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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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第91話、桃太郎、ダンジョンの幻想に触れる


 ゾンビどもはよく燃えるなー。イッヌのファイアブレスやカグヤの魔法で、動く死体は処理して、オレたちは41階層を進む。


 幻想塔ダンジョンは、外観こそ下へ降りていくふうだが、中には上を目指して次の階に行く形もあると聞いている。


 その構造自体、不可思議そのものであり、まさにダンジョンって形なんだが、この41階は、下りが多いという、まあ普通の構造をしている。


 44階までの地図は入手しているから、オレたちは大丈夫だけど、何も知らずに入ったら、アップダウンの感覚がバグったりしそうだよな。


「おっ、何か明るくなってきたか?」


 一本道の先は開けた空間、そこにあったのは――


「地下都市!」


 天井は洞窟のそれだが、その下には廃墟の町が広がっていた。地下世界な雰囲気だが、天井部分の一部から光が差し込んでいて、照らされた周囲が明るく、オレたちにも視界を提供する。


「うへぇ……」


 これには、思わず感嘆だ。太郎も初めて見る光景に目を丸くしている。オレはカグヤを見た。


「幻想的じゃないって?」

「まあまあね」


 カグヤは微笑した。ダンジョンらしくなってきた――というか、この41階だけで、古代遺跡発見した気分になるのは凄いよな。


 遺跡探索も面白そうだが、あいにくと今回はそうじゃないんでね。名残惜しいが、さっさと42階へ行こうか。


 地図によれば、このまま壁沿いの通路を行けば、42階への魔法陣だ。せっかく見えた古代遺跡は、通らなくてもいいんだよな、残念。これが40階から来ていると、通らないといけないんだけど。


 しばし左手の廃墟都市を眺めつつ、通路を進んでいくと、水が流れている横穴へ。この先が緑色に発光しているのだが、そこが41階のゴールだ。


「うわ、綺麗だけど、冷たそう」


 横穴通路全体が、(くるぶし)程度の水が張っている。避けては通れないのでピチャピチャ水を跳ねながら歩行となる。

 しばし歩けば、魔法陣のある台座に到着。


「案外あっさりだったね」


 太郎が拍子抜けしたような顔で言った。なんだ、ボスモンスターでもいると思ったか?


「話によると、モンスターは40階からのルートのほうが中心で、こっちルートはあんまりいないんだってさ」


 ということで、さっさと次に行くぞ。



  ・  ・  ・



「わあ……」


 42階層。俺たちの真上、高い高い天井にあったのは空ではなく、海の中のような澄んだ青。


 海底に都市があって、水面から光が差し込んだら、こんな風になるというような景色だった。天井が水のようなのに、ここは水ではなく普通に空気があるから、余計にファンタジー感がある。

 ところどころから滝のように水が下に落ちて、流れ込んでいる。


「ここが塔の中というのを忘れそうね……」


 カグヤも目の前の絶景に、完全に表情が持って行かれている。そうか、ここ、ダンジョンの中だったな。


「まさに幻想の塔。ここなら文句はねえだろ?」

「別に文句があったわけじゃないわよ」


 そうか? まあいいや。


 さながら海底都市のような42階を行く。ここが廃墟なのは、やっぱりダンジョン故なんだろうな。普通に人が住んでたら、怖いけど。


「やっぱ天井は、海っていうか水だよな。チラチラしているのって、魚だろ?」

「ここから見えるってことは、実物は結構大きい魚っぽいですね」


 お鶴さんが天を見上げた。言われてみれば、そうだよな。石畳の通路を進みながら、中央の都市の方へ向かう。


 通路は橋のようであり、ところどころ崩れているので、端によると落下する可能性があった。下はまた深く水が張っているようだった。海とか湖かな。


「桃ちゃんさん!」


 お鶴さんが都市の中央を見ていた。


「何か飛んでますよ!」

「この階のモンスターのお出ましか?」


 一体とか二体どころではなく、あっという間に数十に膨れ上がる。……おいおいおい!


「半魚人って、空を飛ぶのか?」


 醜い魚の頭に、全身鱗の人型が泳ぐように動きながら空中を移動している。たぶん、サハギン系のモンスターなんだけど、普通は飛ばないよなぁ。


「このダンジョンだけの仕様かな?」

「ダンジョンモンスターなんて、普通のモンスターとは姿は同じでも中身は別物だろうし」


 カグヤは身構えた。


「深く考えるだけ無駄よ!」


 ダンジョンだもんな、で片がつく問題だ。あり得ないことが起こるのがダンジョン。その謎を解きたい奴以外には、どうでもいいことなのだ。


「とはいえ、思考パターンは外の魔物と変わらないようだぜ……!」


 血の気の多いサハギンは、積極的に他種族や生物を攻撃する習性がある。飛んできたサハギンは手にした三又の槍を手に突っ込んできた。……本当に空中を泳いでやがるぜ!



  ・  ・  ・



 数はいても、個々の能力は、オレたちからみたらさほどだった。


 カグヤと太郎の魔法で数をすり減らし、それでも近づいてきた奴はオレとイッヌとサルで返り討ち。お鶴さんは弓矢で、仲間のフォローしているし、数の差はあったが何とかなってしまった。


 オレたちだから、するっと抜けれたけど、これ魔法使いが数を落とせなかったら、取り囲まれて、やられちまうパターンかもしれない。


 攻撃魔法に関しては、太郎が最近凄いんだよな。多数の火の玉が飛んで、サハギン集団に火の雨を降らせている感じに倒していった。


 冒険者として、いや人生経験は全然だけど、能力だけならもう一人前なんよな。冒険者登録ができないのが残念なくらいだ。

 そして中央を目指して都市に入るのだが、サルが反応した。


『至るところに、宝箱に類する物体の反応あり』

「宝箱?」


 開拓は73階層まで進んでいるって話で、ここも誰かがすでに通った道だ。しかしここはダンジョンで、しかも盗賊町のせいで、最近人もあまり入っていなかったから、お宝が復活している可能性は充分にあった。


「ちょっくら寄り道すっか?」


 言っても近場の宝箱っぽいのを漁るだけだけど。せっかくダンジョンに来たから、ねえ……?

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