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第8話 村長の孫と出会った件

「ただいま帰りました」



 「ユキト!どうだった?」



 家に戻るとテツさんが筋トレをしていた。



 (また、トレーニングしてるのか…)



 昨日、鎧を着ていて分からなかったが、テツさんはすごいムキムキだった。



 「はい、一応」



 「ユキトさんはすごい才能をお持ちですよ!私が教えた魔法を全て一瞬でできるようになったのですから」



 フェルさんはそう言って興奮気味にテツさんに伝えた。



 「へー、フェルから見てもすごいのか…」



 「そうですよ!私よりもずっとすごいです!」



 フェルさんは僕のことを滅茶苦茶褒めてくれた。



 (恥ずかしいな…)



 「で、ユキト…。これからどうするんだ?」



 「あっ、そのことでこれから話そうと思ってました」



 「そういえば、そんなこと言っていましたね」



 僕はこの村にずっといるわけにはいかないのでまずは王都を目指そうと考えていた。まあ、帰る方法なんかも調べないといけないし…。



 「はい、まずは王都を目指そうかと…」



 「なるほどな…。で、王都に行ってどうするんだ?」



 「冒険者か魔法学校に行こうかと思っています」



 そう、僕は憧れである冒険者になりたかったのだ。異世界と言えば冒険者みたいなところがあるからな。



 それに、冒険者になる前に魔法学校に行って魔法を極めるのもいい。そして、あわよくば同年代の友達なんかも作れたら…。まあ、元の世界でも友達を作れなかったのにこっちで作れるとは思わないが、これまでの失敗を活かせれば、きっとできるはずだ。きっと…。



 そして、これは僕の妄想であるが、魔法を極めれば……きっとモテる!こっちの世界は美男美女ばかりで、もし彼女なんて出来たら…。人生勝ち組だ。



 ただイケメンも多いからな…。いや、そこは魔法の実力でカバーしよう。まあ、これは全部僕の魔法がこの世界でもトップクラスだった時だ。



 完全な妄想だな…。



 「おい、ユキト…。どうした?」



 「いや、何も…」



 危ない危ない、期待するのは良くないな。ただ、僕は自由に生きることができればそれでいいんだ。高望みは良くない…。



 「王都に行くのはいいけどよ、ここから結構遠いぜ?どうやって行くつもりだ?」



 「い、いやー、それは…どうすればいいんでしょう?」



 「やっぱり考えてなかったのか…」



 考えていなかった訳ではない…。ただ、場所が分からないからどうすることもできないのだ。



 「いやー、考えていなかったと言いますか、何と言いますか…。場所も分からないし、移動手段も分からないので」



 移動手段は多分馬車だよな。歩きとかではいけない距離だと思うし。



 「まあそうか。うーんそうだな…取り敢えずはこの村にいろ。1週間後に他の街から商人が来る。その馬車に乗せてもらえるよう言っておくから…そこからはお前次第だが」



 「テツさん…何から何までありがとうございます!」



 「兄さんがこんなに優しいなんて…明日は雪でも降るのかしら」



 「うるせーぞ、フェル。俺はいつも優しい男なんだよ」



 「あら?そうでした?」



 「本当に仲がいいですね」



 「そんなことねえよ!」

 「そんなことありません!」



 同時に否定した。



 「ふふっ、やっぱり仲いいですよ」



 「そんなことより、ユキト。もちろんこの村にいる間はしっかりと働いてもらうぜ?」



 テツさんは話題を変えて、フェルさんは拗ねていた。



 「分かってますよ。でも、僕にできることなんてあるんですか?」



 「おう、いっぱいあるぜ。っとその前に、この村の村長に挨拶だな」



 「そうですね。昨日は日が沈んでからこの村に来ましたから」






★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



 というわけで僕とテツさんは村長の家に来た。



 (やっぱり1番大きい家だったか)



 「おーい、村長、連れてきたぜ」



 扉をノックしながらテツさんが大きな声で村長を呼んだ。僕が来ることはもう伝えているらしい。



 「テツっ!そんな大きい声出さんでも聞こえてるわい!」



 そう言いながら扉から老人が出てきた。



 「分かってるって!そんなことどうでもいいじゃねえか」



 「どうでもよくないわ!何回わしに言わせるつもりじゃ!お前が初めて来たときからいっとるわ!」



 僕は置いてけぼりだった。



 それにしても元気な老人だな。杖を持っているが使っていない。何のためにあるんだ?見た目は、もうダン〇ルドアそっくりだ。ただ、少し…いや、結構小さい。



 「あ、あの。初めまして。雪兎如月と申します。1週間ですが、テツさんの家でお世話になるのでよろしくお願いします」



 まずは第一印象が大事だからな、ここは丁寧にいこう。



 「ほう、お主がユキトか。見たことない服装をしているな。どこかの貴族か?」



 「い、いえ。僕は記憶がなく名前ぐらいしか覚えていないので…。この服に関して何も分からないんです」



 また聞かれた。服を変えた方がいいのかな。…でも、この服なくなったら困るしな。



 「そういえば、テツがそんなこと言っておったな。まぁいいじゃろ。わしの名前はクプル・フェブルじゃ、よろしく頼む」



 「クプルさんですね。こちらこそです」



 クプルさんもいい人そうだ。この村はいい人が多いな。まだ3人だけど。



 「で、その頭に乗ってるのはなんじゃ?」



 あっ、そういえば雪希のこと言うの忘れてた…。



 「あっ、こいつはこの村に来る途中で出会った狐の雪希です」



 グシグシ



 (ごめんって。別にいることを忘れていたんじゃなくて紹介するのを忘れていただけなんだって。僕は初対面の人と会うと緊張しちゃうから…。ってこんな言い訳は通用しないよな…)



 「ほう、白い狐とな。見たことないのう。ちょっと見させてもらっても良いか?」



 「あ、いや…」



 雪希は嫌がっているように見えた。だって僕の頭をしっかり掴んでいるからだ。…ちょっと痛い。



 「そんなことどうでもいいだろ?というか村長の孫娘はどこ行ったんだ?」



 「ん?シーユか?今は確か畑の所に…」



 孫娘がいるのか…。どのくらい歳なんだろう…。



 そんなことを考えていると…。



 「おじいちゃーん」



 と大きな声でこっちに向かってくる女の子がいた。



 「ふぅ、おじいちゃん!お客さんは…」



 そう言いながら、ギギギと音がしそうな感じで首を回して僕の方を見た。



 「あ、あ、あのすみません。ま、まだ来ていないと思って…。私ったら…あんな大きな声で…」



 すごい速度で僕に謝ってきた。しかも、顔が真っ赤だ。



 「いえいえ、大丈夫ですよ。シーユさんですか?村長の孫娘の」



 「は、は、はい!そうでふ!」



 あっ、噛んだ。



 「あ、あ、あ、すみません」



 またすごい速度で謝られた。顔真っ赤で。



 「大丈夫ですよ。先に名乗れば良かったですね。僕の名前は雪兎です。よろしくお願いします」



 「わ、私はシーユと申します。こ、こちらこそよろしくお願いします」



 シーユさんは多分僕と同じくらいの年齢だと思われる。大人しい感じの子だ。ドジっ子でもあるかもしれないな。ただフェルさんと違って綺麗系よりは可愛い系だ。



 「なんだ?シーユ。そんなに慌てて」



 「テツさん!別に慌ててなんかないですよぅ」



 最後の方は声が小さくなっていた。



 「そうか?まあいいか。ユキトと仲良くしてやってくれよ!1週間だけだが年の近い奴同士の方がいいだろ?」



 鈍感だ…。鈍感すぎるよテツさん…。察してあげて…。



 「ってことで俺は行くから、シーユ。ユキトに村の案内をよろしくな!」



 「え、え?ちょ、ちょっと待って。テツさん!」



 テツさんはシーユさんの静止も聞かず行ってしまった。…また筋トレかな?



 「…」



 「…」



 「何しとるんじゃ2人とも。村を見て回らんのか?」



 グシグシ



 まぁ、雪希もいるし大丈夫か。



 「行きましょうか、シーユさん」



 「そ、そうですね」






★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



 それから色々と見て回った。まあ、小さい村だからそんなに見て回るものはなかったのだが…。シーユさんと2人…じゃなくて2人と1匹でほとんど話がつながらなかった。沈黙の方が多かった気がする。



 いや、だって、しょうがないでしょ。コミ力が低いんだから…。しかも滅茶苦茶可愛い女の子と会話なんて…。しかもシーユさん終始顔真っ赤だったし。危うく勘違いするところだった。



 見て回った限り僕と同じくらいの年の子はいなかった。シーユさんだけだ。まあ、いればテツさんが紹介してくれてただろうし。



 シーユさんとはまた明日会うつもりだから、その時はちゃんと話そう!



 そして家に帰っている途中時間が気になったのでスマホで確認した。



 「まだ12時か…」



 あれだけのイベントがあってまだ昼だ。元の世界だと時間が過ぎるのが早く感じるのにこっちだとすごくゆっくりだ。



 「あれ、そういえば手紙どこ行った?」



 制服のポケットにてを入れてみるがない。



 「……やばい。やばいやばいやばい。あれがなかったら元の世界に帰る手掛かりが…」



 まだ手紙の内容を見れてないのでもしかしたらという期待があるのだ。



 「いつなくなったんだ?」



 確か昨日の夜寝る前に見て、それから…



 「寝室か!そういえば手紙を持ちながら寝た気がする!」



 お昼時だったので家に帰ろうとしていたのでちょうどよかった。



 「ただいま帰りました!」



 そう言って僕は寝室に直行しようとした。



 「お帰りなさい、ユキトさん。どうしたのですか?そんなに慌てて」



 「いえ、お腹が減って…」



 「そうですか、もうすぐできますよ」



 「ありがとうございます」



 「あっ、そういえば寝室に封の空いていない手紙が落ちていましたよ。あれはユキトさんのものですか?」



 やっぱり寝室にあったのか。良かった~。安心した。



 「は、はい。気づいたら持っていまして…」



 「そうなのですか。もしかしたら記憶がなくなる前にもらったものかもしれませんね」



 「そうかもしれませんね、でも開けることができないんですよ…何でですかね?」



 フェルさんに聞いたら何か分かるかもしれないな。



 「う~ん、私にも分かりませんが、もしかしたら魔法がかかっているのかもしれませんね」



 「なるほど、そういう可能性もあるんですか」



 魔法か…。でも手紙が開かなくなる魔法とかあるのか?無駄じゃない?必要性を感じないよな…。



 まぁ、考えても仕方ないか、手紙があると分かったし今はお昼を食べよう。






★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



 「ふぅ、美味しかったな、フェルさんの料理」



 お昼ご飯を食べ終わり部屋に戻ってきた。



 「あっ、あった」



 フェルさんが言っていた通り机の上に置いてあった。



 「魔法か、やっぱり王都に行って色々と調べないとな」



 手紙をポケットに入れようと持った瞬間…



 「………………………え?」



 なんと景色が変わって自分の部屋にいたのだ。フェルさんの家の寝室のことじゃない。元の世界の自分の部屋だ。



 「……帰ってきたのか?異世界から」



 もしかして夢だったのか…。廃村で拾った靴は履いてないし汚れていた制服も綺麗になっている。僕の異世界での冒険はこんな早く終わったのか?



 「マジかよ」






★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

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