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終焉の魔女  作者: 芥文学
6/7

魔術学園入学試験

 月日は経ち、エマ達は遂に、試験当日の朝を迎えた。

 

 「エマちゃん!!起きて!」


 そう...迎えただけだった。


 テゴーは、ベッドの上で爆睡するエマを必死に起こそうとしているが、当の本人に起きる気配は全くない。


 「早く起きないと、試験に遅れちゃうわよ?」

 「あと5分だけ〜」

 「もう10回も繰り返してるわよ(汗)」

 

 布団を取り上げてもびくともしないエマに、テゴーが困り果てていると、何者かが部屋に入って来た。


 「私に任せて下さい...」


 爆睡していたエマは、ふと目を覚ました。テゴーに散々起こされても目覚めなかったエマが、何故この期に及んで起きられたのか...

 辺りを見渡したエマは、その理由に思わず声を出した。


 「...ッ!何...!?(汗)」

 

 ベッドの上で眠っていたはずのエマの体が、何故か宙に浮いていたのだ。

 

 「目が覚めたみたいね。」

 「アルバッ!?」


 部屋に入って来たのは、アルバだった。

 エマが遅刻すると予想して、予定よりも早くに迎えに来たのだ。


 「あんたの覚悟がこの程度だったとは...聞いて呆れるわ。」

 「朝は弱いんだよ〜」

 「朝の弱さで言い訳してちゃ、何処に行っても半人前のままね。」


 アルバは魔術を解き、エマを床へ落とすと、パジャマのまま外へ引き摺り出した。

 起こし方が優しいテゴーとは違い、アルバの起こし方は引くほど激しかった。

 

 「痛い!痛い!うぅ〜ごめんなさい〜(泣)」

 「しっかりしないと、愛しの姉さんに会えないわよ!会えないままで良いの?」

 

 エマは首を横に振った。


 「なら支度して!早くしないと置いて行くわよ?」

 

 エマは急いで制服に着替えると、いつもは持ち歩かない鞄を手にした。


 「一緒に受かろうね。」

 「当たり前よ。何があっても、二人でクレプスクロ学園の入学試験を受けに行くわよ。」

 

 数十分後...そう意気込んでいたアルバだったが、途中で心が折れそうになっていた。


 「はぁ...何で朝から山に登らなくちゃならないのよ?」

 

 クレプスクロ学園は、山の頂上に位置している。

 学園の生徒達は、この山を登って毎朝登校しなくてはならないが、学園の殆どの生徒は、学園内にある寮で生活している。


 「何でアンタは...はぁはぁ...そんなに平気な顔して登れるのよ...?」

 「それよりアルバ。」

 「何?」


 体力が限界に達しているアルバに、更に追い討ちを掛けるようにエマが言った。


 「私達...迷ったよね?」


 その言葉に、アルバは完全に足を止めた。


 「...思っても言わない約束でしょ...?」


 二人は、極度の方向音痴だった。


 「でも、ここ完全に森だよね?入試案内の地図には、こんな森書かれてないよ?」

 「...きっ気のせいせいよ...多分。」

 

 2人は、学園に向かう途中で森に迷ってしまった。

 

 「はぁ...こうなるなら、馬鹿なアンタに道案内なんて任せなければ良かった...」

 「何でそんな事言うの?私は方向音痴だからって道案内任せたのはアルバでしょ?」

 「はぁ?!アンタが寝坊しなきゃ、他の受験生達の後ついて行けたのよ!」


 2人は、受験の事を忘れて喧嘩を始めた。


 「君達は...?」


 喧嘩の最中、突然後ろから声をかけられた。


 『何!?』


 喧嘩をしていた為、興奮状態だった2人は、勢いに任せて強気で答えてしまった。

 振り返ると、薄茶色の髪を肩まで伸ばした男性が、驚いた様子でこちらを見つめていた。


 「えっと...喧嘩は落ち着いたかな?」 

 『ごめんなさいッ!』


 我に返った2人は、先程の言い方に対して謝罪した。


 「大丈夫だから頭を上げて(汗)」


 2人は、申し訳なさそうに頭を上げた。


 「もしかして、クレプスクロ魔術学園の試験を受けに行くのかな?」

 「そうなんです...でも、行く途中で道に迷っちゃったんです(泣)」 

 「学園までは、一本道の筈なんだけど...」


 アルバが涙目で説明すると、男性は、二人の方向音痴の酷さに困惑しながらも、学園への行き方を教えてくれた。


 「左の方向へずっと進めば、学園へ続く道に出られるよ。それと...また道に迷わないようにこれを持っていくと良い。」


 男性は、首から下げていた魔法石のような物をエマ達に渡した。

 

 「この石には、学園の場所を記憶させているから、正しい方向へ進むと光ってくれる。」

 「頂いちゃって良いんですか?」

 「俺は道に迷わないから大丈夫だよ。」


 二人は、男性から魔法石を受け取ると、お辞儀をしてその場を後にした。


 その後、無事に学園へ着いた二人は、敷地内にある受験会場へと向かった。


 「何とか間に合ったぁ〜(泣)」

 「あのお兄さんには感謝しないとね。」

 

 ドンッ...!

 

 「痛...ッ!」

 

 アルバは、すれ違いざまに肩をぶつけられた。


 「おいッ!何処見て歩いてんだッ!?」


 ぶつかって来た相手は、あたかもアルバが悪いかのように喧嘩を吹っ掛けた。


 「はぁ?!ぶつかって来たのはアンタの方でしょ!」

 「雑魚のくせに調子乗るんじゃねぇぞ?!」 


 負けじと言い返すアルバにムカついた相手は、勢い良くアルバの胸ぐらを掴んだ。


 「やめなさい。」

 

 そう言って男性の腕を掴んだのは、白髪ロングの女性だった。


 「ここは試験会場よ。周りの迷惑だから、喧嘩なら外でして貰えるかしら?」

 「この野郎...調子乗ってんじゃねぇぞッ!」


 男性が白髪の女性に殴りかかろうとした時、エマが素手で拳を止めた。


 「暴力はダメだよ。掴み合いは私もするけど、殴るのは良くないと思う。」

 「いや、掴み合いも立派な暴力だからね。」

 「...えっ?そうなの?」

 

 エマが、胸ぐらを掴まれいるアルバを助けなかったのは、2人の喧嘩は掴み合いがお約束だった為、許容範囲内と勘違いしていたからだった。


 「これ以上騒ぎを起こせば、ここから強制退場させられるわよ。それと、相手を雑魚と決めつけるのは、貴方がここに合格できてからにした方が良いわ。」   

 

 白髪の女性がそう言うと、男性は舌打ちをして去って行った。


 「あの...助けて下さってありがとうございます。」

 「勘違いしないで。迷惑だから忠告したの。」


 白髪の女性はそう言うと、綺麗な髪を靡かせながら颯爽とその場を後にした。


 「あの人かっこ良かったね。」

 「えぇ。でも、敵に回したくはないわ。」


 魔力保持者が集まるクレプスクロ魔術学園の試験会場は、普通の学校とは違い、魔力量の気迫が違った。

 その中でも、魔力量が異常に多い人物が、アルバを助けた白髪の女性だった。

 

 試験開始まで、残り10分。

 仲の良い2人も、試験会場では敵同士...


 「恨みっこなしだよ。」


 人生を懸けたエマの入学試験が始まる。

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