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魔法少女のヒーロー  作者: てふてふてふ
58/98

ゲームだって本気で

『YOU WIN』

「なぜじゃあああ!!なぜ勝てぬううう!!」

「いや、まぁ仕方ないんじゃないかなこれは」


 格闘ゲーム自体は少し触ったことがあるが、あくまでゲームセンターにある筐体の物だけだったので、家庭用のコントローラーを使ってするのはかなり新鮮だった。

 使った事のない機器に操作方法もおぼつかず、カエデちゃんに教えられながら少しづつ覚えいていき、取り合えず対戦しようということになった。

 当然、初めは全く歯が立たず、対戦をしている中でもカエデちゃんがアドバイスをくれたのだが、やっている内にふと思った。

 『これ、コンボとかいらないんじゃない?』と。

 この格闘ゲームは、攻撃を連続で繋げるコンボという技術を利用したり、相手がどんな行動をしてくるのかの読み合いを楽しむゲームらしいのだが、魔法少女の超人的視力を持ってすれば相手が次にどんな行動をするかが丸見えなのだ。

 数試合もすれば予備動作から、カエデちゃんがどんな行動をするかが理解できてきたので、とにかく相手の行動に合わせてカウンターや予備動作の少ない攻撃を挟むことで、少ない威力でも着実に削り切って勝利をもぎ取ることができた。

 そうして何試合かしていたのだが。


「3フレームに反応するのはおかしいじゃろおおお!!!」

「3フレームって一体なにさ・・・」


 まぁ、一度分かってしまえば後は難しくなく、本気を出して集中すれば画面がコマ送りのように見えるので、全ての攻撃を潰しながら相手に攻撃を当てるタイミングゲームとなった。

 時折意味不明な言葉を吐き続けるカエデちゃんも、負けが込んできたことによりプライドが刺激されたのか、魔法少女メープルへと変身して試合を再開する。

 魔法少女同士の戦いとなり、これで条件は同じになったが、しかし、結局反応速度の差が埋まることはなく、僕の勝利が続くことで格闘ゲームは一旦終了することになった。


「むぅ・・・。これではきっと、FPSをしても結果は変わらぬのぅ・・・」

「FPS?」

「一人称視点の銃撃戦をするゲームのことじゃ。こう、銃を構えてババババーンと撃って敵を倒す奴じゃ。おヌシの反応速度だと、操作に慣れた瞬間に全部頭に当てられる未来しか見えん」


 メープルが指を銃の形にして構えながら、口で銃声の真似をする。

 僕が同じように銃の形を取ってメープルに撃ちこむと、胸を押さえてそのまま倒れ込む演技をしてくれる。芸が細かいな。


「あぁ、ガンシューティングの事か。確かに、あれだったら簡単に出来そう」


 ゲームセンターでちょっとだけやったことがある。

 銃の形をした機械を使って、トロッコに乗ったような感じで自動的に進みながら敵を倒していくゲームの事だろう。

 あれくらいの難易度であれば、昔の僕ならいざしらず、ブラックローズの姿でやればパーフェクトだって簡単に取れてしまいそうだ。


「多分、想像しとるのとはちょこっと違うじゃろうけど、まぁ似たようなもんじゃ。しかし、反射神経を使うゲームだと勝負にならんということが分かったので、もうちょい頭と運を使うゲームにするかのぅ」

「やってみないと分からないよ?」

「人力チーターにボコボコにされる趣味などないわい。そうじゃ、せっかくだし、このゲームにするかのぅ」


 FPSというゲームをすることを早々に諦めたメープルは、ゲームソフトが沢山入っているだろうおもちゃ箱をがさごそと漁りまわしたあと、ようやくお眼鏡に敵うものを見つけたのか高く掲げたあと、それをこちらへと渡してくる。

 複数人のキャラクターがわいわいと騒いでいるような、カラフルなパッケージの裏面の説明を読む限り、どうやら双六のようなゲームらしい。

 双六なら確かに、反応速度は関係なく遊ぶことができるだろう。

 しかし、どう見ても新品、というよりか、ビニールが付いている時点で使用形跡が一切ない。いつ発売して購入したものかは知らないが、こういう物は買ってすぐに遊ぶものじゃないのだろうか。


「これ、未開封みたいだけど?」

「・・・・・・ふふふっ」


 メープルは声にすらならないような掠れた半笑いしながら、僕から目を逸らす。

 どうやら『パーティゲーム』をやるには、いままで足りない物があったらしい。






 双六というものをやったことがあるだろうか。

 勿論僕はしたことがあるのだが、テレビゲームともなると、いわゆるボードゲームの物とはまた違うシステムやセオリーとなっており、見てるだけでもワクワクと新鮮味あった。

 アイテムという便利な道具があって、プレイヤーを妨害したり自身の利益を補助したり、ところどころにミニゲームが挟まり、運や頭脳や、たまに反射神経を求められたりする。

 ボードゲームでは到底できない要素が盛りだくさんに詰まったゲームは、確かに大人数でパーティのように楽しむには向いているゲームであるのだろう。

 まぁ、プレイヤーは2人しかいないのだが。


「メープル!そいつ潰さないとまずいよ!」

「わかっとる!おヌシもそっちは任せたのじゃ!」


 意気揚々とゲームを始めた僕らだったが、呑気にゲームを楽しんでいられたのは最初の内で、進めていくうちに段々とヒートアップしていった。お互いに協力し合って。

 子供でも簡単に出来るゲームということで説明をすっ飛ばし、プレイヤーが2人だとパーティゲームとしてはいささか足りないよね、ということでNPCを2人追加した上、まぁ余裕でしょ、という甘い見通しで強さの目盛りを一番上まで引き上げたのが問題だった。

 当然のように、2人ともボコボコにされていた。

 このゲームはサイコロを振ってマスを進みながらお金を集め、最終的に一番お金を持っていた人の勝ちという、どこにでもある双六ゲームと変わらないものなのだが、妨害や錬金の手段が多岐に渡っており、初めてで全てを網羅することなど到底不可能であった。

 勿論、知識のない同士でわちゃわちゃするのならば、それらの要素はむしろゲームを盛り上げる為のスパイスとなり得るのだが、強さを最大値まで上げたNPCが初心者と同じである訳がなく、行動するたびに未知の戦略を使用してくる。

 アイテムの有用な使い方も分からなければ、どういった進み方をしたほうがいいという前提知識もなく、リスクヘッジの取り方すら理解してない僕達は、追加した最強NPC2人にいいように振り回され、仲良く地べたを這いずり回る人生を送る羽目になった。

 このままでは勝負にすらならないのは誰の目にも明らかなので、結果、両者共に考え出したのは、とにかくNPCを協力してぶっ潰そう作戦だ。

 雑魚同士でいがみあっていても、大局に影響がまったくないのは言うまでもないので、とにかく金持ちで優雅な生活をしているコンピューター共に、ヒーローの強さを見せつけるべく協力していた。

 最終的にお金を沢山持っていた人の勝ちというゲームにも関わらず、序盤はボコボコにされたせいで借金まみれになっていた僕達だったが、知識を増やす毎に徐々に借金を返していき、大差を付けられていたNPC2人をあともう少しで同じ土俵まで引きずり下ろすことができるといった最終ターン。

 協力関係にあったはずのメープルから裏切りが起きた。


「ちょっと!?カエデちゃん!?それずるくない!?」

「ふはは!勝てば官軍じゃー!」

「ヒーローにあるまじき行いだよ!!」

「勇者はどんな手を使っても勝つのじゃ!!」


 先ほどまで協力していたメープルが突然標的を僕に変え、アイテムを使って僕の所持金を吹き飛ばしてきた。

 まったく想定していなかった攻撃だった為、対抗手段を用意しているということもなく、最終ターンという無慈悲な宣告によって4位で終わってしまった。


「ふっふっふ!勝った!!」

「いや、3位じゃん・・・。それ負けだよ・・・」


 僕を潰すためにメープルが裏切ったせいで、結局NPC2人が1,2位を独占する形となったのだが、それでいいのか勇者。

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― 新着の感想 ―
[一言] ひとりでやるパーティゲームも乙なものですよ・・・
[一言] まあカエデちゃんは嬉しそうだし…
[良い点] フレンド別売り……
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