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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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第54話、桃太郎と、ドヴェルグのお宝


 お鶴さんのランタンで光を当てたら、柱の裏の陰にあったドヴェルグらしい紋様が引っ込んだ。

 それと同時に、後ろで軽く地響きが起きた。


「来た来た来たー!」

「何がだよ」


 変化があって嬉しいのか声を弾ませたカグヤに、すかさずツッコミを入れる。


 だが待ちに待った変化であり、柱の裏の奥の壁が、ゴゴゴ、という音と共に開いた。通路、いや下へ向かう階段が現れたのだ。


「秘密の隠し階段をはっけーん!」


 ドヴェルグ宝物殿の本命へ通じる道かな。


「しかし、イッヌ。よくあの紋様に光を当てるなんてわかったな」


 階段を下りつつ聞けば、イッヌが何事かを返す。はいはい、通訳通訳。


「イッヌさんが言うには、ドヴェルグは陽の光を浴びると石化するか、弾け飛ぶんだって」


 太郎が通訳してくれたが……え? 弾け飛ぶ? バーンってあれ?


「エゲつねぇ……」


 地中を好むドヴェルグは、太陽光が弱点なのか。トロールみたいだな。あれも太陽光を浴びると石になるんじゃなかったっけ。


 ともあれ、イッヌは何か変化を求めて、唯一あった紋様に弱点の強い光を当てたということだな。


 よく知ってたな。……いや、うちのイッヌは、北欧神話産フェンリルだから、北欧神話系ドヴェルグの弱点を提示して、それがこっちのドヴェルグにも効果があったってことだな。異世界の癖に、変なところで繋がってるんだよな、この世界。


 ひょっとして、前世や前々世の昔話や神話で消えた存在は、何かの条件を満たせばこっちの世界に転生するようになっていたりして……。まさかね……。


 さっきまでと違い、薄暗い階段を行く。ランタンがいるかな? 長い階段を下まで下りたら、その先の部屋は真っ暗だった。

 ランタンでも暗いか。


「ライト」


 太郎が呟くと、光球が浮かび上がった。おいおい――


「魔法か? いつの間に覚えたんだ」


 感心も露わにすれば、太郎は少し照れたようだった。ともあれ、明るい。


「扉がある」


 鍵とかはなさそうだ。押してみれば……おっと、重い、なっ!


「おサル」


 カグヤに言われ、サルも扉を押す。オレとサルが押したら、扉は奥へと開いた。


「うおっ!」


 眩しい。太郎の光源魔法に照らされて、扉の向こうの部屋の黄金が輝いたのだ。


「お宝か?」

「宝物殿らしくなってきましたね」


 ウキウキした様子のお鶴さん。部屋の中に入れば、金で装飾された室内は広く、ドワーフ、いやドヴェルグの銅像の他、宝箱が黄金の山の中に複数見えた。


 お宝だーっ!

 金貨が山となっていて、その中に見え隠れする箱は、まるで海に浮かぶ漂流物のようだ。足の踏み場もない金貨が床一面に散らばっている。


「凄い……」

「これは一生遊んで暮らせるわね」

「城が買えるんじゃね?」


 土足で踏み込むのはもったいないけど、避けようないから仕方ない。札束の風呂なんてめじゃないね。ブーツが金貨に埋まり、上から滑り落ちた硬貨がジャラジャラと音を立てる。


「つーか、どんだけあるんだ……」


 前世の学校の体育館ばりに広いんだが、ここ。この金貨の山……マジでその上で泳げそう。


「気になるのは、宝箱の中身だよな、やっぱ」

「そうね!」


 オレとカグヤは、金貨の海を踏み越えて、手近な宝箱を引っ張り出す。おっもっ……。


「早く早くー」

「急かすなっての」


 パカッとな。と、中身が溢れた。なんじゃこれ。黄金の腕輪がいっぱい中に入っていた。というか、どんどん箱から出てくるんだけど!


「容量バグってんだろ! なんだこの腕輪の量は!」


 黄金の腕輪だから、売ればそれなりの金額になりそうだけど、同じものがこんなにあったら値崩れ起こしそう……。


「お宝には違いないけれど……」


 カグヤも引いている。


「これだけあると有り難みが薄れるわね」


 オーケー、オーケー。とりあえず一つだけ飾りが違う豪華そうなものだけを回収し、他は後回し。って、まだ箱から出てるよ……。

 次の宝箱に移動するまで、試しに金貨の海の上を泳いでみた。進まねぇ……。


「桃ちゃん、黄金の上で遊ばない」

「へーい」


 ということで次のお宝。オープン!


「……小手?」


 鉄のごっつり小手。なにこれぇ……。ヌッとイッヌが顔を出して言った。太郎ちゃーん?


「えっと、イッヌさん曰く、ヤールングレイプルに似ているって」

「ヤールン……って、あれか。雷神トールのミョルニルをぶん回す時に必要な鉄の小手!」


 このあいだのシドユウ・テジンで見つけたハンマー。それがミョルニルだったのなら、それを持つことができる小手が、ヤールングレイプルである。


「――ミョルニルもヤールングレイプルも、ドヴェルグの職人が作ったものだから、だって」


 イッヌの言葉を通訳する太郎。


「でもオリジナルじゃなくて、レプリカだろうけど、だって」

「なるほどね。まあ、オリジナルは神話の神様が持っているやるだろうし、オリジナルがここにあるって、それはそれで驚きになるし」


 ただし、オリジナルと同性能の複製品だと思う、とイッヌは見解を示した。


「まあ、ここはドヴェルグの宝物殿なんだし、むしろシドユウ・テジンにミョルニルがあったほうがおかしいのか」


 この小手が本物のヤールングレイプルなら、ミョルニルと思われるアレも持てることになる。凄ぇ。ヨルムンガンド以外は必殺という超兵器をゲットだ。……なお、使う機会があるかは不明。


 次のお宝に行きましょう。……これは――


「帆船の模型?」

「……お宝?」


 とても精巧な作りだけど、手で持てるくらいの大きさだから、実際に乗るのは不可能だけど。


「ドヴェルグの手先が器用さアピールだろうか?」

「宝箱に入れられるレベルだから、凄いものなのよ。……きっと」


 カグヤも半信半疑である。手先の器用なお鶴さんに見せてみたけど、彼女も首を傾げるばかり。

 とりあえず保存。どこかで資料を漁れば、ヒントくらいは出てくるかもな。


 気を取り直して次の箱を開けたら――イッヌが威嚇するように吼えた。


「おいおいどうした、イッヌ?」

「枷……? 紐?」


 カグヤがそれを手に取る。そんなものに、何でイッヌが敵意を剥き出すのか……。いや、待てよ。確か前世の北欧神話で、フェンリルといえば。


「ひょっとしてこれ、グレイプニル?」

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