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第六章 老後、最期
医師を引退してから、ひとみと隼人は老後をロサンゼルスで、明子と章吾はシアトルで過ごすことにした。
同じアメリカでも、ちょっと遠かった。
また手紙を交わす日々が続いた。
「今日はビーチをのんびり散歩したよ。」
「私は今日はカフェでたくさん読書したよ。」
いつどこにいても安定して関係が変わらないのがひとみと明子だった。
ある時から明子からの手紙が来なくなり、ひとみは心配して章吾に電話した。ショックなことに明子は肺炎で入院中に亡くなったと聞いた。
悲しみのあまりひとみは数日間何も食べられず寝られずボーッとした。そして、次第に体が弱くなり、ひとみも入院した。
看護師さんと話をすることで、少しつらい気持ちが和らいだところで、ひとみも人生の最期を迎えた。
「明子、ありがとう。天国でまた会おうね。」とつぶやき、息を引き取った。
ひとみはこんな風に理想的な人生を生きることができ、悔いは何一つなかった。幸せそうな笑みを浮かべたまま、明子の元へと旅立った。