記憶を満たしたいと願うのは自然なことだろう」


 彼の言っていることは頷ける。

 エノーラ曰く、瞬間記憶能力は一目見たものを記憶してしまうらしい。

 確かに望ましくない光景を見て、それを一生記憶して生きていくのは辛そうだ。


「だから私は、男の顔は見ないようにしている」

「なるほど……って、えっ?」


 今、人類の半分を見ないようにしていると言わなかっただろうか。

 耳を疑った私は、思わず彼へと駆け寄った。


「男の顔を憶えるくらいなら、ひとりでも多くの女性の顔を憶えたほうがマシだ」


 そういえば、アイザック先輩がライムント先輩は女性贔屓だと言っていた気がする。


「うーん、わかるような、わからないような……? でも、なんとなく先輩の嗜好は理解しました」

「そうか。相互理解が進んだようで嬉しいよ」


 追いつこうとしている私に気づいたのか、ライムント先輩は速度を落として並ぶように歩いてくれた。


 ヴァイオラや他の生徒から聞いた話によると、先輩はほとんどの授業を免除されているらしく、普段は書斎に籠っているという。

 きっと、瞬間記憶能力を持つ彼にとって毎日の授業に出ることは成績に影響しないのだろう。

 書斎に籠りがちなのも、見たくないものを視界に入れてしまうことを警戒してのことなのかもしれない。

 そんなライムント先輩を校内で見かける機会は少なく、生徒たちは稀に彼の姿を見ると遠巻きに人だかりを作るのだそうだ。

 遠巻きにするくらいなら話しかければいいのにと思うけれど、知り合いでもないのに気軽に声を掛けるというのは中々に勇気がいる。

 本人がどう思っているのかはわからないものの、彼の容姿は人目を惹くと同時に近寄りがたい雰囲気を放っていた。


 それでも、ふとしたきっかけでライムント先輩と話す機会を得た生徒たちからの評判は上々で、彼の人気は不動のものとなっていると聞く。

 なんでも、3人いる監督生のうち、もうひとりの男子監督生も恵まれた容姿をしていることから、ライムント先輩とで女子生徒の人気を二分しているらしい。


 そう考えると、私は男装していて正解だった。

 今は男子ということになっているからいいけれど、もし女子だとバレたら同性の生徒たちからは針の筵だろう。

 図書室での先輩の発言も、補佐になったことで弊害が生じていないか心配してのものだと思われる。


(そこまで気遣ってくれるなんて、ありがたいことではあるけど……)


 補佐に指名されてからずっと、彼をどこまで信じていいのか分からずにいた。

 書斎の掃除も紅茶を淹れるのも、貴族の端くれでありながら日常的に行っていた私にとっては、そこまでたいしたことじゃない。


 それにも関わらず、補佐は仕事の報酬として食堂や購買部での代金が全て無料になるという。

 ハッキリ言って私に利益しかない話だ。

 だからこそ、裏があるのではないかと勘繰ってしまう。

 ここに入学することが決まったとき、父から「都会は怖い場所だから用心しなさい。甘い話には近づかないように」と言われたことが脳裏で反響する。


 これまでライムント先輩にとって、補佐はいなくても問題ない存在だった。

 それをあえて採った理由――それが気になって仕方がない。


「あの、今まで先輩の補佐に立候補してきた人っていなかったんですか?」

「一人だけいたな。男子生徒が」


 今までの話から察するに、その生徒は男子だったせいで断られたのかもしれない。

 それはそれで監督生としてどうなのかと思うけれど、先輩の体質というか能力故のことなのであれば、軽々に非難するわけにもいかない。

 男子の補佐は断って、私を採ったということは――。


(私が女だったっていうことが一番の理由なんじゃ!?)


 一瞬過った考えをすぐに打ち消す。

 いくらなんでも、そんな理由で選ばないはずだ。

 いや、そうであってほしい。


 私を補佐にすることは先輩からすると利点がほぼない。

 男装している転入生を見つけて、面白そうだから手元に置くことにした――そう考えるのが妥当な気がする。


「さっきから難しい顔をしているようだが……本当に何かあったんじゃないのか?」

「いえ、本当になんでもないです。強いて言うなら、先輩が僕を補佐にした理由について考えていて」


 ライムント先輩は横目で私を見たきり、黙って歩き続けた。


「もし、『面白そうだから』という理由ならご期待には応えられな……」


 言いかけた瞬間、先輩は突然振り返って有無を言わさず私を柱の陰に引き込んだ。

 気付くと、柱へ伸ばされた腕が私の顔の真横にある。

 わけがわからずに正面を見ると、そこには初めて会ったときのような不敵な笑みを浮かべた彼がいた。


「前に言った通り、君を補佐にしたのは掃除と紅茶を頼むためだ。それ以上の理由があると思うなら……」


 鼓動が聞こえてしまいそうなほどの近さから、更に声が耳元へと近づいてくる。


「是非とも、本当の姿で尋ねてみてほしいものだ」


 あまりの近さに思わず目を閉じると、耳朶にかかる吐息に鼓動が跳ね上がるのを感じた。


「ふっ……安心しろ。君が私の補佐でいる限り、女性であることは口外しない。それに、君の意思を尊重してその格好でいるときは男子生徒として扱おう。……無論、本当の姿のときは、その限りではないが」


 最後は甘い声で囁かれ、完全に遊ばれていると自覚する。

 けれど、熱くなっていく頬はどうすることもできない。


「そ、そそそんなときは訪れないのでご安心を!!」


 自分を叱咤するように叫んで、なんとか彼と柱の間から抜け出した。


「……()じゃなくて! ()は先に行ってますから!」


 それだけ言って、一目散に駆け出す。

 何も考えずに、ただただ走り出す。


 頬が熱くてたまらない。


(ああ、もうっ! 早く治まってくれればいいのに……!)

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