表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/121

第57話、桃太郎と魔法の鏡


 怪しい本が置いてあった。……いや、辞書みたいに分厚いが、見た目は普通に本だ。じゃあ何が怪しいのかって言うと、嫌な気配を感じるんだ。……何だろうねこれ。


 ドヴェルグの宝物殿、お宝部屋から離れたドックのような場所、そこにある倉庫の一角で、オレたちが、怪しい本と無意味な睨み合いを続けていると、カグヤが木箱の山の向こうからやってきた。


「何? どうしたの?」

「……あそこの本、何か変な感じしない?」


 太郎が指差した。カグヤもそれを見て、ムッと顔をしかめた。


「確かに、嫌な感じね。触ると呪われそうだから、こうして――」


 カグヤが左手を向けると、本がフワリと宙に浮いた。


「こう!」


 右手から火の玉――ファイアーボールを放って、本に命中させた。


「触らぬ神に祟りなし! 臭いものは燃やせ!」

「そこは蓋をするんじゃないのか……」


 ちょっと過激じゃないかね、カグヤよぉ。問答無用で燃やしちまったぜ、この魔術師。触らぬ神なら、あのまま放置するのが正解なんじゃねえのか……?


「それより、桃ちゃん」


 怪しい本を焼却したカグヤがオレと、その手にある鏡を見てきた。


「それ何? 何かの魔道具?」

「お、こいつか?」


 オレは、両手で持った鏡を、カグヤに向ける。ちょっとイタズラしてみよう。


「これはな。魔法の鏡と言ってな。質問に対して何でも答えてくれるんだ」

「本当なの?」


 さっそく疑うような目を向ける。オレは真面目なふりをする。


「うむ、前世でな、白雪姫って童話に出てきたアイテムだ」

「じゃあ、これ異世界漂流物ってこと?」


 そうじゃね?――はい、嘘です。


「『鏡よ鏡』、って呼びかけて、質問をすると答えてくれるぞ。やってみ?」

「それが呪文なの? まあいいわ。鏡よ鏡――」


 本当に言った――オレは笑いを堪える。


「桃ちゃんの言ったのは本当?」


 うっ、驚かすつもりが、こっちがちとビビる質問しやがって。ただの鏡だから当然、返事はないが――


『はい。本当です』


 鏡が返事した。


「喋った!?」

「うそぉっ!?」


 カグヤとオレで、別の驚きの声が出た。魔女さんが睨む。


「え、嘘って?」

「しまっ――あははー」


 嘘のつもりだったんだけどね。この鏡、マジで魔法の鏡だったみたい。そんなことってあるー?


「魔法の鏡」


 お鶴さんと太郎が不思議そうな顔で、オレの持つ鏡を見つめる。


「見た目は普通の鏡ですよねー」

「ちょっと豪華そうですけど……。凄いですね」

「マジで凄いぞ、この鏡は」


 これが白雪姫に出てきた魔法の鏡って言うなら、質問には何でも答えてくれる上に、嘘をつかない。


 何せ持ち主のお妃様の質問に、忖度せず真面目に答えた筋金入りだからな。これが主人に媚びへつらう性格だったら、白雪姫の暗殺未遂も起こらず、お妃様もざまぁ死を迎えることもなかった。


「そうだ。本当のことしか話さないから、こいつに聞いてみよう。カグヤ、さっきのお宝部屋で見つけたお宝のこと質問してみようぜ」

「それ、いい考えだわ!」


 物は試し、という気分になったか、収納魔法でしまっておいたお宝を出して、魔法の鏡に質問してみた。

 まず最初。イッヌが、雷神トールの小手ではないかと、仮識別の鉄の小手を見せて質問する。


『これは雷神トールが保有した三大装備の一つ、「ヤールングレイプル」です』


 確定。

 お鶴さんが口を開いた。


「鏡さん。三大装備とは何ですか?」

『トールの三大装備とは、ハンマーのミョルニル、力帯のメギンギョルズ、そして鉄の小手ヤールングレイプルのことです』


 ミョルニルで思い出した。シドユウ・テジンで回収したこれはどうでしょか?


『雷神トールの保有する鎚「ミョルニル」です』

「おお、やっぱりそうだったか!」


 鉄の小手をはめて、ハンマーの柄を掴む。素手だと火傷しそうなくらい熱かったそれも、ヤールングレイプルごしだと熱を感じない。


 とはいっても、ミョルニル自体そこそこ重いから、柄の短さから片手でぶん回すことになるけど、そこそこ腕力ないと使えないだろうな。オレは大力あるから、片手で余裕だけど。


 ヤールングレイプル単独でも腕用の防具として使えそうだし、これからはヤバそうな敵にはトールハンマーことミョルニルも使えるな。


 次に、魔法の鏡に鑑定してもらうのは……ドックの船とよく似た船、そのちっちゃな模型。お宝部屋にあったわけだけど、ただの模型じゃないよな……?


『こちらは「スキーズブラズニル」。ドヴェルグの匠たちが、神のために作った船であり、最高傑作でございます』


 聞けば、この模型サイズは折りたたみの縮小状態で、開くと、すべての神様を乗せられるほどの巨大帆船になるのだそうだ。

 帆を張れば、勝手に風が吹いて船を前進させられるという。


「なにその、チート」


 大きさを自由に変えられて、気まぐれな風を読まずとも前進できるとか。ドヴェルグたちって、こんな凄いもん作るとか、職人としての技術、神がかってない? 持っていた太郎が、あまりの凄さにガクガクと震えているぞ。


 じゃあ、この部屋の外にある船は、このスキーズブラズニル……慣れないと言いにくいな。この船と同型っぽいけど、あれは?


『あちらは未完成ゆえ名前はないようです。ただし型はスキーズブラズニルと同型です』


 あっちは未完成なのか。じゃあ、こっちのお宝の方の船を使わせてもらうこととしよう。……船の出番があるかは知らんけど。


 で、例のイッヌが拒否反応を示した紐を見せたら、魔法の鏡は『グレイプニル』と答えた。……なあ、イッヌよぅ、そんな嫌そうな顔すんなって。


「じゃあ、魔法の鏡、次はこれなんだけど……」


 お宝部屋で見つけ、ドヴェルグ銅像を軽く破壊した槍を見せる。


『こちらは、魔法槍「グングニル」でございます』


 な、んだと……? これが、かの有名なグングニル、だと……!


「凄い武器なんですか?」


 お鶴さんが聞いてきた。


「凄いぞ。前世の世界での神話じゃ、トールより上って扱いだったオーディンの武器だからな」


 狙った獲物への命中率100パーセント。投げても敵を刺し貫いて自動で戻ってくるチート機能付きだ。


 ミョルニルもヨルムンガンドを除けば、ほぼ必殺武器のミョルニルにも、投げたら必ず当たって戻ってくるという機能があるが、それを備えているわけだから、弱いわけがない。


「ねえねえ、次、私いいかしら?」


 カグヤがウズウズしながら、魔法の鏡に歩み寄った。


「私は四つの秘宝を探しているんだけれど……それがどこにあるか、教えて?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あ~、なるほど。何でも質問に答えてくれるって事は何でも知ってるって事なのか。残り四つの秘宝の場所もこれで分かるのかな?(゜∀゜ ) 分かってても簡単に手に入らない場所にあるとかも有りそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ