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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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第44話、桃太郎、瘴気と出くわす


 底の毒沼、その周りの一カ所に通路らしきものがあったから、オレたちは探索に向かう……。


「サル、頭、大丈夫そうか?」

『ギリギリ入れそうです』


 2メートルモードになるメカニカルゴーレム。


「まあ、天然の洞窟だったら、出っ張りとかで引っかかるかもってところだが――」

「どう見ても、人工の通路よね、ここ」


 カグヤが腕を組む。

 見つけた通路は綺麗に四角で切られていて、明らかに人か亜人などの手が加えられていた。


「サイズ的にオーガではなさそうだな」


 でかい個体だと、通れなさそう。


「神殿っぽくはねえな。祠への通路だったり?」

「毒沼が近くにある場所に、祠なんて建てるかしら?」

「その毒沼がある時点で、どんな建物だってアウトな気がするぜ」


 さあて、進もう。……っと、イッヌに乗っているから、天井が低く感じるぜ。


 石を綺麗に削り出した、というには綺麗に整い過ぎている壁面だ。無機的で真っ直ぐ伸びている通路。


「もしかしたら、あの沼は最初は毒沼じゃなかったかもしれないな」

「どうしてそう思うの……? いや、いい。私にもわかってきた」


 瘴気を感じる。イッヌも進みながら、警戒している。前方から嫌なニオイが漂っている。


「この先、よからぬものがあるな」

「これ浄化したほうがよいものだと思う」


 カグヤが眉をひそめつつ、手で鼻を守る仕草をとった。


「瘴気の中に、普通に何か腐っているような臭いが混じってる……」


 通路が途切れる。広い空間に出たのだ。


「うっ……」


 オレも思わず鼻を押さえた。大きな何かが中に鎮座していた。獣――巨大生物の死骸のようだった。

 肉は腐り、そして目に見えるほどドス黒い瘴気が漂っていた。イッヌが深い、いや怒りを滲ませる声を発した。


「よしよし、イッヌ。何だ、落ち着け……」


 ナデナデしてなだめるオレ。おい、サル――


『イッヌが言うには、自分をおかしくした瘴気と同じものだと言っています』

「自分をおかしくした?」


 カグヤが、何のことと言わんばかりの顔になる。オレだってさっぱりだが、もしかして――


「お前が、アイバンの町を襲った時のことか?」


 そういやお前、なんであの時、暴れていたんだ? やたら周囲のものを襲っていた感じだったけど。


『イッヌもわからないと言っています。何故正気を失ったのか――正気と瘴気を掛けたのですか? 面白くないですよ、イッヌ』

「おい、通訳。話の途中で勝手に脱線すんな」

『失礼。イッヌ曰く、自分が正気を失ったのは、あの瘴気に触れたせいかもしれないだそうです』

「瘴気と正気をかけたのか? お前、正気か?」

「桃ちゃん」


 カグヤさん、呆れ顔。へいへい、ほんの冗談じゃねーか。


「とりあえず、触れたら正気を失う瘴気ってんだろ? 危ねえから、カグヤ。いつもの妖光でパッと祓ってくれよ」


 正気を失っていたイッヌを元に戻した月の光なら、ここも浄化できるんじゃねえの?


「妖光って、そもそも浄化魔法じゃないんだけど。でもまあ、そうね、やってみるわ」


 イッヌを助けた前例があるからな。オレとイッヌは、光を浴びないように通路まで後退。サルには妖光は効かないので盾代わりに前へ。そしてカグヤが魔法を使った。

 あまねく光が謎生物の死骸を照らし、漂っていた瘴気を流すように消していく。おお……。


「空気がよくなったな」


 死骸から腐った肉がボロボロと剥がれて、塵となって溶けていく。うっ、あっち側の空気はちょっと吸いたくない……。


『危険な成分は検出されません。浄化されました』


 サルが報告した。こういう時、目で見えないものも調べられるってありがたいよな。無味無臭の毒ってものもあるわけだから。


「結局何だったの?」

「わかんねえ」


 俺たちは、骨となった謎生物だったものに近づく。……綺麗に骨だけになったな。


「竜かしらね、これ」

「外にいた連中の親だったりして」

「瘴気が毒となり、沼とあそこにいた竜たちを汚染したということかしら」


 カグヤが推測したが、たぶんそんなところじゃないかな。イッヌも瘴気絡みで凶暴化したみてぇだし。……いや、フェンリルって伝説じゃ、もともと凶暴なんじゃなかったっけ?


「その瘴気は、どこから出てきたんだ?」

「怒り、憎しみ、恨み、そういった負の感情や精神が呪いや毒になるって話はよく聞く話ではあるけどね」

「呪いや毒ね。そっちなら何となくわかる気がする」

「それより……気づいている? 桃ちゃん」


 カグヤが警戒する。ああ、もちろん。


「見えているよ。また瘴気が出てきやがった」

『瘴気の発生源は、あの槍からと思われます』


 サルが言った。槍――竜の骨の向こうに、黒々しい槍が床に突き刺さっているのが見えた。


「瘴気を生み出す槍ってか? オレたちには関係のない代物だが、このまま放置していたら、結局この辺りは瘴気に汚染されるか?」


 叩き折れば、瘴気は治まるか? あんまり近づきたくないんだが。……と、またイッヌが何か言っている。


『イッヌが提案しています。あの瘴気の槍を、食べて処理すると』


 サルが通訳したが……おいおい、マジかよ。


「イッヌ、お前、槍まで食うつもりか? なんて食い意地が張っているんだ。あんなものより美味しい肉をたくさん食べさせてやるから、あんな危なそうなものはやめとけ、な?」

『イッヌ曰く、あれを食べたら、おそらくまた自分は凶暴化するだろうと言ってます』


 オレの言うことは無視か、イッヌよ。オレはお前のお母さんじゃなかったのか。ナデナデ、もふもふ。


『その時、カグヤが妖光を向けてくれれば、瘴気に取り込まれなくて済む、と申しております』


 イッヌ……! お前はなんて献身的に体を張ろうとするんだ。槍まで食べるとか言ってごめんよー。


 というか、イッヌが前に凶暴化したの、そういう瘴気ばらまく何かを食ったせいじゃね?

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[一言] 拾い食いはいけません。
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