第4話 村を見つけた件
「っと言ったもののこれからどうすんだ?2人分…じゃなくて1人と1匹の食料もないわけだし…」
ビクッ
「どうしたんだ?雪希?僕は何も言ってないよ?別にあれだけあった油揚げを全部食べたことなんて…。」
「君は怪我をしていたんだし、しょうがないよ…。ただちょっとだけ残してくれていたらなって少しは思っていたけど…。僕もちょっとしか食べることができなかったし。うん、でもしょうがない。しょうがない…」
ちょっと早口になっちゃった。嫌味とかじゃないよ?ただ、思っていたことを口に出しただけだ。
「クゥ~ン」
「いや、ごめんって。意地悪しちゃって…。雪希のせいじゃないよ。元々、雪希がいなかったらこの靴も手に入らなかったし、何も食べられなかったしね」
「クゥン?」
「いや、ほんと?みたいに言われても…。ほんとだよ。ほんと!雪希がいなかったら今よりもっと悪い状況だったから、助かったよ。ありがとね」
「コンコンッ♪」
「でも、どうしようかこれから…」
そう、これからどうしよう…。もうすぐ夕方になる時間だし、夜の方が魔物とかって活発なイメージがあるから怖いんだよね。
「ねぇ、雪希?ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
「?」
首を傾げている…。…可愛いな君。
「僕、魔物とかって全然会わなかったんだけど、この辺りにいるの?」
ウンウン
「やっぱりいるんだ…。ってことは僕は運が良かったってことか…。」
全然いないから、こういう所では出ないと思っていたけど、僕は運が悪い、運が悪いって思っていたけど、〇ぬより悪いことはないし、そういうことでは僕はすごく運が良かったってことか…。
「もし、魔物に出くわしたらどうしよう…。雪希って戦えるの?」
フルフルッ
「無理か~、まぁ怪我もしてるししょうがないか。じゃあもし見つけたら即逃げるから…。その時は雪希を抱えて逃げるつもりだから大人しくしてね」
ウンウン
「よしっ!まず最初の目標は人がいる村を見つけることだ!」
「コンコンッ♪」
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「う~ん、なかなか見つからないな…。日も暮れてきたし、少し危ないな…」
クンクン
「おっ、雪希。どこに村があるとかわかるのか?」
「コンコンッ♪」
わかるのかいっ!なら最初からそうしてくれればよかったのに。なぜ黙っていたんだ?ちょっと問い詰めてみるか。
「なあ、雪希。君って最初からどこに村があるとかわかっていたのか?」
フルフルッ
「本当か?まあ別にいいけど。っというかあっちの方に村があるのか?」
ウンウン
「それって人がいる村か?さっきいた無人の村とかじゃないよな?」
「コンコンッ♪」
「ほんとか?」
ウンウン
「良かった~。ものすごくお腹が空いて限界だったんだよな。これでやっと安心できるな」
村に入れるかどうか分からないけど…。優しい村であってくれよ、頼むから…。もし村にたどり着いたものの入れないってことになったら…絶望的でしかない。
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「おい、雪希。まだなのか?あれから結構経ってると思うんだけど…」
村があると分かった時から30分以上は経っていた。
すぐ近くにあると思っていたが、そうじゃなかったのか…。
「あとどれぐらいなんだ?夜になるまでには着くのか?」
ウンウン
「本当か?少し心配になってきたけど…。でもこっちの方角に確かにあるんだよな?」
「コンコンッ♪」
「それならまだいいけど。」
辺りはもう茜色だ…。このままだと危なくなる…。…でも村とか街って明るいから夜の方が見つけやすいのか?いや、確かに見つけやすくなるが夜だと魔物がいっぱいいそうだし…。どうにかして早く村か街を見つけないと…。地図がないってこんなに厳しんだな…。地図がなくても看板ぐらいあっていいと思うが…。
「そういえば、この世界ってどんな言葉を使っているんだ?雪希は僕の言葉を理解しているみたいだけど…。こういうのって大抵違う言語だよな。」
何故、雪希が僕の言葉を理解しているのかすごく気になるけど…。言語理解みたいなものってないのかな?…もしかして勉強しないと話せたり読めたりしないのか?そうなるとすごく困ったな…。勉強しようにも本を手に入れることもできないし、お金なんてものはもちろんない。まぁ話せないし読めないから全部意味のないことだけど…。
「あぁ、人にあったとしても話せなかったら意味がないじゃないか…」
雪希が理解しているってことはこの世界にも日本語があるはずだ。
「今はそんなことを心配している場合じゃない。早く村を探さないと」
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「ん?何か向こうの方…。明るいような…」
太陽が沈みかけた頃。丘の上から遠くの方に村が見えた。ただ少し暗いから見にくいが…。
「あの村が雪希が見つけた村か?」
「♪」
結構遠かったな。雪希の鼻はどうなってるんだ?何キロ離れてると…考えても仕方ないか…。謎は深まるばかりだ。
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少し近づいて見た限りそれほど大きな村ではないが、井戸や畑もあって…The 村って感じだった。少し語彙力がないが村の中の村…皆が想像している村だった。う~ん、言葉に表すのが難しいな…。
ただ村全体を囲う柵があり、家は木製で村の真ん中に大きな木と広場のような空間があった。
「村の入り口に門番のような人がいるな…。大丈夫かな…」
問題が山のようにある。まず1つ目は言葉が通じるか…。これが一番の問題だ。もし違う言葉ならどうすることもできない。2つ目は身分証明書がいるかどうかだ。こういう村であまりないと思うがもしかしているかもしれない。盗賊とかに間違えられたら元も子もないわけだし。身分を証明するものがあるのとないのとでは雲泥の差だ…。3つ目はお金の問題だ。村に入ったのはいいがお金がなかったら何もできない。食べ物を買うこともできないし宿があったら泊まることもできない。
まぁお金の心配はあまりない…。というか、こういう小さい村にお金は流通してないだろうし…。多分だけど…。畑があるから自給自足っぽいし、物々交換で欲しいものは手に入るだろうしね。
今日の僕色々と冴えているな。いや~異世界ものをたくさん読んでて良かった~。合っている保証は少しもないけどね。
「とりあえずあの門番らしき人と話してみよう。行動しないと何も始まらないし…。よしっ!行こうか!雪希!」
「コンコンッ♪」
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「あの~すみません。この村の人ですか?」
村の門にいるのだからこの村の人に決まっている。なぜ自分でも聞いたか分からない…。僕のコミュニケーション能力が低すぎるからか?
「Конечно же, подходящее!」
「ん?」
「Конечно же, подходящее!」
(えっ、もしかして言葉が通じないのか?終わったのか、僕…。どうしよう、言葉が通じないってことは、何もできないじゃないか…)
「ハッハッハッハ。冗談だよ、冗談」
「ハハハハハ…」
乾いた笑い声が出てしまった。
酷くないか?初対面の相手にこんな悪戯をするなんて。僕本当に終わったと思ったんだぞ?もうこの世界でやっていけないって。
「いや、ほんとごめんって。怪しいやつだったら嫌だろ?どんな奴か試しただけだ」
いや、その方法はないだろ。怪しい奴かどうかなんて分かるわけないし。だが日本語が通じることは分かった。これは大きな進歩だ。
「で、こんな時間になにか用か?」
なんだその切り替えは…。
「は、はい、…僕今何も食べるものもなくて、寝る場所もなく…いつの間にか森にいて何も分からない状態なんです。できれば助けてほしくて…」
こういう理由が定番だ。本当に何も分からないし、記憶がないって言っといた方が後々楽だ。
「ほぅ、それは災難だったな。…見たところ何も持ってねぇみたいだしあながち嘘ってわけでもなさそうだ。…いいだろう、入れ。それと泊めてくれる場所は知り合いに頼んどいてやるよ!」
即決だ…。第1印象は最悪だったが中々いい人だ。泊まる場所まで提供してくれて。…いい村ではよかった。
「それと1つ聞いてもいいか?」
「は、はい。何でしょうか?」
「その頭に乗ってるやつってなんだ?」
いつの間にか僕の頭に乗っている雪希を見ながら聞いてきた。
(ん?雪希のことか?意外と珍しいのかな。見たことなさそうな表情しているけど…)
「村を探して歩いていた時に偶然出会ったのですが、その時になついて…。僕にもよく分からないんですよ」
「へ~、いや、何でもないんだ。ただ白い狐なんて見たことねぇからよ」
なるほど。狐はいるんだな。じゃあ尚更雪希は…。
「?」
雪希が首を傾げている。
…まあ、いずれ聞かせてもらおう。とにかく今は…
「よしっ!行こうか、案内してやるよ」
「はい!ありがとうございます!」
「♪」
門のところにいなくても大丈夫なのか?まぁここに来るまで何も出会わなかったし…。
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