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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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第80話、桃太郎、火鼠退治に


 一番近いのは、火鼠のかわごろも素材が入手できる火鼠だった。


 魔法の鏡さん曰く、南の果てにある火山の炎の中にある燃えない木、不尽木とやらに住むのがオリジナルらしい。とある地方で季節によって、野原を焼き払う炎が発生するが、その原因はこの火鼠の仕業なのだそうだ。


 で、今だと、王国南端のクリールージュ平原で、火鼠が発生しているという。タイムリーなところを的確に逃がさない魔法の鏡さん、パネェっす。


 これがなかったら、南の果てとやらまで行くことになり、それはつまり、一番近いのが別の場所になっていただろうな。


 聞けば、辺りに火事を招き、時に作物を燃やす火鼠は、討伐対象なのだそうだ。


 さっそく、オレたちニューテイルは、スキーズブラズニルに乗って、クリールージュ平原へ飛んだ。

 空を飛べるってものはいいものだ。


「あのぅ、一つよろしいですか?」


 恐る恐るお鶴さんが話しかけてきた。


「火鼠の皮を獲って、衣を作るって話でしたよね?」

「そうだよ」


 で、何だい、お鶴さん?


「誰がその衣を作るんです?」

「誰って……」


 カグヤが、不思議そうな顔になった。


「お鶴さんは、防具や服もいけるから、お願いするつもりだったけれど……駄目だった?」

「あー、やっぱり」


 お鶴さんが、ガックリ肩を落とした。ほんど、どうした?


「事前に確認しておいてよかった。……えっと、まず行っておきますが、わたしはそんなアッチッチな素材で服なんて作れませんからね?」


 火鼠ってくらいだもんなぁ。オレは実物を見たことないからあれだけど、やっぱ燃え尽きない素材ってだけで、燃えているのかな?


「火鼠の皮は、別に触れないほど熱いものじゃないはずだけど……」


 カグヤが首を振った。


「燃えないってだけで、別に燃えているわけじゃないし」

「それ前世の知識で言ってます、カグヤさん?」


 お鶴さんは嘆息した。


「この世界の火鼠は、体に炎をまといますし、火を吹きますよ? 触っても火傷しないようにするには、特殊な加工が必要なんですけど、火に触れても大丈夫な手袋なりをつけるか、専門の業者に頼むしかないですよ」


 つまり、今のお鶴さんの装備に、火鼠の皮を扱える耐火性能グローブなどがない、ということか。


「確かにそれじゃ、せっかく火鼠を討伐しても、意味がねえな」

「耐火性に優れた手袋とかグローブがいるってこと?」


 カグヤが少し考え、そして手を叩いた。


「ヤールングレイプル!」

「あんな重くて、とりあえず振り回せれば大丈夫程度の可動で、細かな作業ができるとでも?」


 笑顔だが、やってみろ、と言わんばかりの圧を発するお鶴さん。ミョルニルを振り回すに必要な鉄の手袋であるヤールングレイプルは、確かに作業向きではない。


 そうなると――カグヤが考える。


「耐火グローブを手に入れるか、専門家に依頼するしかないってことよね……。その耐火装備って、どこかで調達できる?」

「一般で扱うレベルのものだと、火鼠の熱に耐えられないんですよね。ちょっといい性能のならわたしも持っているんですけど、それじゃ駄目なんですよ。で、そんな性能だと、そこらの町では買えないと思います。パッと思いつくのは、ドワーフでしょうか。鍛冶業が盛んで、仕事柄、耐火・耐熱装備を取り扱っています」

「ドワーフかぁ……」


 カグヤが、かなり嫌そうな顔になる。気持ちはわかる。露骨なセクハラが多いからなドワーフは。


「専門の業者って話も、ひょっとしてドワーフになるか?」

「探せば人やその他種族の職人はいるでしょうが、確率でいえばやっぱりドワーフになりますかね」


 それは、よろしくないな。こっちは女ばかりだからな。足元見てくるぞ、絶対。オレもげんなりすれば、カグヤは手を叩いた。


「まあ、そこは知り合いの殿方に持って行ってもらって、ドワーフの職人に代理注文してもらうしかないんじゃない?」

「知り合いの男……? たとえば?」


 そんなのいるか?


「ガーラシアのオウロとか?」


 ゴールド・ボーイか。確かに真面目なあいつなら、頼んでみてもいいかもな。冒険者で、割と自由に動けるし、ガーラシアからドワーフの集落は比較的近いしな。


「じゃ、それで行くか。お鶴さん、他に何か問題は?」


 確認すれば、お鶴さんは首を横に振った。よし、それじゃ火鼠退治だ。



  ・  ・  ・



 スキーズブラズニルで、南へと進む。風がいつしか生ぬるくなり、雲もまた増えてきた。


「そういや、火鼠って水に弱いんだっけか?」

「水をかけられると死ぬと言われているわね」


 カグヤが不敵な笑みを浮かべた。


「辺りはどうせ火事なんだから、派手に水の魔法をぶっかけるわよ。……太郎ちゃん、やれるわね?」

「やってみる」


 太郎はやや緊張した面持ちのまま、呼吸を整え出した。魔法が使えるようになって、歳の割にレベル高いから頼りにしよう。……大丈夫、しくじっても、誰も巻き込まれたりしないから、思い切りやっていいぞ。


 と、それはそれとして。


「水がかかったら死ぬって、雨降ってきたらどうするんだろうな、火鼠たちは」

「さあ、雨が降らない場所にいるんじゃないの?」

『魔法の鏡は「とある地方と季節によっては」と言っていました』


 舵を担当しているサルが話に入ってきた。


『雨期や気温なども、影響しているのではないでしょうか?』

「つまり、生まれ以外の土地で現れる火鼠は、雨が降る季節になると死ぬか、あるいはどこかへ移動するってか」


 クリールージュ平原を燃やしている火鼠は、そういうどこからか移動してきた連中なのかもな。

 ……おっ。あれはそうか? 雲じゃなくて白い煙が立ち上っている。広大な平原が広がり、しかし一部は黒焦げ、また一部は赤々とした炎が見える。


 平原一帯の草を焼き払う火災。魔法の鏡さんの言うとおりなら、ここらの火事の原因は、火鼠たちだ。

 では、火鼠たちをやっつけよう。


「カグヤ、太郎、一発ドカンと頼むぜ!」

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