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初恋行方不明  作者: アヤ
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『急にどうした……。』


「葉波について知ってる事ないかっ!!?」


『うるせー。俺は知らないぞ。……あっ、お前もしかしてあの噂を気にしてんのか?』


「……まあ、な。」


『噂は噂だ。』


「ああ、だけど……。」


『分かった分かった、葉波の事を知ってそうな奴らに聞いてみるよ。親友に手を貸すのは当然だ。』


「ありがとう、今度ラーメンおごるな。」


『それでこそ我が親友。』


「へいへい、じゃあ宜しく。」


『へーい。』


通話を先に切ったのは、一応親友で従弟の佐藤 和樹(さとう かずき)の方。

俺側には、ツーツーという音がしている。

俺はこの音が嫌いだ。

恥ずかしいが、なんだか悲しくなるから。

だけど、今はそんな事はどうだっていい。

葉波が死んだという噂を聞いてから、出来る範囲でもっと詳しい情報を手に入れようと頑張った。

それでも有力な情報はなく、ただ大雑把に『死んだ』という話しか出てこない。

これは明らかに信憑性のない噂だ。

まず、本当に死んだのなら、小中のクラスメートに聞けば葬式があった等……具体的な話が出てくるはず。

しかし、そんな話一つも出てこないではないか。

聞けば聞く程怪しくなっていく。

元カノにも聞いてみたが、特に知らないと。

因みに新しい彼氏が出来て幸せらしい。

……とまあ、詳しい事は何一つ分かっていない状況である。

そして、もっと怪しい事が。

葉波の家が無くなっていたのだ。

俺の家から徒歩圏内にある白い壁の綺麗な家が、なんの跡形も無く消えていた。

葉波の両親と弟の波留(はる)の行方も分からない。

もう、俺には何も出来ない……そう、何も自分で出来やしない。

だから、()()()()()と繋がりのある和樹に頼んだ。






三時間後、和樹から連絡がきた。


『一郎、葉波の事で分かった事がある。』


その言い方……。


「つまり、葉波は生きてるんだな?」


『まあ、そうなる。俺が仕入れた情報の時点では生きてるらしい。』


「そうか……良かった。」


『だけどな、これからする話は()()()()じゃないんだ。お前は足を踏み入れる覚悟、出来てるのか?』


「そんなの今更だ、親のいない俺に失う者なんてない。それに、お前と一緒に住んでる時点で足どころか体ごと入ってるだろ。」


『そうだったそうだった。じゃあ話そう。まず、葉波は山並病院で死んだ事になってる。だけど実際には、半月前に退院した。山並病院専門に張り付いてる奴からの情報だ。卒アルの葉波の写真を見せたが、間違いないそうだ。山並病院は裏で色々あると有名で、奴は張り付き始めてもう15年。信用できる。』


和樹が信用できるのなら、俺も信用できる。


「ありがとう。ちょうど昼だ、今日の昼食当番は変わってやるよ。出来たら階段下から呼ぶ。」


『ラーメンがいい。』


「……これは、おごった事になるか?」


『ならない、卵煮て。』


「了解。」


和樹との電話が切れる。

その途端、壁の向こう側からガンッという大きな音が聞こえた。

これは和樹が転んだ音だ。

あいつ、電話だと普通に……むしろ分かりやすくなんでも伝えられるしっかり者なのに、現実になれば俺とすらまともに話せないわすぐに転ぶわ。

完全に性格が変わってしまう。

それでも裏社会の人間として溶け込めているから不思議……いや、だから溶け込めてるのか……違う違う。

俺はそんな事考えなくても良いし、知らなくても良い。

インスタントラーメンの粉末スープと液体スープにお湯をかけて溶かすのが、今の俺がやる事であり出来る事。

二人分の麺を二口コンロの片側で茹でているこの時間。

葉波は何をしているのだろうか。


プルルルル……プルルルル……。


「なんだ。」


『ラーメンまだ?』


「まだ。」


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