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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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第65話、桃太郎、カエルと遭遇する


 飛行帆船スキーズブラズニルがあれば、レッジェンダ王国の王都まで半日もあれば行ける。

 これが徒歩旅だったら、そうそう余裕もないんだけど。


「で、桃ちゃん、皆を集めてどうしたのよ?」


 カグヤが問うのでオレは言った。


「登城するまでにしなくちゃいけない作業を今のうちにしておこうと思ってな」


 まず、衣装の問題。冒険者だからと、ふざけた格好ではいけない。よしんば、通してもらえたとしても、失礼な奴、野蛮な奴、これだから冒険者(平民)は、などと陰口を叩かれる材料を提供してはならないのだ。

 ここは冒険者代表として、しっかりしておかなくてはならない。


「後は礼儀作法もな。向こうも冒険者にそこまで期待していないだろうが、だからといって侮られるのも面白くない。ビシッと出来るところを見せて、偉いさんたちを見返してやる!」

「……気合い入るのはいいんだけど」


 胡乱げな目になるカグヤ。


「なーんか、桃ちゃんっぽくないのよねぇ」

「そうですねぇ」


 お鶴さんも頷いた。


「言っては何ですけど、桃ちゃんさんって、礼儀? 作法? んなもんクソ食らえってタイプかと思っていました」

「オレ、ってそんな風に見られていた?」


 いや、お鶴さんの口からクソ食らえは、似合わないな、うん。


「おサル?」

『ワタシも、モモが偉い人とまともな会話ができるタイプとは思っていませんでした』


 何気に毒舌なんだよな、このメカニカルゴーレムは。


『ぬか喜びして、変なところに力が入ってませんか? 馬子にも衣装とは言いますが、どれだけ背伸びしても、中身はそうそう変えられませんよ?』


 服装と整えたら誰だって立派に見えるって、その評価は女として言われて傷つくわー。このサルめ! S・A・Lめ!


「ふふ、背伸びだ? 誰に向かって言っているんだ? パーティーや貴族というものを、この中で誰よりも詳しいのはオレだぞ……。って、信じてねえな、その目は?」

「まあ、普段が普段だからね」

「そうですね」


 カグヤもお鶴さんも懐疑的だ。普段の言動って大事だよな……。


 まあ、家を出たとは言ったが、貴族令嬢って皆には公言していなかったからな。どこでポロリしたかもしれないけど、まあ突っ込まれていないところからして、気のせいだったかもしれない。


 いいんだけどさ。侯爵家に未練もないし、親に会うつもりもない。



  ・  ・  ・



 ガーラシアの町に滞在し、最低限の作法を仲間たちに叩き込み、衣装を用意した。


 最初は冒険者仲間からは、冷やかされたが、作法講座をやっていたら、オウロことゴールド・ボーイが教えてくれ、とやってきたりしたことで、いつの間にか数人の生徒を抱えるまでになった。


 そろそろ王都に向かおうか、とギルドに、数日ガーラシアを離れる旨を告げに行ったら、事件に遭遇した。


 何やら人だかりが出来ている。その中にゴールド・ボーイがいたので声を掛ける。


「何の騒ぎだ?」

「モモか。……喋るフロッグを捕まえたってさ」

「フロッグ?」


 カエルか? この世界だと大型のポイズンフロッグをはじめ、カエル系のモンスターも生息する。先のポイズン種以外なら、割と食えると一部では食材として有名だったりする。しかし喋るってどういうことだろう。


「人語を話すってか?」

「そういうことだ。何やら独り言が聞こえるって様子を見に行った冒険者が、フロッグが喋っているのを見つけて捕まえてきたって」


 へぇ。食材にするつもりでなければ、普通は退治しちゃったりするものだが、人語を喋っていたせいで生け捕りにされたか。物珍しさから、売れば金になりそうだもんな。


「喋るカエルだってさ」


 オレが、仲間たちに振り向けば、カグヤが考え込む。


「普通のフロッグは人語を喋らない。それ、本当にフロッグ? 魔物か何かじゃないの?」

「魔物型フロッグってか?」


 オレはゴールド・ボーイに向き直る。


「で、そのカエルって何を喋っていたんだ?」


 意味のわからない言葉の羅列か? それとも聞いたことのない言語か?」


「いや、こちらの言葉だよ。俺が見た時は、カゴに放り込まれていたから、解放を要求していた。自分は高貴な生まれだから、釈放しないと酷い目に合うぞ、とか」

「へえ、高貴なカエルか。……カグヤ、この世界にカエルの国があるのか?」

「聞いたことはないわね。――どう、お鶴ちゃん?」

「わたしも聞いたことがないですね」


 お鶴さんは首を傾げる。


「でも、そういう種族ごとに国とかありそうですよね?」


 そうかなー。お伽話とか童話じゃないんだし……って思ったけど、オークとかゴブリンは拠点を作るし、ドワーフだって洞窟に集落を作って住んでいる。なくはないな、この世界なら。


「喋るカエルか……」

「桃ちゃん?」


 カグヤが何か考えてるの、と言わんばかりの目を向けてきた。……何を考えているかって?


「手土産にならないかと思ってさ。喋るカエル」

「何の手土産?」

「王城。貴重な喋るカエルを献上する代わりに、宝物庫にある御石の鉢と交換するとかさ」

「……なるほど」


 要するに取引材料だな。とりあえず、そのフロッグとやらを見に行くとするか。ちょいとごめんよー、道を開けなー。


「おい、モモさんだぞ」


 人だかりが、オレに気づいて道を開けた。冒険者ランクAっていうのは、こういう時、周りの冒険者が遠慮してくれるから助かる。


 ギルドカウンターに、小動物用のカゴがあって、中に緑色の体のカエルが入っているのが見えた。30センチくらいか。フロッグ系のモンスターの中には1メートル超えのものもあるから、それからすれば小さいが、前世までに見かけたカエルと比べると、化け物サイズだな。


 ギルドスタッフが、捕まえた冒険者と交渉している横で、受付嬢がカエルを見て嫌そうな顔をしている。……生理的に受け付けないんだろうな、受付嬢だけど。


「ミリッシュ!?」


 一瞬、カエルがオレの方を見て、そう言った。は? 何でオレの今世の名前知ってるんだよ?


「いや、違うか……すまない、人違いだ」


 しょんぼりするカエル。周りの冒険者たちは騒ぎ出す。


「おお、本当に喋った!」

「マジかよ……!」


 いやいやいや、おい、このカエル。いったい何者だぁ?

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