幽霊少女と葬送師 2
こんにちは飽那です。まだまだ拙い文章かとも思いますが、読んでいただけると幸いです。
今日も天利は霊を葬送していた。
天利は葬送するたび、九鬼に思いをはせる。
(九鬼……。)
「ねえねえ、あまり!」
天利は九鬼の声が聞こえたかと思ったが、きっと幻聴だと思って聞き流す。
だって葬送したのだから、聞こえるはずがない。
「あまり!聞いてる?」
(ああ、九鬼に会いたい。)
「ねえってば!あまり!」
その大声で、天利はやっと九鬼に気づいたようだ。
「く、九鬼?なんでこんなとこに……。」
「えっとね、一応あの世に逝ったの。でも、私も悲しくて悲しくてずっと泣いちゃってたの。そしたらね、それを見兼ねたあの世の管理者が、私を悪霊化しない霊としてあまりに会えるようにしてくれたの!」
「そんなことができるの……?」
「できるらしいんだ!だから、私みたいに未練がある子はこうしてあっげてるんだって!私も最初聞いたときはびっくりしたよ!ほんとにまたあまりに会えるなんて、思ってもなかったから!」
「でも、そういうことならずっと一緒にいられるってことでしょ?また遊べるってことだよね?」
「うん!そういうことだよ!またたくさん遊ぼうね!」
「そうだね!九鬼!」
ふたりはたくさん遊んだ。
前と同じように、かくれんぼや鬼ごっこ、だるまさんがころんだ、影踏みなどの遊びで遊んでいった。
天利は葬送師の仕事も忘れて──。
葬送してもらえていない霊が現世にとどまり続けると、悪霊になってしまう。
それなのに、天利はしばらく葬送をしていなかった。
すると悪霊の数が増え、人々への被害が拡大していたのだった。
葬送師は他にもいて、その一人一人に管轄地域がある。
しかし、人数が少ないためその地域は広く、それを一人で担当しないといけない。
そんな広範囲の葬送をおろそかにしていたら、悪霊がどれだけ増えるか──。
九鬼と遊んでいるとき、近くの街から悲鳴が聞こえてきた。
「な、何?どうしたんだろう。あまり、行ってみよう?」
「そ、そうだね。」
行った先の光景は、それはもうむごいものだった。
その町に住んでいたと思われる人の死体に、家の崩壊。
そして、悪霊となった幽霊の群れ。
生きている人はいるが、大けがを負っている。
九鬼がけがをしている人に駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
けがをしている人に問いかける。
だが、九鬼は幽霊だ。
普通の人に見えるわけもなく、気づいてもらえない。
そのことに悲しい顔もせず、寄っくる悪霊から人を守っている。
その間も、天利はただ茫然と立ち尽くしていた。
(俺のせいで人が死んだ……。俺のせいでけがを負わせた……。俺の、せいで……。)
そうしていると、九鬼が叫んで言ってくる。
「あまり、何してるの!早くあの悪霊たちを葬送しないと、みんな死んじゃうよ!」
「で、でも、こんな量の悪霊を葬送するには、体力が持たない。悪霊は普通の霊よりも体力を消耗しないと葬送できないんだ……。」
「とにかく今はできるだけ葬送して!」
「わ、分かった。」
そう言って、悪霊のところに行く。
「葬送、葬送、葬送、早く、逝ってよ!葬送──。」
次々と悪霊を葬送していく。
しかし、その数はいっこうに減らない。
九鬼も、まだ生きている人に近寄ろうとしている悪霊を撃退していた。
きっとそういうこともできるようにしてもらったんだろう。
ただ、葬送することはできないので、常に戦っている必要がようだ。
九鬼を横に、天利はずっと悪霊を葬送していた。
四分の三の数が減ったころ──。
「葬送、葬送、葬、送、そう、そう、そ、うそ…う……。」
──ついに天利は倒れてしまった。
体力の限界が来てしまったのだ。
「あまり!」
悪霊を撃退しながら天利のもとへ駆け寄る。
「大丈夫!?あまり、あまり!」
天利の顔は青白くて、息も浅い。
今すぐ回復して葬送するのは難しそうだ。
そうしている間にも悪霊は襲ってくる。
ただ一つ幸いだったのは、さっきまで町の人を襲っていた悪霊が、天利を襲ってきたことだった。
他の人も守っている余裕はなかったから。
天利を床に寝かせて、九鬼は悪霊に立ち向かう。
でも、九鬼だけではどうにもならない。
だから、九鬼は苦肉の策を取ることにした。
それは、九鬼自身の幽霊として存在するための力を天利に分け与えることだ。
でもそれをしたら、例外が起きない限り消滅してしまう。
「でも、生きてる人と悪霊、そしてあまりのためになるためにならそれを受け入れる!」
九鬼は天利の手を握って、力を分け与える。
「うっ……。あれ、九鬼どうしたの?」
天利が目を覚ました。
そして、九鬼は言う。
「あと悪霊は少ししかいないから、がんばって!」
「わ、分かった。」
天利は何が起きたかわからない状態だったようだが、九鬼の言うとおり悪霊を葬送しに行った。
そして九鬼は、その背中を見ながら涙を流していた。
せっかくまた会えたのに、すぐお別れというつらい現実を突きつけられているからだ。
少しして天利は葬送し終わったのか戻ってきた。
「九鬼、終わったよ!え、なんで泣いてるの?どこか痛いの?」
「ううん、実は私もう少しで消えちゃうんだ。さっきあまりの体力復活させたの私なの。私の力を分け与えたんだけど、それをしたら消滅しちゃうから。だから、またお別れだよ、あまり。ごめんね……。」
「ちょ、九鬼!」
そして、九鬼は消滅の時を待った。
だが、その時はいっこうに来ない。
そう、例外が起きない限り消滅する、それは例外なら消滅しないことを表していた。
「あ、あれ、消滅しない。そうか、あの世の管理者にそういうことも大丈夫にしてもらってたのかも!」
「そ、そうなの?ほんとに大丈夫なの?」
「うん、大丈夫、みたい。」
「よかったぁ。もう、九鬼がいなくなっちゃったらどうしようかと……。」
「えへへ、ほんとによかったよぉ!」
そう言って、九鬼は天利に飛びついて泣いた。
少しして泣き止んだあと、けがをしていた人は病院に運び込んだ。
そして幸い、生きていた人は全員一命をとりとめたようだった。
天利は今回の件でしっかりと反省し、しっかりと霊を葬送するようにしていた。
悪霊の仕業なので罪に問われることは無いが、ほかの葬送師からはこっぴどく言われていた。
だが、九鬼との生活はま守ることができたので、天利は幸せそうだった。
自分の所為でこうなったことは、しっかりと心にとどめ、霊を葬送していく天利と九鬼だった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。誤字脱字があったら教えていただけると嬉しいです。アドバイスや感想も送って下さったら幸いです。