駅員
深夜、肝試しをしようと無人の駅に近寄る数人の少年。
彼等は周りを見渡し人気が無いことを確認し、駅の中に侵入するため閉め切られている扉のガラスを叩き割った。
ガラスを叩き割った音に気が付いたのか駅舎の奥から怒号が響く。
「コラー! 何をやっている」
その声に少年達はあわてふためき、「逃げろー!」「警備員がいるんじゃないかー! 無人って言ったの誰だよ?」
「馬鹿! そんな事言ってないでサッサッと逃げろ!」と口々に言い、ここまで乗ってきた自転車に飛び乗り逃げていく。
真っ暗な駅舎の奥から箒とちり取りに水が入ったバケツと雑巾を持った中年の男が現れ、駅舎の中やホームに落ちている煙草の吸い殻やゴミを掃き、駅舎やホームのベンチを固く絞った雑巾で拭く。
少子化や沢山の人が亡くなった未知の伝染病の蔓延により、沿線に住む人がいなくなり廃線になった路線の駅。
未知の伝染病に感染し誰にも看取られずに亡くなった、1人で駅の業務をこなしていた中年の男。
彼は自分の死を認識せず路線が廃線になった事も知らずに、今も自分の仕事を淡々と行っていた。