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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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第29話、桃太郎、鬼退治に行く


 何か話を聞いたら、ゴールド・ボーイと熊も、シドユウ・テジンとかいうダンジョン攻略についてくることになった。


 これが普通のダンジョンだったなら、いきなり同行と言われても『ちょっと待てや』となるところだが、オーガどもの巣窟も兼ねていると聞いたら、助っ人もいいか、という気分になる。基本助っ人。ニューテイルに加入ではない。


 これでもオレは、前々世じゃ鬼ヶ島に乗り込んで、奴らの根城をぶっ潰した経験者だ。あの世界とこの世界じゃ、細かなことを言えば違うんだろうが、だいたい生き物ってやつは考えることは、世界が違おうが根本はあんまり変わらないもんだ。


 その経験則から言うと、基本、オレは鬼のアジトに乗り込む時は可能な限りの情報を集めて、ある程度の手順や作戦を考える。脳筋で攻略できるほど、根城ってのは簡単じゃねえんだ。


 表に出てくる鬼は、基本パワー頼みだが、拠点となると途端に狡猾になる。罠とか大好きなんだ、あいつら。致死性の罠はほとんどないが、捕獲系の罠が多い。侵入者は殺さず捕まえて、玩具にしたり喰ったりするからだ。


「とりあえず、メンバー確認な。オレ、カグヤ、イッヌにサルだ。太郎、今回はドンパチ不可避だから、お前は連れていかねえからな」

「う、うん」


 太郎は、どこかホッとしたように頷いた。何だかんだ、生後三、四カ月くらい。いくら聖杯パワーで成長したからって、体は五歳児。そんなガキを連れて行くわけにはいかない。


「で、お鶴さん。太郎の面倒を頼むわ。なにぶん相手はオーガだ。お鶴さんの攻撃は、通りずれえと思う」

「はい」


 いつもにっこり穏やかなお鶴さん。これで弓とか、ギミック付き武器を使って戦闘はできるが、相手は巨漢のオーガ。生半可な物理攻撃は通用しないから、お鶴さんには相性が悪い。太郎と一緒にお留守番をお願いしておく。


 シドユウ・テジンまで、ガーラシアから三日くらいは掛かるという話だから、道中は一緒に行くとして、準備する。

 というところで、ゴールド・ボーイと熊と合流する。


「で、確認するけど、おたくら、オーガと戦ったことはあるか?」


 何といっても知り合ったばかりだから、実力ってのものがわからない。装備と見た目からすると上級冒険者の貫禄はあるが、それで判断がつくわけではない。見た目だけなら、オーガともタイマン張れそうだが。


「上位のオーガはないが、下位のオーガなら」


 ゴールド・ボーイは答えた。熊もそうらしい。上等だ。少なくとも雑魚は任せても一人で倒せるだけの実力はあるってことだ。これで雑魚にも苦戦するようなら、同行お断りするところだったんだけどな。


「ちなみに、モモ。あなたの冒険者ランクは?」

「Aだ。お前は?」

「同じくA。ク・マはBランクだ」


 ランクはある程度の物差しで、判断材料ではあるが、まあ昨日今日の素人じゃないのは間違いない。よかったー、見た目だけ上級装備で固めた素人じゃなくて。



  ・  ・  ・



 シドユウ・テジンのオーガについて情報が集まったところで、オレたちニューテイルは、ゴールド・ボーイと熊を連れて出発した。


 目的地を目指して、のんびり移動。道中は、たまに出現する魔獣を蹴散らして、時間になれば休んだり、飯を食ったりした。


「旅の道中が、どうしてこんなに豊かな食事なのだ!?」


 ゴールド・ボーイが、ニューテイルの食事風景に驚いていた。そりゃ、こっちには旅人垂涎の品、魔法の石臼がある。適切な方法で回せば、幾らでも食べ物が出るってものさ。


「食事は大事だ。英気を養うってもんよ」


 この石臼のおかげで、オレたちは飢えることはない。ゴールド・ボーイも熊も、節約質素とはかけ離れた野戦食に満足そうに舌鼓を打っていた。


「普通に町で食うより、美味いしおかわり自由だぞ」

「最高だぞ!」


 ゴールド・ボーイは喜んでいた。太郎は、イッヌの分も含めてどんどん食事を作り出していた。どうしてゴリゴリすり潰したら、粉ではなく食べ物が出るか謎。昔話アイテムも、大概チートだよな。


 三日の道中、野良の魔獣と戦えば、互いの戦い方というのも見えてくるもので、ゴールド・ボーイ、そして熊のスタイルもわかってきた。


 ゴールド・ボーイは、大斧を使った、一撃必殺型。直撃すればオーガの首どころか、胴体だって真っ二つにできそうだ。


 熊は近接格闘型。熊獣人ってことだけど、元の熊と同様、素早くパワーがある。飛び込んできた狼魔獣に対して、ジャブに見せかけたストレートで、その顔面を粉砕していた。体がデカいこともあって、結構リーチがあるんだよな。はっきり言えば、剣を持ったオレでも危ない射程がある。

 オーガに対しても、金棒やハンマーは危ないが、それ以外ならタメで殴り合えるだけのものがあるようだ。クマって恐ろしいな。


 そんなこんなで三日目。シドユウ・テジンに近いという廃村に、オレたち一行は到着した。

 何で廃村になったかは、言わずもがなだな。オーガどもの仕業だ。


「もし、旅のお方――」


 若い娘が一人立っていた。フード付きのマントを羽織っている。ちらと覗く肌は白かった。


 ……何でここに人がいるの? ここ、廃村じゃなかった? まさか、幽霊とか言うんじゃないだろうな。


「ゴールド・ボーイ、ここ人がいないんじゃなかったか?」

「そういう話だったが……なにぶん俺も、最近ここにきていなかったからな。もしかしたら、彼女もまた旅人なのではないか?」


 なるほど。確かにフード付きのマントなんて、旅人の格好だ。普通の村人がするものじゃない


「どうか、お助けください」


 か細い声で娘は言った。目が見えないのか、いまいち方向が定まっていない。


「大事な人が連れ去られてしまったのです……。どうか、どうか」

「連れ去られたとは?」


 ゴールド・ボーイが、娘に近づくと心配するように声を掛けた。……もちっと用心しようやゴールド・ボーイ。いたいけな娘に見えるが、怪しいぞコイツ。


 娘が言うには、家族がオーガたちにさらわれたのだと言う。その行き先は、シドユウ・テジン。


「どうか、どうか――」

「心配しなくていい、娘さん。我々は、シドユウ・テジンのオーガを討伐にきたのだ」


 ゴールド・ボーイが安心させるように優しく言った。気遣いのできる男だ。だがちったぁ、怪しめよ。気づいてるか? イッヌだって、お前より気づいているぞ。


「話はわかったけどよぉ。それでオレたちを騙せると思ったら間違いだぜ? 鬼さんよぉ?」


 その瞬間、イッヌが娘に飛びかかった。しかし娘は機敏な動きで、後ろへ飛び退いた。


「オーガが若い娘を残していくかよ。そんな鬼のニオイをプンプンさせてちゃ、オレらは騙せないぜ」

「フフ――バレてしまったわねぇ。でも、どうせアジトに乗り込むつもりだったみたいだから、別にいいわ」


 フードをとった娘。その額には二本の角。人に近い体格のオーガ――上位種だ。ご機嫌だねえ、こうも歓迎が手厚いってのはさ。

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