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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転校生によって私の傍観ライフが崩されそうになっているので全力で守ります

作者:

主人公 香奈

転校生 早紀

女王  奈緒     です。

最後の方はちょっとごちゃごちゃかもしれません。




私の学校には女王がいる。

女王の周りには常に行動を共にする取り巻き二人。女王の取り巻きに侍る侍女。侍女にこき使われる平民。平民からさげすまれる奴隷。

一人の王子とそれを取り巻く騎士たち。騎士たちからいろんな注文を付けられる平民の兵士。存在を無視され、女王の気が向いた時だけ適当にからかわれる野良犬。

彼らを一歩離れた位置から傍観する隣国の貴族。


小学生にしてきっちりと線引きされたスクールカーストを完成させてしまった女王はすごいと思う。

ちなみにこの女王やら取り巻きやら侍女やらというのは私が勝手に名付けてみたものだ。

少し思考がファンタジー寄りだろうか。でも許してほしい。本当にこのままなのだから。


卒業まではずっとこのクラスはこのままなんだろうと誰もが思っていたと思う。女王である奈緒自身もそう信じて疑わなかったはずだ。

だが、小学6年生に進級した私たちは新たな展開を迎えた。なんと転校生が来たのだ。


転校してきた早紀は美少女だった。さらに、勉強もできたし運動もできた。全てにおいて人より優れていた。何より性格もよかった。

そんな彼女は最初、誰もが女王の取り巻きになるのだろうと思っていた。

口に出して勧誘されていたわけではなかったが女王の周りからは明らかに圧力がかかっていた。しかし、誰が見てもわかるレベルの圧力だったのに彼女はそれを完全に無視した。


女王は自分を頂点としたカーストが壊れることを恐れたのか、ただ自分の思った通りに動かない彼女に憤りを覚えたのか、あるいはその両方か、私には分からなかったが彼女に対しクラス全体による無視が始まった。


だが、早紀も負けていなかった。

席が前後だった私を巻き込んでカーストを崩壊させようとし始めたのだ。つまり、傍観者という気楽な立場を築き上げた私の長年の苦労をいきなり投げ捨てようとした。


私の最初の立場は奴隷だった。

今考えれば、何も考えず好きに学校生活を送っていたから奴隷になっていたんだと思う。

当時私が思っていたことは一部の女子の私に対する扱いが雑だなというくらいで、本当にそれだけだった。


入学してすぐの頃は年上の兄弟から小学校で習うことを少し教えてもらっていた事や周りの子達よりも早熟だった事から女王よりも目立ってしまうことが多々あった。テストでいい点を取ったり運動会で活躍したり。

少し得意気になっていた私に対し、あの時の女王の攻撃はすさまじかった。普通に考えてここまで、という常識のラインを知らない子供だからできた攻撃だったと思う。

それに担任の先生も泣く女王にあっさり騙されてしまったため、あの時の事をまだ謝ってもらっていない。未だに根に持っている私は執念深いだろうか。

そもそも、あっさり騙された担任の先生もどうかと思う。今時小学生でも裏の顔くらい持っているのに。


その時に、私はこのクラスの傍観者になりたいと思った。初めてクラスのカーストを意識して、ずっと奴隷のままは嫌だと思ったからだ。

でも、奴隷をやめるにしても周りの子達みたいに女王のご機嫌取りをしなくてはいけない毎日は嫌だとも思った。

だから他国に行こうと思ったのだ。

遠くの国がよかったがさすがに同じクラスにいる以上無理だったため、隣国になった。

さらに、隣国に住んでいても平民はだめだと思った。

ある程度権力を持った立場にならなくてはいけない。だから、先生から優等生という評価が下るようにお手伝いをしたり積極的に発言したりした。この時も、女王に目を付けられない程度の媚の売り方をしなくてはいけなかった。

さらに、隣国の貴族仲間を数人増やした。

あくまで数人だけだ。新たな派閥を作って女王と争いたいわけではない。仲間をつくった上で女王のすることに口を挟む真似は一切せず友好的な態度を常に取り続けたのだ。

すると、女王は私を放置してくれるようになった。彼女は私を無理やり自分の配下に置こうとすれば教師や傍観仲間たちによって自分の安全圏を壊されると思ったのかもしれない。まぁ、確かにそんな状況に陥れば全力で戦っただろうけど。私はちゃんと平和的な妥協案を提示したのだから。



転校生は、私に延々と話しかけてきた。

でも、私を舐めないで欲しい。そんなことではなびかない。傍観者という立場は女王のやることに逆らわないという暗黙の了解によって確保されているのだ。今更新しく新たな立場を開拓するなどめんどくさすぎる。このまま卒業を迎えたい。


それでも転校生は諦めなかった。転校生のしつこさにいい加減辟易していた私は彼女を傍観仲間に加えることも考えたが、一度女王を怒らせた彼女を仲間に迎えるにはデメリットが大き過ぎると考えてやめた。それに安定している立場を不安定にするくらいならしつこさに耐えた方がマシだとも思ったのだ。


だが彼女は私の想像を超えるしつこさで迫ってきた。そして徐々に外堀から埋めようと画策しだした。

転校生と転校生の妹はその外見の可愛さと性格の良さで6年生以外の全学年に信者をつくっていた。それも転校してきてから一か月ほどでだ。

そこで、彼女はまず自分の妹に「お姉ちゃんが香奈ちゃんと友達になりたがっているのに避けられてて悲しんでる」という噂を流させた。ちなみに香奈ちゃんとは私の事だ。

さらに、私の学校では各学期末の全校集会で各学年から先生に選ばれた子が一人ずつ作文を読み上げるのだが、それに選ばれた転校生は、自分は転校してきて友達がいないため友達が欲しい事、私に避けられて辛い事、でも転校してすぐの頃に笑って話しかけてくれた私と絶対に友達になるのだと決心していること、出来れば恥ずかしがっているであろう私に一歩を踏み出す勇気を与えてほしいことなどを述べた。

誰だよこんな作文を選んだやつ。いくら何でも全校生徒の前で名指しはないだろ。

それに転校してすぐの頃、彼女に笑って話しかけていたのは私だけではない。たくさんいたし、そのたくさんの中には女王も含まれている。なんで女王を選ばなかったんだよ。選べばそれだけで平和な一年が過ごせただろうに。それに何勝手に決心してくれてんだよ。何勘違いしてくれてんだよ。転校生に対して恥ずかしがったことなんて一度もない。むしろ迷惑だと思っている。


この二つの出来事でも私の立場は揺れに揺れた。良い成績を取り続け、優等生を演じることで隣国に席を置くことが出来ている私にとって、周りからの自分に対する評価はとても大切なものだからだ。

下級生からはなぜ彼女と友達になってあげないんだという非難の視線にさらされ、彼女の信者達からは実際に文句を言われた。

また、彼女を作文の発表に選んだ教師からは「こんなにも他人から友達になって欲しいって言ってもらえる事はそうそうないわよ」と言われ、同級生たちは私の立場を分かっているので気の毒そうな顔はしてくれても、助けようと動いてくれる子は居なかった。

私の傍観仲間たちは「むしろ転校生の思惑に乗っかった方がうまくいくんじゃない?」と言っていた。なんと能天気な。

確かに、私は能力は高いが成り行きに身を任せるタイプの子たちをを狙って傍観に誘ったのだがこれはひどい。


しかし、彼女に付きまとわれていた間「友達になりたいと毎日話しかけている健気な転校生にすげなく接し、無視する私」という印象が定着しても何の対策もしなかった私も悪かったと反省したのだ。だから下級生と先生たちには「ずっと話しかけられていて、いつが友達になるタイミングだったのかわからなくなってしまって。それに自分では迷惑がっている演技をしてたはずなのに彼女にバレてたことが恥ずかしくてさらに素直になれなくて」と彼女の作文に乗っかった説明をし、女王には「あの子が作文で発表してたことも、今下級生の間で流れてる噂も気にしないで。私は彼女に付きまとわれて心底迷惑してるから」と説明した。


これらの説明で両陣営から少しの猶予をもぎ取り、傍観仲間をどうにか説得して私の周りを固めてもらった。彼女が私に近づこうとすれば教えてもらい、すぐさま逃げた。これを一学期終了まで続けた。

作文の発表から終業式まで二週間ほどだったので何とか逃げ切ることができたし、夏休みを挟めばこの騒ぎもいくらか落ち着くだろうと思ったのだ。それでもだめなら彼女の自慢の妹で脅迫でもするか、と考えていた。実際、転校生の妹は既に私に懐いていたのでもう一息だと感じていた。



夏休み、私が一人でショッピングモールに来ていたら美少年に会った。どうも迷子になっていたらしく迷子センターまで連れて行って一緒に来ていたらしい姉を呼び出してもらった。

すると美少年を迎えに来たのはあの転校生だった。学校であれだけ付け回されていたのでまさかこれも…?と疑ってしまった。これも故意に仕組まれていた事なら怖すぎると思って、私は聞くことが出来なかった。


「香奈ちゃん、ありがとう」


彼女に感謝の言葉を述べられると何とも言えない微妙な気持ちになった。

「ここで感謝されるくらいなら学校で付きまとうのやめてくれた方がよっぽどうれしいよ」と言うと、

「それは無理」と即答された。なんか怖い。

私はずっと気になっていたことを彼女に聞いてみた。


「ねぇ、どうして私と友達になりたがるの?なんで奈緒のグループに入らなかったの?」


「だって香奈ちゃんが唯一あのクラスで奈緒ちゃんに逆らっているように見えたから。それに、私奈緒ちゃん嫌いなんだよね。前はこの辺に住んでたんだけど引っ越して、また戻ってきたんだけどね、奈緒ちゃんと同じ幼稚園で同じクラスだったんだ。先生の前ではいい子になるのに友達の前では態度変わってたからさ。当時からほんとにイライラして。だからこの学校に転校して初日に奈緒ちゃん見つけた時、絶望したんだよ。また毎日イライラして過ごすのかぁって。でも希望を見つけちゃったからさ、テンション上がっちゃって」


「まさかその希望って私の事?」


「うん。多分香奈ちゃんがいなかったら私、普通に一年間耐えてたと思うよ。幼稚園の時にみたいに」


マジか。何その衝撃の新事実。私がいたとしても普通に耐えようと思ってよ。


「だからさ、もう諦めてよ。しょうがないって諦めて。香奈ちゃんが折れてくれないならこの一年間、一学期以上に付きまとうよ。それに、これからいろんな所に味方つくるつもりだし、二学期は林間とか校外学習とか運動会とかいっぱい行事あるよね。そのたびに香奈ちゃんを多分疲れさせると思う」


うわぁ。担任に手をまわしてるんだろうなぁ。それに野良犬扱いの男子たちにも手まわしてるんだろうなぁ。後は奴隷の子達にも若干の探りは入れてるんだろうなぁ。めんどくさいなぁ。


「ね、今めんどくさいなーって思ったでしょ?もう折れちゃってよ。私あの子のご機嫌取りするより香奈ちゃんに毎日まとわりついてる方がよっぽど楽しいからやめるつもりサラサラないし。それに、香奈ちゃんも奈緒ちゃんの言うとおりに動くのが嫌だったから傍観の位置を開拓したんでしょ?ねえ、お願い、私と友達になって。一緒に居て。一緒に戦お?」


くそっ。あの野良犬ども、私のこれまでの行動をチクりやがった。


「はぁ。わかった。じゃあ、あなたと手を組む。これでいいでしょ?」


うっわ。すっごいうれしそうな顔してる。なんか腹立つな。






その後の彼女は凄かった。夏休み中は私の通う小学校の生徒がよく遊ぶ場所に私は案内させらせ、友達になりましたアピールをさんざんさせられた。

二学期が始まったら最初の方は私との仲良しアピールを全校生徒に向かってしまくり、私を逃がさないようにした後で奈緒を攻撃し始めた。

クラスメイト達も内心ではこんなカースト制度は嫌だと思っていたようで、傍観仲間達が喜々として彼女に協力し始めたあたりからあからさまな行動までする者も現れらようになった。


崩れ始めると脆いもので、一か月ほどでカーストは崩壊した。卒業式の練習をし始めるころにはみんな線引きなんて気にせず、仲のいいクラスになっていた。


まあ、例外は三人ほどいたが。元女王とかその取り巻きとか。どこの集団にも例外というものはあるのだから彼女らについては放っておいても良いと思う。そもそも自業自得だし。


早紀とは中学生になった今でもよく話す。周りからは「二人は親友なんだよね」と言われるほどだ。

だがそれは完全な間違いである。第一印象ではこの子いい子だなーと思ったものだが実際は全然いい子じゃなかった。腹の中は真っ黒だった。妹の瑞希ちゃんを見習えよと何度思ったことだか。瑞希ちゃんマジ天使。


私はちゃんと親友説の話題が出る度に否定してるのに早紀は「香奈は照れてるだけだから」とか言ってむしろこの話を広める。いつの間にか注がれるようになったみんなの生温かい視線にはほんとに勘弁してほしいといつも思う。でも、そこまでならよかった。そこまでなら。


あの傍観仲間の一人に「二人、仲良すぎでしょ。実は付き合ってるんじゃない?」「早紀なんて香奈といない時でも話す内容はいつも香奈の話題だし」と言われた時、頬を染めた早紀に私は背筋が凍った。

聞いた本人はきゃあー!とか言ってどっかに走り去るし。

…あの子ちょっとおかしいんだよなぁ。普段はのほほんとしてるくせに何かあるとテンション上げて動き出す。カースト崩壊事件の時も早紀に対して一番に協力者として動いたのは彼女だった。あ、ちょっと待って、私現実逃避しちゃってる?


戻れ戻れ。頑張れ私の脳みそ。


え、マジで違うよね。怖いんだけど。あの時の早紀のしつこさを知る私としても、勝手に外堀を埋められてる感に恐怖を感じるんだけど。


「実は私一回香奈に告白してるんだよね」


は?え、待って、これってこのまま言っちゃう流れなんですか??????


「それに、香奈に付きまとってたのは奈緒ちゃんの事もあるけど香奈に近づきたいって思ったからって理由もあるんだよ」


え?え?え?


「私、香奈のこと好き。それに香奈がこれ断っても私は香奈の事逃がすつもりないから」


は?え、てか私に拒否権ないの?


混乱する私を見ながら、楽しそうに早紀は笑った。




え、マジなの?実はドッキリでしたって言ってくださいお願いします。

何故だか、早紀から逃げれる気が全くしない…。






早紀が香奈に手を組むよう説得してる場面で、あれ?なんか告白してない?と思ってしまって、もともと考えていた着地点からかなりずれてしまいました。

一度そう思ってからはそういう風にしか思えなくなってしまって…

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