不安
自分の人生はどん詰まりと言うやつだ。
結婚もしていなければ子供もいない。
どう頑張ってもデキないなら最早諦めるしかなかった。
選択肢というのはいつも運が良い奴にだけ用意されている。
見た目もその経歴も”ごく”普通な松島裕子には、そのレッドカーペットの上を歩くことはおろか、近付くことさえ許されなかった。
事実上の”夫”は甲斐性がない割にいつも仕事ばかりしている。もう何日も会ってない。
まぁ別にそれでもよかった。
関係としては恋人の様な甘くはなく、夫婦のように苦くもない。共働きのクセに家事も一切しない彼に胸焦がれた、若かりしあの頃に戻れたらなんて考えることも少なくなった。
毎日派遣先と家の往復で辟易仕切った身体をシャワーで洗い流しながら、将来のことを思案すると不安しか浮かんでこない。
「はぁ...」
思いの外ついて出た溜息は、あくまで深呼吸であると偽ることができないほどに大きなモノだった。
ガチャガチャ!
・・・アイツだ。
風呂上がりの濡れた髪のまま玄関へ飛び出す。
帰る時は連絡するようにいつも言っているのに、一向に言う事を聞かない。
いつも鍵が掛かっているかを確認する”癖”があって、ガチャガチャとドアノブを何度も回す。以前はそれで壊したこともあった。古かったから仕方が無いとはいえ、大きく無駄な出費だったな・・・
許さない。
夕飯も何も用意しないと決めた。
その存在そのものがストレスとなって襲ってくるのだ。発散しないとやってられない。
スコープすら付いていない40年前に取り付けられた、木製の古いその扉を勢いよく開けた。
「ちっ、帰るなら帰るって」
あ
続く