君を見た日
ーーーここには、君がいる。
目が覚めるといつも、君のことを思い出す。
頬を伝う涙を拭って、俺はゆっくりと身体を起こす。
きっと明日も、俺は同じことをする。明後日も、その次の日も、きっと同じことを繰り返す。
それでも俺は、きっとーーー
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「お兄ちゃん、起きて」
優しく俺を呼ぶ声が聞こえる。はっきりとしない意識をどうにか起こし、俺はゆっくりと目を開け起こしてくれた妹の方を見る。
「おはよう、ゆらぎ」
「おはよう。」
「ゆらぎは今日もかわいいね」
「はいはい、私はいつもかわいいよ。」
いつもの如く流された。かわいいなぁもう。
妹のゆらぎは小学4年生でまだ10歳だが、俺よりもしっかりしている。いつもこんな風に俺を起こしてくれて、掃除、洗濯、炊事全てをこなせる万能小学生である。愛らしい見た目と少しツンとした、しかし愛の溢れる態度がものすごくかわいい。
「ところで、大丈夫なの?」
「え、なにが?」
「時間。今7時半だよ」
「え、まじ?」
「うん」
こうしている場合ではなかった。俺は急いで意識を覚醒させ、学校の準備へと取りかかる。
「朝ごはんはもう用意してあるから、早く食べてさっさと学校行きなよ~、私もう先に学校行くよ」
なんとできた妹なのだろうか。顔を洗う兄に声をかけ、靴を履いて玄関を開ける妹。
「ありがとう!気を付けてな!」
「いってきま~す」
足早に学校へ向かう妹、まだ朝食すら済ませてない兄。どちらが年上なのかわからなくなる。
朝食はパンらしい。食パンに砂糖とはちみつをかけてある。これが甘くて美味しいんだ。食パンを半分に折り、サンドイッチのような形にして食べる。エネルギーが補給される。
朝食を食べ終わり、歯磨きをして制服に着替える。
幸い、学校までは走れば10分程度で着く。今は7時50分だ。急いで最後の確認をして家を出る。
「いってきます!」
誰もいない家に挨拶をして、走り出す。
いつもの通学路、いつもより同じ制服を着て歩いてる人の数が少ない。他の人はもう学校に着いているのだろう。
赤信号で立ち止まり、もどかしいなぁ、なんて思っていると、ふと白い髪の少女が目に入った。綺麗な顔立ちで表情を作らず、何にも興味が無さそうな顔でゆっくりと歩いている。
彼女はたしか・・・同じクラスの・・・
そんなことを考えていると信号が青になり、音楽を奏で始める。視覚障害者用の青信号を示す音だ。
俺はハッとなり、学校に遅刻しそうなのを思い出す。彼女も遅刻しないか心配しながらも、俺は走り出した。
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学校に到着し、時計を確認する。どうやら間に合ったようだ、思ったよりも余裕で、まだ始業まで5分ある。席に着いて授業の準備をしていると、横に人の気配を感じる。