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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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116/121

第116話、桃太郎、前々世の因縁と遭遇する


 カラフル鬼兄弟を四体、撃破。残るは長兄の赤鬼のみ。

 こいつはこいつで、オレへの憎悪を滾らせていらっしゃる。


「許さん……! 許さんぞ、桃太郎ォォ!!」

「青鬼混ざってるんじゃねえか、赤鬼よ」


 オーガ並に巨大化した赤鬼が飛び込んできた。そうそう、絵本とかで書かれている鬼らしくなってるじゃねえか。


「ここでも! ここでも我らの邪魔をするのかっ!」

「そうだよ。お前らが人間に悪さする限り、オレは現れて邪魔をするんだよ!」


 振り下ろした銀丸が、赤鬼の爪に弾かれる。その瞬間、奴は左手に金棒を出した。それを念力で飛ばしてくる!


 躱せない! とっさに魔力を集めて防御。吹っ飛ぶオレ。だが痛かねえぞこの野郎。


「桃ちゃん!」

「っ! 心配すんなカグヤ! かすってもねえよ」

「ほう、これで無傷なのか!」


 赤鬼がニヤリとすると、金棒を生成すると放り投げてきた。当たれば人間ミンチだろうが、さっき当たってやったのは至近からの不意打ちだったからだ。距離がありゃ、回避余裕よ。


「それくらいでイキがるなよ、赤鬼よ。鬼ヶ島じゃ、お前程度中堅。上の奴はもっと強かったぜ!」


 ま、不意打ちでオレを吹っ飛ばしたことは成長したと認めてやるよ。ただ、あれでオレの防御を抜けないんじゃ、まだまだだな。


「つーことで、お前のボスのことを吐いてもらおうじゃねえか、赤鬼」


 飛んできた金棒を、右へ左へ歩いて躱しながら、赤鬼との距離を詰める。鬼さん、こちら。歩いているオレに当ててみなってんだ。


「ぐぬっ。何故、お前なんかに話さねばならぬっ!」

「わっかんないかなぁ? お前が雑魚だからだよ」

「その雑魚の攻撃で吹っ飛んだお前の方が雑魚じゃないのか? 呵々!」


 大笑い。そのノロマな金棒をオレにぶち当ててから笑えってんだ。不意打ちの一発以来、全部外れてるんですが?


 オレは飛んでくる金棒の一つを下から叩き、勢いを殺して回転させて落ちてきたところをキャッチすると、思い切り投げ返してやった。


「ごふぅっ!?」


 金棒は、見事赤鬼の顔面に直撃して、その場に倒した。


「言ったろ、お前は雑魚だって」


 倒れた赤鬼のもとに近づく。ピクリともしないが……おおい、生きてるかー? うん――


「死んでる」


 オレはカグヤたちの方を向いて報告した。カグヤとサルが顔を見合わせている。


「黒幕の正体を知りたかったんだけどな……と」


 気配を感じた。赤鬼よりさらに強い鬼の気。これだけやってオレたちを倒せなかったから、いよいよ本命さんがご登場ってか。


『誰かと思えば、貴様か、桃太郎』


 地獄の怨霊もかくやの声を響かせて、ぼう、と黒い邪悪の根源が現れる。おやおや、随分と懐かしいじゃないか。


「鬼ヶ島の総大将じゃねえか?」


 前々世で戦った大鬼。オーガジェネラルより一回り大きく強い、侍甲冑の鬼武者。そいつの声にそっくりだが、姿が人並み程度に小さく、またぼやけた黒い火の玉のような。


『我は霊鬼。貴様によって殺された、死せる鬼よ。姿は変わろうとも、我は貴様に殺されたあの日のことを一日たりとも忘れておらぬぞ』

「死んで恨んだ成れの果てか。その論理で言えば、お前のほうがオレより恨みを買ってるんじゃねえの?」


 霊鬼といえば、確か死んだ鬼って伝説だったよな。自分を殺した相手を恨み、執念深く追い続ける復讐の鬼でもある。死んだ後もそこに留まり続けて不幸を撒き散らす強力な鬼だったはずだ。


「つーか、お前を殺したのは別の世界の鬼ヶ島だろ。なんで異世界に来てるんだよ?」

『知れたこと。貴様を地獄に葬るためよ!』


 うん、意味がわからん。前々世のオレはその世界で死んでるぜ? 死んだ鬼とまともな会話ができると思ったら駄目だな。


「まあ、いいや。こっちの世界にも迷惑かけてるんだから、退治するだけだ」

『出でよ、三鬼将!』


 霊鬼の声を受けて、三つの邪気が渦巻く。召喚しやがったな。


『お呼びにございますか、霊鬼様。邪鬼はこれに』

『羅刹、推参』

『般若、参りました』


 見るからに幽霊みたいな小鬼、邪鬼。

 長身かつ筋肉たくましい武人然とした大鬼、羅刹。

 二本角の鬼女、般若。


 ……こいつらか。オーガジェネラルの下で、暴れまわっていた上級オーガってやつらは。上級鬼だろ、こりゃそこらの騎士や冒険者が敵わねえわけだ。


『我が宿敵、桃太郎とその一味を始末せよ!』

『ははっ!』


 三体の鬼は、振り返った。さすが上級鬼。威圧感パネェわ。さすがのオレも、三体同時に相手は、ちと骨が折れる。


「つーわけで、手を貸せ、お前ら」


 オレの両隣に、イッヌ、そしてサルが立った。


「カグヤは援護。イッヌは邪鬼。サルは般若を頼むわ。一番強い羅刹はオレがもらう」


 前々世基準だから、もしかしなくても違うかもしれんけど。赤鬼たちは、ほとんど変わってなかったけど、あれはこっちの世界も前世同様、弱い奴としか戦わなかったから、強くなる気概がなかったんだろう。


 鬼たちが一斉に動いた。

 羅刹が瞬間移動の如き踏み込みで、オレに肉薄した。


「!?」

『もらったっ!』


 腰に下げた刀が刃を見せた時、すでに標的を切っている。……ひぇぇ、相変わらず、速えな。


『これを躱すか! モモタロウ!』

「前々世で見ているからなぁ、その太刀は!」


 銀丸で反撃。ガキンとぶつかる剣と刀。


『なるほど。霊鬼様が宿敵というだけの強者のようだ……!』

「オレのことを覚えていねえのか?」

『我に前世の記憶は、ない!』


 羅刹が、その大力を活かした斬撃を繰り出す。受け――じゃなく、滑らせ、躱す!


『よく引いた。でなければその剣、切り落としていた!』

「折られてるからな!」


 前々世で。オレも大概だけど、この羅刹もまた力が凄い。


 前世を覚えていない、知らないとなると、あまり前々世でのこいつとの戦闘経験に頼ると、裏をかかれるかもしれないな。剣筋は見極めたつもりだったが、この羅刹とは別物と考えたほうがいいだろう。

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