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異世界転生桃太郎 オレに侯爵令嬢なんて無理だから婚約破棄上等! それより鬼退治だ!  作者: 柊遊馬


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第107話、桃太郎、ガーラシアの町に戻る


 竜宮城で過ごし、故郷へ帰った浦島太郎は、こんな気分だったのか。

 気分的には数日だった東の海遠征も、それなりの時間が経っていたようだった。


 ガーラシアの町を目指してスキーズブラズニルで飛んでいたんだが、眼下を見下ろすと、以前はあった集落が廃墟になっていたり、あるいは地形が殺風景になっていたり変化があった。

 舵をとるサルが訪ねてくる。


『降下しますか?』

「いや……。この辺りは以前上を通っただけで、知らないところだからな」


 あからさまに焼け出されて困っている人がいれば救助するが、そうでないなら、見知った場所に到着してから確認したほうが、面倒もないだろう。

 そもそも、この地方が普段から抱えている問題かもしれんし、割と珍しくないことかもしれないしな。世界は広いもんだ。


 そうやって航行することしばし、ようやくガーラシアに戻ってきたのだが……。


「変わってるな……」


 町の周りが、まるで戦争でもあったような穴や焦げた後が散見された。町自体は健在だが、物々しい雰囲気があった。


「何かあったっぽいな……」


 果たして蓬莱でどれくらい過ごしたんだろうか。わずかだが胸騒ぎがしてくる。町のはずれに降りて、そこから徒歩で移動する。


「ガチで戦闘があったな」


 死臭と焦げた臭いが、わずかに鼻腔をくすぐった。カグヤが唸る。


「戦争?」

「かもな。盗賊が攻めたって規模じゃなさそうだ」


 それに、この臭い……。

 イッヌが何事か言った。太郎が通訳する。


「魔獣の群れじゃないかって、イッヌさんが言ってる」


 ウルフ系、ボア系、ゴブリン、オーク、リザードマンにオーガ……! 鬼どもまでいるのか。


「どうりで粗末な武器が落ちているわけです」


 お鶴さんが、石斧を拾った。大きさからして、ゴブリンが使っていただろうか。


「どっかのダンジョンでスタンピードでも起きたかな?」


 魔物の大群による攻撃。それがどこぞの組織ならともかく、そうでなければダンジョンで極稀に起こるモンスターの吐き出し現象の可能性もある。


 町に近づく。外壁には見張りがいて、まだ警戒態勢にあるようだった。そしてオレたちを確認したのだろう。少しざわついたかと思ったら、門の方から人が出てきた。二人、名前は忘れたけど、冒険者だ。ギルドで見た顔だ。


「モモさん!? 今までどこにいたんですか!?」


 息をきらせてやってきた冒険者。最近戦って、メンテしていないのか、やや薄汚れていた。

 それはそれとして、いきなりご挨拶だな。まあ、それだけ余裕がない状況なんじゃないかと察しておく。


「東の海へ大遠征ってやつよ。ちと時間はかかったが、やっと戻ってこれたんだ。……何があった?」

「何がって……聞いてないんですか!?」

「知ってたら聞かねえだろ。こっちの話を聞いてたか?」

「すいません……」


 ちょっと睨んだら二人は萎縮してしまった。こちとら特Aランク冒険者だ。冒険者では、ランクが物を言う。


「で、何があったんだ?」

「オーガジェネラルが攻めてきたんです」

「!」


 それは、いわゆる鬼将軍……! オーガの将軍。そいつが襲ってきたという。


「最近まで、ちょくちょくオーガの集団が攻撃を人間のいる国に仕掛けてくることはあったんですが、それは本格的な攻撃の準備運動みたいなもので――」

「シドユウ・テジン……」


 それとレッジェンダ王国王城へのオーガ集団の攻撃……。


「そうです! それも本格攻撃の前触れだったんです!」


 冒険者二人の声は大きくなる。


「奴らは力を溜めて、本格的に人間に戦争を仕掛けてきたんですよ!」

「いつからだ?」

「はい……?」


 オレは声を張った。


「オーガジェネラルの軍勢はいつ現れた!?」

「さ、最初に現れたのは……も、もう半年ほど前になります」

「半年……?」


 オレの知るところ、オーガ集団の攻撃はここ数年に何度かあったが、オーガジェネラルが率いているという軍勢が半年前に現れたという話は、聞いたことがない。

 やはり蓬莱にいた間に時間が経っていた。最低でも半年以上。


「……」


 オレが振り返ると、カグヤもお鶴さんも何とも言えない顔をしていた。



  ・  ・  ・



 冒険者ギルドで話を聞いたら、オレたちがいなかったのは、約1年ほどだったらしい。……やべーな蓬莱。


 ゴールドボーイを滅茶苦茶待たせているんじゃないか。製作以来を代理で出してもらった『火鼠の(かわごろも)』はとうに完成しているに違いない。


 で、彼はどうしたかと聞けば、オーガジェネラルの拠点に乗り込んだ討伐隊に参加したらしい。


「じゃ、ここにはいねえのな」

「ええ、もうここを離れて三カ月になるます」


 応対した冒険者ギルドのスタッフは言った。


「モモ様あてに、荷物を預かってます」


 そう言って出したのは、カグヤご所望の品、火鼠の裘だった。あいつ……。


「よかったな、カグヤ。ご注文の品だ」


 カグヤにそれを渡す。ゴールドボーイは、こちらの依頼を完全に果たし、オレたちを待つだけだったのだろう。

 そして、鬼退治に行くことになり、オレたちがいつ戻ってきてもいいようにギルドに預けておいた、と。


「それで、オーガジェネラルとその軍勢ってのは、どうなっているんだ?」


 今も町が厳戒態勢にあるところを見ると、あまり戦況はよろしくなさそうだが。


「確定ではありませんが、あまりよい話を聞きません。最近、オーガの小部隊の出没例が増え始めていまして……」


 まあ、そうだろうな。ここの警備を見た感じ。


「1カ月前、討伐隊が、オーガの本拠地に攻め込んだという話を聞きました。ただその後、何も伝わってきていないんです。まだ戦っているのか、やられてしまったのかわからないですが、最近では後者じゃないかって」


 事態は、かなり深刻な様子だった。

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