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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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第52話、桃太郎、侵入口を作る


 ドヴェルグの宝物殿に入るための入り口を探すわけだが……。


「やっぱ壁じゃね、これ」


 オレは、宝物殿とされる遺跡、その壁を見上げる。入り口じゃなくて壁だから入らないんじゃねえの?


 試しにサルにストーンハンマーで壁を叩く、もといぶっ壊させようとしたが、カーンといい音だけして弾かれた。


 いかにも岩でできた遺跡の壁に見えるが、金属っぽい音がしたな。ついでに無傷だ。凄い岩。本当に岩かよ……。


「ドワーフ連中が、中に入ろうとして突破できねえわけだ」


 カグヤとお鶴さんが、何か仕掛けがないか壁の周りの土砂や岩を探している。……つっても、そういうの、前にきた奴らが一通り探したと思うんだけどな。


 太郎は太郎で、イッヌと壁を見上げて何やら話している。……あいつ、通訳なしでも普通に会話しているみたいなんだよな。何気にすげえよな。


『モモ。お暇ですか?』

「お前も暇そうだな、サル」


 壁をぶち壊そうとして、無理とわかった途端、土木マシーンにもなれそうなサルも、しばらく様子見のようだ。カグヤとお鶴さんの調査の邪魔をするわけにもいかないしな。それはオレも同じだけど。


「どうだ、サル。スキャンで何かわからね?」

『何か、とは非常に曖昧ですね。壁の構成や成分を説明すればよろしいですか?』

「そういうのが聞きたいんじゃないってことは、わかるよな」

『まあ、そうですね』


 このサルは、メカニカルゴーレムだが、中身は異世界モンキーの思考で動いている。なかなか意地の悪い、いや皮肉っぽい言い回しを好む。


『ちなみに、この辺りの岩と、壁の成分は同一のものです』

「聞いてねぇ……。いや、今なんつった?」

『聞いていないと』

「それはオレのセリフ! お前、この周りの岩と遺跡の壁が同じって言ったか?」

『言いました。もう一度、復唱しましょうか?』


 そっちはいい。きちんと彫り込み、紋様が刻まれた宝物殿の壁と、この辺りの地肌、それを構成している物質が同じっていうのは意外だ。


 加工したものと無加工で、違うものに見えるけど、そんなことはなくて同一のものなんだな。


「ちなみにだけどサル。この岩ってどっから続いていた?」

『モモ、ワタシの話、聞いていましたか?』

「今はオレが聞いているんだが?」

『ええ、この谷底辺りの大半が同一の岩です。それがどうかしましたか?』

「なに、ちょっとした思いつきだ。ここにくるまでにワームに襲われただろう?」

『襲われましたね。……ああ、なるほど、そういうことですか』

「まだ言ってないんだが?」

『察しました。割と名案かもしれません』

「割と?」

『割と。やはりやってみないことには、単なる思いつきに終わるかもしれませんし』


 はっきり言うなあ。らしいって言えば、らしいけど。


「やるか」

『そうしましょう』


 オレとサルは、入り口探しに夢中になっている面々から離れて、少し引き返す。


『来ました』


 サルが知らせる。


『例のワームです。二……三体』

「一体で充分なんだがな。他は倒して、一体だけ誘導するが……あいつら音に反応するんだっけ?」

『目はないようですが熱を感知する器官があるようです。一番に周囲を探知するのは音ですが』


 駄弁っている間に、紺色の巨大ワームが地面を突き破って出てきた。おーおー、ミミズってのは自身の粘液でトンネルを作って地面の中を進むって聞くが、岩を砕いて進むとか、ワームは似ているで全然別モンなんだな。


「とりあえず、下がるぞ」

『了解です』


 わざと足音をたてながら後退。距離が近いヤツが体を伸ばして突っ込んできた。あらあらまあまあ、お盛んなことで。


「気持ち悪いんだよ!」


 びっしり生えた牙を見せつけて飛び込んできたワームを、銀丸で一閃。ぶしゃあ、と飛び散る、ワームの体液。


『早すぎませんか?』

「我慢がねえやつを間引いたんだよ」


 あと二体。後退するオレとサル。結構、面倒だなあ。というか全身出てきたワームが大蛇並にでかくてちょっと引く。


「桃さん!」


 イッヌに乗った太郎がやってきた。オレはワームに注意しつつ、太郎に手を振る。


「来るな! 離れてみてろ!」


 それを聞いて、イッヌが立ち止まった。オレらが本気を出せば、苦戦しない化け物をわざわざ連れていることに違和感を抱いたんだろう。


 宝物殿の壁の近くまで、ワームを引きつける。カグヤとお鶴さんも気づいたようだが、太郎が、オレがわざとワームを連れてきたことを説明して、遠ざけるよう言った。何をしようとしているのか察したか、ただ指示を守っただけかわからんが、いい判断だぞ、太郎。


 ワームはその鼻先――こいつは鼻があるかは知らんが、近くにいるオレたちの方に引き寄せられている。正面を外れ、距離をとって静かにしていれば、他の仲間たちには見向きもしないようだ。


『モモ、そろそろ』


 壁に到着。さあて行き止まり。追い詰められてやったぞ、ワームども。オレは銀丸の束で壁を叩く。


「さあ、おいでおいで、かかって来い来い!」


 ワームが縮こまる。獲物に飛び込んでくる前の態勢。さあ来い、壁とキスさせてやんよ!


 ジャンプするようにワームの頭が突っ込んできた。ほいっと! オレは右、サルは左へ避けて、ワームは宝物殿の壁に激突した。一体は、表面を溶かしながらズリ落ちたが、もう一体はそのまま壁へ体を突っ込ませた。猛烈な勢いで壁に穴を開けて中に入っていく。ワームって地中だとスピードが上がるんだっけか。ほんと、モグラやミミズとは全然違うな。


 とりあえず――


「サル、その掘り損ないを潰――」


 オレが言い終わる前に、サルが穴を掘らずにぶつけてズリ落ちたマヌケにトドメを刺した。ワームの風上にも置けないやつだ。そしてサルのお察し力の高さに感心。


「離れろよ。壁に突っ込んだワームが反転して飛び出してくるぞ!」


 直後、本当にワームが遺跡の壁を突き破って出てきた。


「お役目ご苦労さん!」


 斬撃! 一刀両断! 出てきたところを仕留めて、一件落着っと。静かになったところで、サルがその長い長い体を引っ張り出した。

 改めて壁を見れば、ぽっかりとワームの直径1メートル強の大穴が二つ開いていた。穴の奥が明るい。


「さて、入り口か否かはとにかく、侵入口は確保できたかな?」


 まだ誰も入っていないとされるドヴェルグのダンジョンが、お目見えってな。

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