表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/121

第40話、桃太郎、雷神のお宝を見つける?


『イッヌさんが言うには、そのハンマーは、「ミョルニル」によく似ているそうです』


 サルが、イッヌの声を通訳して、オレたちに言った。


 持ち手が熱くて持てなかった片手用ハンマー。宝物に入っていたから、何か凄い武器やアイテムの可能性があったわけだが、その正体の糸口は、意外にもイッヌだった。


「ミョルニルってあれか? トールハンマーとかいう、雷神トールの持ち物だっていう」


 北欧神話だっけか。前世、マンガかゲームで見た憶えがある。イッヌが吠えた。


『さすがは母上、とイッヌは申しております』


 サルが言われるまでもなく通訳した。……毎度思うけど、何でイッヌはオレを、母上呼びなんだろうか。

 カグヤがオレを見た。


「で、ミョルニルとかトールハンマーって初めて聞くけれど、それ有名なの?」

「前世じゃ、割と有名だと思う」


 特に日本人で、ファンタジーをかじった奴ならどこかで名前くらいは聞いているくらいは。元が何なのか知らないかもだけど。


 ミョルニルは、北欧神話の神、トールの愛用としている武器で、大きさは変幻自在に変えられて、どんなに乱暴に使っても壊れない。


 また投げると、必ず目標にしたものに当たった上に、戻ってくるとかいうチート能力を持つ。まあ、ドワーフが作って神様に献上した品物だから、チートなのもわからんでもない。


 と、イッヌが何か言ってる。サル、通訳。


『イッヌが申すには「粉砕するもの」の意味があり、それをぶつけられれば一撃死だそうです。唯一、一発を受けて死ななかったのは、弟のヨルムンガンドのみだそうで』

「なぬっ……!」


 変な声が出た。イッヌ、お前、フェンリルっていうからこの世界の大狼だと思っていたけど、地球世界のフェンリルだったのか?


「どうしたの?」


 太郎が怪訝な顔をするから言ってやる。


「イッヌも、前世……でいいのかはわからんが、まあ前世持ちかもって話だ」


 この世界固有のフェンリルじゃなかったのかー。ということは、元はわからないが太郎も含めて、全員何がしら、この世界ではない異世界出身ということになるのか……。


 弟がヨルムンガンドって……アレだろ。世界蛇とか言われる滅茶苦茶デカいやつ。あれ、うろ覚えだけど、雷神トールの最期ってヨルムンガンドと相討ちじゃなかったっけ。


 ヨルムンガンドが一発は耐えたとイッヌは言ったけど、トールと対決となれば、このミョルニルを何発か食らったってことだろう。凄ぇと思うけど、イッヌにとっては弟殺した武器なんだよな、って、熱っ!


「桃ちゃん……?」


 カグヤが、ハンマーに手を出したオレを白い目で見る。忘れていたわけじゃねえって!


「しかし、こんなの、持てねえだろ……」


 重さが、ではなく、柄が熱くて。つーか、柄の部分が赤いなぁ……。普通に綺麗、という感想は触った後では、触るな危険って色合いに見えてきた。


 イッヌが何か言っている。通訳するサル。


『このハンマーを持つには、ヤールングレイプルという鉄の小手が必要なのだそうです』

「鉄? それでこの熱さを防げるもんなのか?」


 どうです専門家のお鶴さん? クラフター様に聞いてみれば。


「何かしら魔法の効果があるんでしょうね。立派な名前がついているようですから、ただの鉄の小手ではないと思いますよ」


 お鶴さんのご意見でした。さて。


「せっかくのお宝なのになぁ」

「宝箱ごと回収して、その、やーるん……何だっけ?」


 カグヤが言いかけて、名前に詰まった。長い横文字が時々だめっぽい月面美人。


「ヤールングレイプルな」


 収納魔法かアイテムボックスに入れて、使えるようになるまで保存しておくってのはありだな。



  ・  ・  ・



「お宝は回収した。このアジトにも、オーガは残っていない。シドユウ・テジンの大鬼どもは退治されたと見ていいだろう」


 オーガテリトリーの砦、その中庭にいる俺たちニューテイルとおまけ。


「ここで問題だ。オレたちはダンジョンにいる。第一の目的である鬼退治は済んだわけだが、第二の目的であるダンジョン探索はまだだ。……そうだよな、カグヤ?」

「ええ、ここからがむしろ本番よ」


 異世界漂流物系のお宝目的のカグヤである。しかし――オレはゴールド・ボーイを見やる。


「お前と熊は、オーガ退治が目的で一緒に来たわけだからな。ここから先はどうする? 別に帰っても文句はないし、オレたちに付き合ってもいいけど」

「確かにオーガ退治は済んだ」


 ゴールド・ボーイは腕を組んだ。


「ただ、君らを残して先に帰って、そのまま帰ってこないとかあったら寝覚めが悪いからな。とりあえず、探索に付き合うよ」


 ちら、と太郎を見る。


「子供連れでダンジョン探索は、あまり褒められたものじゃないしな。実際、上位オーガにさらわれているわけだし」


 しゅん、とする太郎とお鶴さん。オレは肘でゴールド・ボーイを小突く。


「馬鹿。男の子を前にさらわれたとかデリカシーのないこと言うんじゃねえよ。武士の心ってもんがわかんねえのか?」

「ブシ? いやわからんが」

「戦士の心、騎士道でもいいや。とにかく、本人が一番気にしているところに、傷口に塩を塗るような真似すんなよ」

「う、すまん」


 詫びるゴールド・ボーイ。いやまあ……。


「お前の言うことは、いちいち正論だけどな」


 俺は太郎に向き直る。


「お前はどうだ? ぶっちゃけ疲れているだろうし、カグヤはああ言ってるが、一度ガーラシアの町に戻るって手もある」

「……ガーラシアまで片道三日だよ?」


 太郎は真面目に言った。


「どうせまた戻ってくることになるんなら、今探索しちゃったほうが効率はいいと思うよ」


 そもそも――


「今日のところは、ここで一泊するか、ダンジョンの外で野宿するかの二択でしょ? 安全が確保されたここと野宿じゃ、どっちも大して変わらないよ」

「確かにな。……だそうだが、他に何か意見がある奴は?」

『ありません』


 サルが即答し、ゴールド・ボーイの連れである熊も首を横に振った。


 オーガのアジトは他のモンスターが入ってこないし、ダンジョン内に時々あるセーフルームみたいなものだろう。ここで一泊はありだな。

 色々あったし、太郎も疲れてるだろうし。大休憩つーことで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ