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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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第83話、桃太郎、ダンジョン町の話を聞く


 塔と聞いていたが、現地にいけば巨大な大穴があった。そしてその中央にこれまた巨大な塔が、穴の底に向かって伸びている。

 いや、逆か。下から、地表近くの高さまで建っているのか。


 幻想塔ダンジョン。


 オレたち、ニューテイルは、塔のある大穴、その周りにあるダンジョン町に到着した。


 簡素な掘っ建て小屋だらけの、スラム街っぽい雰囲気。如何にも冒険者たちがダンジョン攻略のために集まって、拠点にしているような感じだ。

 これ衛生面とか治安、大丈夫なのかね……?


「貧相ね」


 カグヤが率直なご意見を宣った。同意はするが、それは口に出すもんじゃないぜ。


「言ってやるなよ。ここにいるのは多分、同業者なんだからさ」

「私はこれでもノーブルな生まれなのよね」


 一緒にするなってか、お姫様。オレは庶民生まれだぞ。


 いざダンジョン町へ。何かしら立派な建物があるので近づけば――


「へぇ、冒険者ギルドがあんじゃん」


 他の町のギルドに比べると小さめ。カウンターや依頼の掲示板が屋外にある仕様で、スペースの節約しているっぽい。


 見れば近場には飲食店や宿屋が隣接している。見かける奴らが、ことごとく武装しているのは、治安が悪い……ではなく、冒険者ばかりだからだろうな。丸腰出歩かなけりゃ、見た目に反して治安は悪くないかもしれない。


 ちらちら周囲から視線が来るのは、今更どうこうはいわん。女ばかりに加えて、フェンリルとメカニカルゴーレムを連れていればな、そりゃ注目されるさ。


 ただ、こちらを見てさほど驚かない、あるいは平静を装っているところは、さすが冒険者だけのことはある。


「やあやあ、お姉さんたち。エキュリーの町は初めてかい?」


 ……人相の悪い小男が声をかけてきた。旅人風のマントはボロいが、貧乏人という風ではない。ただ得体の知れない、いや怪しい雰囲気はひしひしと感じる。あと獣臭い。


「見りゃわかるだろう? それとも、この町でオレらを見かけたかい?」


 言い返すと、小男は大仰に肩をすくめた。


「いいや、あんたらみたいな美人さんを見たら、きっと忘れないだろうぜ。冒険者たちもな……っとと!?」


 イッヌが唸り声を発した。胡散臭いのが声をかけてきたから、威圧してるんだろうな。下手なことをしたら食うぞって。


「それで、オレたちに声をかけた用件ってのは何だ? ナンパか?」

「そりゃ付き合えるってんなら、最高なんだけど……」


 鼻の下を伸ばした小男に、カグヤが露骨に嫌な顔をし、お鶴さんも蔑みの目を向けた。太郎はサルと顔を見合わせている。


「いやあ、この町には慣れていない新人さんだと思って、声をかけたんだよぅ。こちとら新人冒険者をガイドして小遣いを稼いでいる案内役ってやつさ」

「ほう、案内役か」

「チッチッ、意外に馬鹿にしたもんじゃないぜ? 町には町の流儀ってもんがあるんだ。特にここはほとんどが冒険者で、ガイドしてくれるやつぁいないからな――」

「これでいいか?」


 オレは金貨一枚を放り投げる。小男は素早くキャッチすると声を弾ませた。


「うっほっ! 毎度あり! ……さあさ、お嬢様方、町のことなら何でも聞いてちょうだいよぉ。エキュリーの町随一の物知りルウフさんが、答えてあげちゃうからねぇ!」


 物知りルウフ……ってのが名前かな。


 情報収集は旅の基本。信用できるかはともかく、話を聞かなきゃわからないからな。



  ・  ・  ・



「へえ、あんた、特Aランクの冒険者だったのかっ!」


 ボロい町並みを歩きながら、話してやったらルウフが驚いたので、オレは言った。


「ニューテイルの桃さんって、聞いたことは?」

「ないね」

「あっそ」


 さすがにこの世界にはネットもテレビもねえからな。遠い離れた場所になれば、まあそんなものだ。前世の文明が恋しくなるな。


「まあ、素人さんじゃねえってことはわかったよ。……おっと、ここだ。着いたぜ、幻想塔ダンジョン」


 大穴の前に落下防止の柵があった。近くで見ると、ほんとデカい穴だ。そしてその下へと伸びる黒い塔も。


「あんたらがここに来たのは、アレがお目当てだろう? まあ、この町はアレのおまけみたいなもんで、アレしか名所になるもんはないけどな」

「ここじゃ、ダンジョンのことはアレって言うのか?」

「アレはアレさ」


 割とどうでもいい類いだった。


「塔って言うから、登っていくイメージだったけど、ここじゃ下っていくんだな」

「大抵下りさ。ただ階層によっては、登っていくところもあるらしいけどな」

「ルウフは、ダンジョンに入ったことはあるのか?」

「おれ? おれはねえよ。冒険者じゃねえからな」


 そうなのか。オレはさりげなく、自称案内人の腰にある剣を見る。護身用のナイフというには、ちと長くないかね。かといってショートソードより短いようだけど。


「塔に入るには、穴の周りから塔に伸びている橋が三本。まあ、どこから行っても入り口の1階層に入れるから一緒だけど、そこを通って入るのがセオリーだ」

「吊り橋かぁ」

「高所が怖いなら、お勧めしないがね。マジで高いぞ」

「見りゃわかるよ」


 柵に手を置き、大穴の底を覗き込む。


「暗くて見えないな。底はどうなってるんだ?」

「地獄まで繋がっている穴って話だぜ。実際のところはしらねえけど、時々、下から地響きだが、ドラゴンの咆哮だかが聞こえてくるって話だ」


 地獄とかドラゴンとか、物騒なワードが並んでるな。


「聞いたことは?」

「地響きはあったし、ドラゴンからはわからないけど何かの魔獣の声は、かすかに聞こえたことはあった」

「ふーん……。底なしみてーだな。穴を下りて塔に乗り込むとかそういうのはできないってか?」

「試した奴はいるが、誰も帰ってきてないから、お勧めはしないね。ズルはいけねえってことなんだろうな」


 大人しく、正規の入り口から入ろう。


「中に入ったことがないなら、道案内はできないってか?」

「知り合いの冒険者に頼むことはできるぜ。ただし、そいつへの報酬とおれへの紹介料は弾んでもらうけど」


 しっかりしてんなぁ。商魂逞しいね。


「まあ、いいさ。こちとら冒険者だ。ダンジョンの中は何とかするさ」

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