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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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第77話、桃太郎、アルチーナに対面する


 ほう、噂には聞いていたが、アルチーナは超絶美人だった。


 すらりとした体。しかし胸もとのボリュームは、オスを引き寄せる強烈な引力がある。艶やかに長い赤色の髪。そのエメラルド色の瞳は、人を惑わせる。


 認めるぜ。お前は美人だ。でも美人レベル、いや艶やかさならうちのカグヤさんのほうが上だ。特に上品さじゃレベチだ。


 アルチーナは男を虜にすることに意識を中心に置いているから、どうしても下品なのよな。服装が薄く、肌も露出が大きくて、己の肢体を見せびらかすことを重視している弊害か。


 いや、男を落とす、女は無視となれば、これが最善手かもしれない。

 まあ、今世は女でよかったと思ったね、オレは。


「それにしてもおかしな集団だわね。ゴーレムに狼。……おや、いけ好かないメスばかりと思ったら、可愛い男の子がいるじゃない。おいで、坊や」


 アルチーナは呼びかけた。


 事前情報によると、こうやって同じ部屋に入ったら、男はアルチーナに魅了されてしまうのだという。討伐しにやってきた騎士たちすら、顔を合わせたら、全てを忘れて魔女の虜になる。


「ほら、坊や。こっちへいらっしゃい」

「?」


 太郎は、イッヌの背中に乗ったまま動かない。というか小首を傾げ、続いてオレを見た。


「別に行かなくてもいいよね?」

「おう、行かなくていいぞ。幼児だろうと手を出す変態女だからな、近づいたら駄目だぞ」


 うちの太郎にちょっかいを出そうとする時点で、要注意な守備範囲の広さだ。

 アルチーナが目を見開く。


「私の言うことを聞かないの? 男の子なのに?」

「それ、どういう意味だよ」

「メスは黙ってなさい!」


 そういうお前だってメスじゃん。まったくよぅ、女を敵視する女ってやつは……。


 しかし……本当に太郎って、魔女の魅了が効かないんだな。

 この場に連れて行くことについて、太郎は一応男だから、魔女に操られないか、魔法の鏡に相談した。


 すると鏡は――


『太郎少年は、知らない異性のことに関心が薄いので問題ありません』


 だそうだ。関心が薄いから大丈夫って、何者だよ。魔女の誘惑すら意に介さない太郎……。


 前世は、本当なんだったんだろうな。疑問ではあるが、知らないと死ぬわけではないので、これについては鏡には聞かなかった。それでなくても、鏡依存が怖いから。


「欲しい……」


 ボソリと、アルチーナ。


「私の言うことを聞かない男の子……欲しいわぁ!」


 魔女がその場で踊り出した。


「素敵な男の子。美形な男の子。私のもとにおいでぇ! 全身全霊を賭けて愛してあげるぅー!」


 うわ……。この魔女、怖っ。


「桃ママ、この人怖い」


 太郎もドン引き。おう、同感だ。さすがにこれを見て、太郎が虜になることはないだろう。


「ママ? へぇ……あなたが、この素敵な男の子のお母さん!」


 こういう場で、注目されるの凄く嫌なんですけど。


「だったら、搦め手で行かせてもらうわ! あなたのママを他の動物に変えてあげるっ! 元に戻して欲しければ、私の言う通りにするしかないのよ!」


 魔女は魔法を放った。変身魔法。人を動物や植物の変える魔法。……うん、情報なし初見でやられるアルチーナの得意技。


 だが残念。手がわかってるから対応済み!


 カグヤのかけてくれた反射魔法が、オレにかかった魔法を跳ね返した。月は太陽の光で光っている――というわけではないが、月面人の魔術師は反射魔法が得意なんだそうだ。


 変身魔法が跳ね返って、アルチーナに直撃するっ!


「な、なにぃーっ!?」


 アルチーナの姿が変わる。絶世の美女だったそれは、たちまち醜く老いた老魔女へと干からびていく。


「動物でも植物でもないんだが……?」

「たぶん、変身魔法と変身魔法がぶつかって消滅したのよ」


 カグヤが答えた。


「あの老いた姿が、本当のアルチーナ。変身の魔法で美人になっていたところに、別の変身魔法が重なって、化けの皮が剥がれたのよ」

「……これじゃ、男は寄ってこないよな」

「何故ェ! 何故ェ!」


 狼狽えるアルチーナがその場に膝をつく。動揺している場合じゃないと思うんだけどな。オレはグングニルを手に魔女の後ろ――壁際に飾られている壺を狙う。


 こいつがアルチーナの魔力の根源。そして他の動物などに変えられた人たちを元に戻すために、破壊するもの!――とこれまた鏡さん情報。


 とりゃ! グングニル、投・擲っ!


「あっ――!」


 魔女が気づいたがもう遅い。グングニルは、アルチーナの壺を破壊し、戻ってきた。


「わ、わたしの壺がぁーっ! 魔力が、溢れるぅぅーっ!」


 割れた壺から、着色されたガスのように目で見えるほど濃い魔力が溢れ出て、飛散した。



  ・  ・  ・



 アルチーナを捕まえた。


 魔力の根源を破壊された結果、力を失ったのか、魔女のお婆さんはお縄につきましたとさ。


 宮殿の周りでは、人が大勢いた。全員男だった。魔女に誘われた者、討伐にやってきて逆に虜になって、捨てられ他のものに変えられた者、オーク兵士にされた者など。


 アルチーナの根源が消えた結果、魔法の効果も消え、皆、正気に戻り、元の姿を取り戻した。

 めでたし、めでたし――


「……」


 そんな悲しそうな顔をするなよ、カエルの王子様。


 直接の魔法ではなく、薬の呪いでフロッグ――カエルに変えられたレグルシは、カエルのままだった。


「おい、魔女! この体を戻してくれ! 何か、魔法薬とかないのか!?」


 カエルが、魔女に詰め寄るが。


「フン、知らないねぇ」


 アルチーナお婆さんは、突っぱねた。

 ……うん、まあ、オレらは魔女の拘束は依頼で受けたけど、王子様が元に戻る云々は関係ないんだよな。


 でも方法は前に出たんだよな。魔法の鏡さんが、『異性と同衾(どうきん)すれば、魔法薬の効果は切れます』って。

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― 新着の感想 ―
[一言] アルチーナも若かりし頃も絶世の美女とは限らない模様。 (別に予想が外れても悔しくないんだからね!) 一応異性だから、アルチーナを拘束してレグルシと同衾させたら?。(鬼畜な発想)
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