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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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第53話、桃太郎、ドヴェルグ宝物殿の仕掛けを探す


「ワームを使って入り口作るとか、ちょっと普通じゃないわよ、桃ちゃん」


 カグヤは、そんなことを言ったけれども、とりあえず中に入れそうだからいいじゃんよ。


「そこらの岩と同じ壁って聞いたからな。ワームが突きやぶれるなら、ここもそうだろってさ」


 ドヴェルグの宝物殿と言われている壁に穴が二つ。巨大ワームのサイズの穴だから直径1メートル強くらいかな。狭いけど、屈めば普通に通れるな。……あ。


「サル、お前は、ちょっと待機な」

『わかりました。ワタシではこのサイズは通れませんからね』


 そういうことだ。メカニカルゴーレムの縮小ボディでも、これは入らない。


「うぇっ。ワームの汁か、これ……」


 穴に潜ったはいいけど、表面がヌルヌルしている。地面の中を進む時、あいつらは自分の周りに液を出して、通りやすくするトンネルを形成する。だから、ワームが通った穴ってのは、ヌルヌルなのよな。


 壁の厚みは一メートルと少し。ちょっと進めば宝物殿の中だ。……へぇ、こりゃ立派な遺跡の中って感じだな。

 いきなりお宝ってわけじゃないが、どうも正面入り口っぽい。穴を開けた壁は、本当に入り口の門みたいだな。


「皆、下がれー。ちょっとこのレバーを動かしてみっから」


 何となくだけど、門の開閉レバーっぽいのよねこれ。よいしょっ、と。どうだ? 


 ガタンと音を立てて、ギギギと重く軋むような音と共に小刻みな振動が起きた。


 予想通り、壁がこちら側に少し下がると、上へとスライドして大口を開いた。開門ーってか。

 カグヤたちが、開いた壁――門を潜って中に入ってくる。


「よう、サル。さっきぶり」

『どうも』


 サルのボディでも充分入れる門を通って宝物殿の中へ。お鶴さんが天井を見上げる。


「天井が高いですね。しっかりした作り」

「宝物殿というだけあって、ドヴェルグも内装には気を遣ったようね」


 カグヤはしかし首を傾げた。


「でも、ドヴェルグのものという割には、この高さは妙ね」

「妙か?」

「妙よ。ドヴェルグって、ドワーフの祖先、親戚と言われている種族よ。精霊とか小人っていうくらいだから、贔屓目に見ても、ドワーフより大きいなんてことはないでしょうけど、この内装は」

「確かに。オレら人間でも余裕だよな」


 そう考えると、奇妙ではある。ドワーフサイズ程度でいいなら、メカニカルゴーレムのサルが余裕で動き回れるサイズで作らないよな、普通。


「あー、でも」


 オレは思い直した。


「くそデカい教会とか大聖堂って建物は、やたら天井高いよな。ここもそれと同じなんじゃね?」


 西洋の聖堂とか、一階とか二階が吹き抜けになっているから天井がすこぶる高かったりする。人間のサイズでいえば、そんな高くする必要はないだろうに。

 そうやって考えたら、ドヴェルグの宝物殿が、彼らのサイズに似つかわしくないくらい高かった広かったりしても、おかしくない。


 一通りの感想の後、さっそく探索を開始。ドヴェルグの宝物殿っていうから、今からお宝に何があるか楽しみだぜ。



  ・  ・  ・



 神殿の中っぽくはある内装。宝物殿なんて言うから、もっとキンキラ輝いているかもと思ったが、そんなこともなくしばらく歩いたが、ただの石造りダンジョンもしくは遺跡を歩いているという感想。

 あと気のせいか、グルリと一周させられているだけのような――


「あ、ここ」


 イッヌに乗った太郎が思わず口走った。……オレたちが入ってきた入り口に戻ってきた。一周させられている気が、ではなく、ガチで一周しちまったみたい。


「ただの通路でしたね」


 お鶴さんが、皆の感想を口にすれば、カグヤが顎に手を当てて考え込む。


「普通に考えて、侵入者対策の一つでしょうね。たぶん、どこかにお宝がある部屋へ通じる通路が隠されているに違いないわ」

「サル、スキャンしてわからね?」


 問うてみると、我らがメカニカルゴーレムは首を横に振った。


『残念ながら、ここでは表面のサーチはできますが、その奥までは確認できません』

「もしかしたら魔法的な防御が施されているかも」


 カグヤは言った。


「入り口に穴を開けたみたいな、ワームで床や壁に穴を開けられないように、防御魔法が通路一帯にかけられているかもね」

「自力で、仕掛けを解けってことか」

「その仕掛けの取っ掛かりすら、私たちは見つけていないけどね」


 肩をすくめるカグヤである。とりあえず、探そうぜ、ということで、もう一周しながら、何か仕掛けがないかを探す。

 床や壁に何か、スイッチみたいなものはないか。何か一カ所だけ他と違う作りのものがないか、などなど。


「ないー!」


 またも入り口に戻ってきたぞ。通路には、何もなかった。出っ張りも引っ込みも、紋章の類いや、物さえなかった。唯一あるのは、照明だけで、こちらがランタンなどの光源なしでも視界が開けて、歩けたことくらいか。


「唯一、違うものといったら、この入り口前なんですよね」


 お鶴さんが、指さす。


「たとえば門。その開閉装置。門の反対側にある柱とか」

「柱ぁ?」


 あ、本当だ。こんなところに柱なんてあったのか。入り口から入って真正面から見ると、背景の壁に溶け込んでいるように見えて、普通に気づかなかった。横から見ると、確かに壁にくっついていないから、裏に入れるよな。


 ……まあ、柱で見えない裏に回れば、そこに通路が隠されているわけでもなかったけど。


「なんかここだけ陰ができてるんだな」


 他は照明で影ができないけど、この柱の裏だけ陰がある。


「何かあるね」


 太郎がオレの足元でしゃがんだ。


「柱の裏、何か小さい人? みたいな絵が――」


 柱に彫られた紋様らしきものがある。短足の割に手が長いそれは、ドヴェルグか?

 イッヌが何事か言い出した。


「何だって?」

「イッヌさんは、光を当ててみたら、って」


 言葉がわかるらしい太郎が、イッヌのそれを通訳した。光?

 そりゃ、この人型は陰にあって、光を浴びていないが……それで何かあるのか?


「やってみましょ」


 カグヤが口元を緩めた。


「地底暮らしのドヴェルグだもの。光を当てたら、何か変化があるかも!」


 ……それって、弱点浴びせるようなもんだと思うんだが、どうなんだ?


「お鶴さん。ランタン」


 他に手掛かりになりそうなものもないし、ダメでもともと。


「お……?」


 光を小人の紋様に当てたら、何やら音がし始めた。これは当たりか?

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